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「上林功」氏見解に関して(3)

昨日更に上林氏からコメントを頂いた。素早い対応感謝します。<詳細は図版などを利用して別の媒体で>というご意向も認識しました。
ただし、下表のようにA案設計スケジュールでは今月4月で基本設計が概ね完了し5月から実施設計も始まる段階のため、なるべく早めに情報発信を行っておこうと思うので、前述の詳細な解説は別途行って頂くとして当方は独自に検証を進めるようにします。(当ブログで書いて設計に何か影響が有る訳でもないですが、客観的事実を発掘・発信しようと思ってやってきているので、その流れです)
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以降普段の書き方で記述。
1.情報の提示
上林氏は昨日当ブログを初めてご覧になったということで、産経記事の内容はそれで合点がいくところが多くなった。特に1月2日記事を今後詳細にご覧いただいて、産経記事で取り上げられた以外の項目にどのような見解をしてしていただけるか。詳細説明をお待ちしたいと思う。
ただし、本事案は旧計画から非常に特殊な経過を辿っているので、A案の著作権問題等の評価を行うにあたっても過去の情報が必須。当ブログ記述は、それを前提としているところが多いので、上林氏がもしこの記事を見られたら参考資料として以下もご紹介。 
・森山氏ブログ2014年4月19日記事”新国立競技場の基本設計が終わらない理由3” 
 有名になった「地下鉄干渉」などの記載が有る記事だが、さすがにこれはご覧になっておられるだろうか。旧計画(ザハ案)設計の杜撰さはここから明らかになっていった。アーチ構造の常識から外れてしまっていたのがザハ案設計。
当ブログ昨年1月15日記事”文芸春秋2015年9月号記事全文  
 未だに世間的には殆ど認知されていない旧計画の内幕が書かれた記事。深刻な耐震性問題などがあった。そしてゼネコンが撤退覚悟で官邸に直訴した結果、和泉総理補佐官を中心とした国交省出身者で急遽対応が始まり、それが当ブログで「官邸チーム」と呼んでいる存在。正式名称は「新国立協事業整備計画の再検討推進室」となって、新コンペを段取りしたのも同室。

水面下の動きが多く実態がよく見えない同室だが、新コンペ審査委員会の人選も国交省人脈で固めた。その中で予想外の造反と思われる香山氏が告発している「採点不正疑惑」で糸を引いたのもJSCのバックにいる同室というのが当方見立て。そしてZHA側から見たら一方的となる契約解除しておきながら、無許諾で内部構造流用するという、いわば禁じ手を使う判断をしたのも同室と推測。「流用問題」に関しては、このような背景情報を得た上での検証が必要というのが当方の立場。

多分これら複雑な背景は余り意識されずに産経記事をお書きになった可能性も高そうだが、上記のように経過情報のありかを提示させていただいた。もしご覧になられたら今後の再検証はどのようになるだろうか。

2、上林氏コメント検討
4月14日記事にいただいたコメントについて検討してみる。
<② ①を踏まえながら20席を並べる
 都安全上例の場合、消防特例をできるだけ受けずに縦通路間の観客席を埋めると最大20席となります。縦通路は外に向かって開いていきますので、1階観客席最後段を20席で設定し、余るスペースを減らします。>

まず、確認として「1階観客席」となっている。それ以外の階でも基本的に同じような考え方という趣旨で1階の例を出しておられるのかも知れない。しかし、当ブログ1月2日記事に掲載の平面図類似点に関しては階数が非常に重要になる。次のように、当ブログでは4階5階に絞った平面図比較を提示している
 (ⅰ)「4階5階」の重ね合わせを行っている
 (ⅱ)6階は存在自体がキールアーチ有無によるため、比較対象から外れる
 (ⅲ)3階以下は新コンペ時の仕様変更(例えばVIPルーム簡素化等)で違う箇所が多くなる

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コメント内容続き。
<最後段を何段目とするかは意見が別れます。視認距離を考えますと30段、水平距離にして約25mが目安かと思います。
③円周方向への展開、構造との調整
 あとは円周方向にぐるりと回していくと縦通路位置の理想形ができます。ここで柱位置との調整を行います。観客席幅は450~500程度、鋼構造で無理なく架けようとすると約10m前後のスパンで1階観客席最後段近くの桁方向芯線上のスパ・・・
個人差はあると思いますが、おおむね座席配置の基本は上の手順となります。ここから更に観客席勾配の設計などに移行しますが、これは国内実績最高斜度35度前後を上限として、高さ方向の調整をするのみなので、むしろ放射方向の柱位置から決定するスタンド下の居室空間との兼ね合いによって決まります。>

「意見が分かれます」、「個人差」、「(35度)前後」、「上限」などの言葉が重要。このように「人によって違ってくる」のが当然ということを考えた際に、A案とザハ案は似すぎているのではないかというのが今回類似性指摘の根本。

コメント内容続き。
<観客席配置形状を決める要因としては観客席最前列の線形があり、今回似通っている最大の要因だと思っています。陸上競技のトラックからのバッファは決められていますので観客席最前列の線形が似通うことはあるかと思いますが、この点においてA案が確かにザハ案と似ている点において、線形流用の可能性は考えられます。>

