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現在の神宮外苑の根本的問題点

外苑に関して、槇氏指摘の「絵画館前広場の軟式野球場使用と一般立ち入り禁止状態」批判に同見解ということは以前から述べてきている。ただ、更に根本的問題があると考えている。以下に外苑の概略図を示すが、苑内に道路(車道)が多すぎるのではないか。

イメージ 3

大正時代の計画だから車も多くない時代であり、今とは全く違う状況の中で造られた。現在は苑内を多数の車が当たり前に走っているが、今後は都心全体への車の乗り入れを制限していく先駆けとしても、まず外苑の道路に関して考え方を変えるのが良いと思う。苑内で子供を安心して遊ばせるためにも、車の危険を出来る限り取り除くことは重要。車は苑内から基本的に排除して、車優先社会からの転換点にしたらどうか。そのためには上図の道路A~Eは一般用車道としては廃止することが望ましい(絵画館前は現状でも車両通り抜け不可…駐車場有り)

だが、すぐに苑内車道を全部廃止出来なければ、まず道路AとBを廃止することを考えてみる。この状態になると、以下の東京都が作成したという仮設サブトラックを含む競技場配置図に近くなる。この図は東京都の誰が作成したかは分からないとのこと(8月25日記事参照)だが、都側にも車道を潰すことを考える人がいた。

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仮設サブトラックだと、五輪後に車道を復元する構想だったと想定されるが、車道の廃止を恒久化すれば懸案のサブトラック常設も可能になる。ただし、サブトラックの位置が絵画館正面を一部遮っているから、車道廃止恒久化を前提に更に適切な位置へサブトラックを移動して配置することも考えられる(上図のままではサブトラックが遠いと云う問題も出そうだからスタジアム側に寄せる・・・ちなみに新整備計画では絵画館前広場仮設決定)。
このように車道の廃止は苑内環境改善とサブトラック確保という一石二鳥の効果が期待できる。当方は自動車乗り入れ規制強化で、安全かつ健康的な生活が送りやすい社会を目指すべきと云う思いが前から有るので、本日は実現可能性云々とは別に書いてみた次第。

なお絵画館正面の景観を示す同アングル写真2枚添付する。
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よく使われるアングルで、正面広場の軟式野球場と立ち入り禁止柵が見えないようにしている点でトリックと当方は捉えている(笑) 左右写真の違いは車の通行量である。左写真は車の少ない時を撮っていて、これも景観を良く見せていると思われる。
しかし、右写真を見て頂ければ、「正面の一番いい場所は車道で、人はその左右を歩く」ようになっていることが分かる。これで慣らされてしまっているから改善しようと云う気運はなかなか出てこない。車優先の考えが刷り込まれてしまっているのを徐々にでも変えていくべきと思う。

以上
[追記]
本文とは関係なく、再検証関連の話。槇氏は日経アーキテクチャによるインタビュー記事で9月に以下のような話をしておられた。
<設計にはデザイン監修でザハ・ハディド・アーキテクツが14億7000万円、設計業務は4社JVが36億4648万円を使った。当然、4社JVは与えられた作業に対する対価を得ている。だが結局、デザインが白紙に戻った時点では、無益の行為となってしまった。本来、設計者は図面を引くだけでない。過去2年間の設計プロセスの中で適宜、コストや技術上の問題を発注者に報告し、時に適切な提言を行ってきたかはまったく定かではない。
7月に「白紙に戻す」と決定したことに対し、国民のほとんどが喜んだ。しかしこれで彼らのデザインがご破算になるのではないかという危機感からザハ・ハディド氏は直接、安倍晋三首相に手紙を書き、その後も事務所は何回か彼らの立場からの声明文を出している。これらは十分理解できることである。
 しかし、日本側の設計者は悲しんでいるのか、喜んでいるのかまったく分らないまま、現状に対して沈黙を保っている。こんなことでよいのだろうか。社会に対して彼らは説明責任があるはずである。以上は、私の個人の意見というよりも多くの建築家、識者の気持ちを代表した意見であることとして了承していただきたい。>

→ZHAが犠牲者かどうかは、当方として検証してきた結果からすると違和感大いにあり。しかし、設計JVに関するこの発言は非常に的確。槇氏には是非「設計JVは説明責任を果たすべき」という正式提言を当初と同じく「JIA MAGAZINE」誌で発表して頂きたいと思う(他媒体でも良いが最初の批判論考と同じ同誌がインパクト強いだろう、同誌が掲載するかも興味深くなる、掲載しなければ他誌へ)。それでまた流れを変えられるのではないだろうか。

追記以上(明日より不定期掲載に入ります)