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「隈氏またも記者会見で完全否定」及びZHA設計関与証明追加

隈氏が昨日今度は「日本記者クラブ」で会見し、再度流用を全否定。
<建築家・隈研吾氏(61)が1日、東京都千代田区の日本記者クラブで会見し、旧計画のザハ・ハディド氏が訴える著作権について「問題ない」との認識をあらためて示した。 
 座席の配列、通路幅がザハ案とほぼ一致している点について「東京都の安全条例で通路幅は80センチと決まっている。それで計算すると、同じ形に落ち着く。法律を順守して緻密に計算すると、どの方がやっても同じ所に落ち着く」と主張。 
 ザハ案と隈案の平面図を重ねると、柱の位置までほぼ重なる点についても「座席配列と通路幅で決まる」とし、「80センチの通路幅で(通路間の)座席は28席。トラック形状も同じだから当然、同じようなところに柱が建つ」と語った。仮に柱を1本おきに抜いた場合は「今度は梁(はり)が大きくなり非常にコストがかかる。梁(はり)の分で天井が低くなるのも問題。経済的に今の法律の中で柱を置いていこうとすると、大体同じような配置になると思います」>

全く別に設計しても、与条件に各種条例等の制約条件も加味すると同じような設計になるとのこと。別分野ながら設計をやってきた経験からすると、「よく言うなあ」と呆れ返る発言(笑)
更に著作権に関しても「全く問題ない」と専門家から言われているとのこと。
著作権問題も「我々のチームの専門家にいろいろ聞いても全く問題ないと言われています」と言い切った。>

この会見により、2つの影響を考えてみる。
一つ目は、外国特派員協会に続く公式会見の全否定発言で、隈氏は「流用指摘を認めない」姿勢を貫くことが明確になった。大成と梓の対応はまだハッキリしない面があるが、隈氏と違うことを言う訳にはいかないから追随すると想定される。また、既に審査委員会ヒアリングで流用は言わずにオリジナル設計の振りをしていた。

二つ目は、JSCとの関係。昨日ご紹介したように、JSCは新コンペで「旧計画の成果を最大限活用する」という方針だったことが議事録に見える。そして実際にZHAとの間で「設計の成果を自由に利用できる」ように交渉していると伝えられている。しかし、大成チームがザハ案流用を全否定だと成果利用も不要。更に著作権も同チーム専門家が「全く問題ない」と言っているとのことで、JSCが使用交渉することは藪蛇になりかねない。
大成チームとJSCで矛盾する話になってきたと思う。どう決着させるのだろうか。

当面の鍵を握るのはZHAの動向と云うことになるが、昨日追記で「少なくともZHAの権利はゼロにはならないから訴訟を起こすことは可能」という見方を書いた。ZHA側は、大成チームの全否定姿勢が明確になり、板挟みになってフラフラしそうなJSCと長く交渉するより、裁判に訴えたほうが有利と判断することは考えられるだろう。今月がまず山場になってくるか。

なお、未だにZHAが「デザイン監修者」で設計には関与していなかった、という認識の方がおられるようで以下の様なツィートがあった。
<新国立競技場の一つ一つの座席配置をザハ大先生が自ら設計したとは思えない。アンダーで設計協力した大成建設(当方注:実際は梓設計か)が図面を流用したというのが正解だと思うんだけど、どうよ?(2016年1月25日)>

ちなみにザハ大先生が設計しなくともザハ事務所に担当者がいるわけだが、それだけでなく、やはり「デザイン監修者」という名称にイメージが引っ張られて、ZHAは設計に関与していないという認識のままになっていると思われる。しかし、実態は既報のように、「日建設計ヒアリング」や「日経アーキによるZHAのU氏インタビュー」で、ZHAが意匠やキールアーチ部設計のみならず、観客席(ボウル)設計なども行っていたことが書かれている。

それでも上記ツィートのように、観客席設計は日本側でZHA側は関与していないという見方の方がおられるから、本日は更に参考資料を追加。検証委員会報告書の「古阪秀三」京大教授担当部分で、ヒアリング結果を元にしているが、同教授が綿密に検証した上でZHA設計関与・主導を認定している。
----検証委員会報告書P47P48引用開始----
 ザハ・ハディド事務所と設計JVとの間での設計業務並びにデザイン監修業務はどのように役割分担されたか検証を行う。
 平成25 年8月5日にザハ・ハディド事務所で第1回のワークショップが開かれた。テーマは、1)ボリュームスタディについて、2)コストについて、3)協議事項について、4)作業スケジュールについて、5)作業体制についてであり、出席者はJSC、ザハ・ハディド事務所、設計JVであった(後の打ち合わせには発注者支援者も出席することとなる。)。フレームワーク設計業務契約、それに係るデザイン監修業務契約がJSCと締結された直後である。こうして、契約書、MOA等での日本語と英語、多国籍なメンバー、有識者会議からの多種多様な要求項目、これらを徐々に解決・解消するためにフレームワーク設計の一環としてワークショップが開催されている。その後は、英国でワークショップも開催されている。

 このワークショップを出発点として、ザハ・ハディド事務所と設計JVの役割分担も徐々に明確になっていったと考えられる。ヒアリングによれば、基本設計段階まではザハ・ハディド事務所がデザイン競技最優秀者として設計者としての領域にまで踏み込み、実施設計に移行するなかでデザイン監修業務に専念する方向に動いている。この概略の分担関係を確認するまでに要した人的・時間的負担は相当なものであった。

 両者の業務分担に関しては、フレームワーク設計、基本設計、実施設計、それぞれの段階において分担表が作成されている。初期にはボール形状等のスタジアム計画、施設規模の設定や競技用施設等の施設計画の一部やファサードについて、デザイン監修者であるザハ・ハディド事務所が主担当で設計JVが副担当となっている。一方、電気設備設計や音響等のエンジニアリングデザインや施設計画のうち安全性、セキュリティ等については設計JVがはじめから全面的に担当している。そして、基本設計がある程度進んだ段階では、すべての主担当が設計JVとなっている。この分担表によって、契約及び特記仕様書上の「デザイン監修と設計の仕分け」、「参照すべき仕様書の食い違い」等の問題が解消されたと考えられる。
----引用終了----

ただし、当方は以前から述べてきているように、設計情報は与条件設定を行い発注して(巨額の)設計料をZHAと設計JVに支払ったJSCに第一義的権利があると考えている。しかし、設計に参加した会社にも権利があるとすれば、上記のように参加しているZHAにも当然有るという見方。
また、権利面においては知財や契約など色々な観点はあっても、JSCが「設計成果の自由な使用」を求めてZHA側と交渉していることは、JSCが「成果使用にZHAの了承が必要と認識している」ことの証明になる。これも非常に重要なポイント。

なお、ZHA側権利の話を書いても、当方はZHA支持という訳では無い。ずっと書いてきているように、ZHA(+アラップ+日建設計)が行った旧計画の構造設計には根本的な問題があり過ぎた。そもそも旧計画の異常な破綻が今の問題にもつながっているのだから、ZHAの責任は大きいと考えている。
ZHA側も自覚はあるかも知れず、訴訟を起こすと自らの設計瑕疵も洗い出される可能性を分かっているかも知れない。新コンペの流用問題では優勢だが、旧計画の設計では脛に傷があることになり、天秤に掛けていることは考えられる。さて今後天秤はどう動いていくか。

以上