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耐震論議…日建と高野氏の見解考察(試案)

日建設計(以降日建)のHPに「豊洲市場の構造安全性FAQ」が掲載された。内容的にはPTでの主張の延長と見られ色々気になる点が有るが、まずは日建が正式に会社としての主張を公表したことになる。

当ブログとしては、以前から取り上げてきた内容に関連する「Q-9:構造的には4階建ではなく5階建とみなして設計するべきではないですか?」に特に注目。これは高野氏指摘への返答になるだろう。

日建と高野氏の見解について考察してみる。KintA氏が以下の図を提示されていたので参照させて頂く(当方で説明用に追記あり)。
イメージ 1

擁壁と建物が構造的に切れているから、「地下扱いにはならないのではないか?」というポイントが的確に表現されいる。

当方も門外漢ながら、日建曰く「土壌の拘束力を期待していない=拘束力なし」の状態では、通常想定される土壌拘束のある地下の場合とは条件が違って当然ではないかと考えてきた。それをまとめてみたのが以下図で、右下に日建と高野氏の見解の違いを示してある。
イメージ 2

日建側は①を主張し、地震力を計算する基礎数値である「水平震度=0.1」としている。これは以下の「建築基準法施行令」第八十八条規程に依っていると想定される。
---条文抜粋開始----
4   建築物の地下部分の各部分に作用する地震力は、当該部分の固定荷重と積載荷重との和に次の式に適合する水平震度を乗じて計算しなければならない。ただし、地震時における建築物の振動の性状を適切に評価して計算をすることができる場合においては、当該計算によることができる。
   k≧0.1(1-H÷40)×Z
k:水平震度
H:地盤面からの深さ、 Z:過去の地震の記録に基づき地方毎に国土交通大臣が定める数値
---抜粋終了----

簡単にするためにHとZとを考えないと「k=0.1」。ただし、建築基準法改正で1階以上は「k」を用いないようだが、以前の手法だと地上1階は「k=0.2」。これは今も一定の妥当性有るようなので、分かりやすくするために②③も「k」で表す。

②③は上記KintA氏図②’③’に対応する。②’を地下に入れると、一見①のような状態に見える。しかし、擁壁で土壌から切り離されているから、③’の地盤面は(掘り下げられた)AP+2.5m面になる。(③の地盤面B相当)

(なお、①は実は2つの話が入っている。 一つ目は、山本一郎氏ブログのように「地面よりもスタイロの方が固い」などとして、「地下は地盤で押さえられている」と主張する人たちがおられた。しかし結果的にはPTで日建が「土壌の拘束は期待しない=実質無い」と言明。「拘束無し」が分かり易いように、土壌と基礎を離して描いたのが③になる。 

もう一つは、日建も拘束無し想定なら③になりそうなものだが、日建は地盤面Aとする見解なので①
高野氏は地盤面Bという見解で③。これが①と③の端的な違いになり、上記日建FAQの4階建てと5階建ての話につながる)

両者比較のために、上図右下に示したk3に関する双方主張を再掲する。
k3に関する主張
 (1)日建  …k1≒k3 (k3=0.1)
 (2)高野氏…k1≠k3 (k3≒0.2)

土壌拘束有無の違いは明確なのだから、(2)の「k1≠k3」は自明と思える。高野氏主張の方に妥当性を感じる。
日建の方は、「基礎部分が頑丈で揺れない」という前提を置いている。そのため①と③はほぼ同等になり、「k1≒k3」及び「k3=0.1」になるという趣旨の説明。

しかし、揺れは外部からの入力である地震力により発生するものであり、揺れで外力の大きさが決まるというのでは因果関係が逆になってしまうと思う。そのため日建の説明には疑問を感じる。(この辺は当方理解が合っているかどうか不明な面もある為、今後解明したい)

日建側はプロとして、豊洲の耐震設計について丁寧に説明して頂きたいと思う。またPTについても第2回会合等で論議された構造問題は、一般の方々にも分かりやすくという趣旨も有ったようだ。しかし、実際は相当専門的内容で、理系でも理解がなかなか難しいように感じた(少なくとも当方には)。

もっと噛み砕いて理系には分かるぐらいにして頂きたいと思う。そうなれば当ブログなども更なる情報発信可能。議事録で行うことになっていて未実施の「専門家同士の議論」を是非やって頂きたい。モーダル解析とか持ち出す前に、高野氏指摘を正面から取り上げて明快な説明を期待。

また、上記当方まとめが大筋合っていれば、非常にシンプルな比較になると思う。全国に沢山おられる建築関係者の中で豊洲問題に興味ある方々は、是非独自の方法等も駆使して検証いただきたいと思う。
本件に関する、ご指摘ご意見等はコメント欄(シークレットも可能)やTwitterにお寄せいただければ出来る範囲で検証してみます(本日内容は試案)。

以上
[追記]
上掲KintA氏の豊洲写真③’を見ると「擁壁」が連続しているように見える。それに対して日建の説明図ではフーチング部分は土壌に接しているような構成になっている。
イメージ 3

実際は、もしかするとフーチング側面も擁壁と接して、土壌とは切れている構造なのだろうか。ただし、工事途中と最終形は違ったりするかも知れない。結局まだ色々不明点有り。PT主導で現地調査や図面検証などを実施して、前述の専門家同士の論議にかけて客観的事実を解明して頂きたい。

PTで検証すべき点は他にも有り。耐震構造面では「杭」の検証が必要だろう。特に本文の水平震度の論議が関わってくる可能性有り(もし変わる場合はむしろこちらの方が影響大きいと思われる)。また、基礎分重量と地上部総重量が同じぐらい、と日建が言っていた点も本当にそんな設計が良いのか。

更に、耐震だけでなく巨大空間のコスト面はどう考えるのか? 佐藤委員は盛土より安く出来ていると推測しておられたが、都側はコンクリート空間の方が高いと考えていた経過も検証報告書にある。

巨大空間になった主要因とも考えられるミニ重機の投入も検証必要。果たして現実味があるのか? 検証報告書によると、技術部門の関係者でミニ重機用空間設置を主導したと認める人がおらず、決定経緯が不明。また、設計途中で何度か盛土有りに戻そうとした場面も有ったのに出来なかった。

これだけの大問題につながった現状空間の評価について、曖昧にせずに総合的な再検証必要。そうでないと、これほどの事態の真相が解明されず、再発防止や教訓にもならない。

追記以上