ここでは更に踏み込んで「線形流用の可能性」に言及しておられる。ただし、CADデータが無いと確実な比較ができないが、裁判になればデータ提出を求めて比較可能。専門家として、ご存知のやり方なので、「裁判で正確な比較をして、もしピタリ合っていたら流用の可能性は非常に高いと言える」などの説明が今後欲しいところ。
「逆に少しでもずれていると流用証明は困難になる」ということも付加して頂ければバランスがとれる。また、前記の関連で「35度前後を上限として、高さ方向の調整」となっているスタンド部分も、4階5階についてCADデータにより角度や高さを比較可能。それらの一致・不一致によって更に流用判定が確実になる。このような手順を専門家として、更に詳しくご提示いただければ幸い。

3.「推定無罪」に関して
昨日コメントで「広義の推定無罪」の立場という表明を頂いた。当方が受けた印象と同様で納得。一昨日コメントの該当部分か以下だった。
<この流用を技術的合理性(ここでは陸上競技運用の合理性)から公知のものとして流用したのであれば、権利侵害に当たらないことになることを含めますと、断定するには至りません。推定無罪の立場から言及を避けざるを得なかった部分となります。>

この点は考え方として重要と感じている。現在の状況を「隈氏とA案に流用の疑いが掛かっている」と認識すると、流用がハッキリしない場合に「推定無罪」という言葉はしっくりくる。
しかし、当方は有罪無罪とは基本的に別の考え方をしている。

 「日本のシンボルになる新たな国立競技場に『無許諾流用』の疑いを掛けられることなど、あってはならない」
これが当方のスタンス。つまり流用の疑いゼロを当然としている。上林氏のスタンスだと、流用の疑いが相当高くないと「流用」と言えなくて、結果的にはA案設計をOKにすることになる。当方スタンスでは「流用の疑い」が少しでもあれば、それはリスクになるから、A案設計はNGにすべきということになる

ただし、もう走っていてA案をストップすることも五輪開催のリスクになるから、リスク比較において「流用の疑い」があってもA案で進めるという判断は有りうる。しかし、五輪後まで残る(今のところ唯一の)「国立競技場」が、無許諾流用で建設されるリスクの方を重視するというのが当方の立場(ストップした場合の代替は日産スタジアムを提案)。この辺の違いで、噛み合わないことがありそう。

4.流用の確信度
前項で「流用の疑いが少しでもあればリスク」と書いたが、当然ながらリスクには「許容できるレベル」という面も有る。それで昨日当方は「流用の可能性が0.1%?、1%・10%・或いはそれ以上? 」という質問をさせて頂いた。当方は「流用有りの確信度が100%」だが、産経記事だけだと「流用無しの確信度が100%」にも読めたので、実際にはどうだろうか?という趣旨で聞いてみた次第。

ただし、流用の可能性を数字で表すと、全体設計を100%としてその中の何%ぐらいが流用か?という質問に受けとられる可能性が有った。
上林氏からはコメントで以下の回答を頂いた。
最後に何パーセント流用されているかとの質問ですが、「ノウハウ」という点においてはいかんなく流用が行われていると思います。パーセンテージで言えば100%のノウハウ利用に加え、隈さんのアイデアをいかにねじり込むかを検討した結果であると思います。

まず、<最後に何パーセント流用されているかとの質問ですが>とあるので、やはり誤解を与えたようである。当方の「流用の確信度100%」というのも、「流用が有るか(100%)?無いか(0%)?その中間か(0%<流用確信度<100%)?」という三択質問なら、「100%有る」と確信を持って答えられるという意味。
もし0%<流用確信度<100%)」の間という回答をされる場合は、0.1%?、1%・10%・或いはそれ以上?」の概略どの程度と想定されるか?ということを直感的に選んでいただこうという趣旨だった。

丁度回答の方では「間」の必要はなく、 「ノウハウ流用は100%」と明快な判定をいただいた。そのうえで「隈さんのアイデアのねじり込み」があって、結果的には「流用とは言えない」という判定だろうか?
それでも、当方スタンスだと「ノウハウ流用確度100%」ならNGと判定著作権問題の前に「隈氏の全否定」が問題になる。「全く違う」と何度も公言しているのだから、ノウハウの流用であっても嘘をついていたことになる(ただし更にその前にデータ入手容易と重ね合わせ比較と類似項目の多さ等で既にアウトだが)。建築家が嘘をついている設計で「国立競技場」を建てることなど強く反対。全否定という対応しかなかったのだろうか。余りにも無理がある。

5.著作権の帰属
著作権論議は大抵ややこしくなり、しかも「流用問題」の方が決定的と考えているため、余り踏み込んで来なかったのは既報の通り。それでも基本的なところは言及しておきたいと思う。産経記事で次のように述べられている。
<建築図面や建築物の著作権については、過去に日本の裁判所でも判例が出ています。要約すると、「機能的なアイデアは、それ自体として保護の対象とはなり得ない」ということになります。
JSCが求めているとされる著作権の譲渡については、国内の建築設計契約では「権利の譲渡」はほぼ必ず含まれている内容です。>

これに関して、旧計画国際コンペの募集要項に著作権の項目が有り、次のように「応募者に帰属」と明記されている。
<21.著作権及び応募作品の取り扱い
(1)応募作品の著作権は、応募者に帰属するものとする。

産経記事の記述は、「機能的なアイデアは、それ自体として保護の対象とはなり得ない」から、著作権はZHAにあっても別途JSCとZHAとの契約で「権利の譲渡」がなされていて、「機能的なアイデアの権利はJSCに帰属している」との趣旨と現在当方は理解。ただし、それでA案の類似点が著作権面で全部OKになるかは今後さらに考察予定。なお、1項で紹介した資料以外にもこのような参考資料がまだまだ有るので適宜ご紹介。

(本日ここまで)

以上