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磯崎新氏による追悼文

ザハ氏の才能を見出した磯崎氏の哀惜が文章から伝わる。特に前半はそうだが、何故後半は次のようになってしまっているのか。
<ところがあらたに戦争を準備しているこの国の政府は、ザハ・ハディドのイメージを五輪誘致の切り札に利用しながら、プロジェクトの制御に失敗し、巧妙に操作された世論の排外主義を頼んで廃案にしてしまった。>

追悼文という特別なものであるが、敢えて疑義を書いてみる。まず「プロジェクトの制御に失敗」は確かなこと。しかし、肝心の構造設計にも根本的な問題があった。磯崎氏はプロジェクトについて、どこまで把握しておられるのだろうか。日建設計は依然として何も語らない異様な沈黙。その理由は掴んでおられるのか。何故ザハ事務所(ZHA)のビデオにアーチタイの中身が入っていないのか。設計チームでは、本当に全長370mもの前代未聞となるアーチタイの着工可能な設計が出来上がっていたのか。

そのような根本的問題の存在には言及しないまま上記の文を入れたのでは、一見して政府が悪いと非難しているように見えても、実際は世論を見下すようになってしまうが、それでよろしいのか。極々一部には有ったのかもしれないが、世論全体としたら排外主義など全くなっていないのに、決めつけてしまうのだろうか。
国民は費用金額の上下に気をとられて判断を間違ったかもしれない。しかし、正しい情報を伝えられなかったら正しい判断も出来ない。色々しがらみはあるだろうが、やはり日建設計は真相を語るべき。政府も再検証を行って経緯の公表が必須。政府を非難すべきは、廃案の真の原因と目される構造設計の問題を隠し続けている点にある。磯崎氏も、こうした核心に目を向けて頂きたい。

思いを述べた追悼文に対して、本来はこのようなことを書かない方が良いのだろう。しかし、ご自身が業界を動かしてプロジェクトを正常化できなかった反省などならともかく、日本国民の名誉まで巻き込むような内容が入っていたら、当方はそのまま流せない因果な性分。磯崎氏は思い切った発言をされる方のようなので、率直に書いてみた。
なおザハ氏に関しては、ZHAの組織が大きくなってプロジェクトの責任者クラスから的確に情報が入っていなかったのではないかと推測している。そして当初からのボタンの掛け違いが、日本側も含めた正確な情報の欠如でプロジェクト全体として拡大していった。ザハ氏と日本国民は本来良い関係を築けたと思う。返す返すも関係者の隠ぺい姿勢が悔やまれる。
ご冥福をお祈りしつつ、やはり「本当のこと」を伝え合って分かり合えることが重要と改めて感じた。

以上