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検証報告検証2 「ゼネコン見積りに関して」

当方メモ用に「関係者ヒアリングの概要」のゼネコン関連記述から気になる部分を抜粋したので、見解・疑問等(→以降)と共に参考として示す。

-------抜粋引用開始-------
【山﨑 雅男 (独)日本スポーツ振興センター新国立競技場設置本部本部長 1 回目】
○ 平成26 年に技術協力者・施工予定者と技術協力に関する基本協定を締結し、平成27 年1月に積算を出してもらった。設計JVの数字はサブコントラクター、具体的にはメーカーから見積もりをもらって最安値を取って積算をしていたが、技術協力者・施工予定者(ゼネコン)は調達リスクを見込んだ上で調達先を分散し見積もり額も平均値で積算。その結果が2,100 億円と3,000 億円の違いとなったのだと思う。使っている図面、数量は同じ。(P5)
-------引用終了-------
→鬼澤理事と山崎氏は2015年2月13日に「設計JVとゼネコン見積りの乖離を収めることは困難」と文科省に報告している。(検証報告書P31)
しかし、「最安値」と「平均値」のどちらでやるべきかと云うのは根本的問題で、経験豊富な設計JVとゼネコンで真っ向から見解が対立するというのは変な話。発注者支援JVなどから調整してもらうことは出来なかったのか。「乖離を収めるのは困難」と云うのは諦めが早過ぎるだろう。何か書かれていない事情がもっと有るのではないか。なお、普通に考えたら「平均値」の方が妥当なような気がする。もしかすると、ゼネコン見積りの方が的確なので工費を下げることは困難と云う意味か。
また、「設計JV2,100億円とゼネコン3,000億円の見積りで使っている図面、数量は同じ」との認識のようだが、本当にそうだったのだろうか。竹中・大成のヒアリングでは両社とも図面をすぐには貰えなかったような話をしている。設計JVは適切に図面開示していたのか検証必要ありと思う。

-------抜粋引用開始-------
【株式会社竹中工務店
○ 技術協力者・施工予定者の公募のときは、技術的な提案だけだった。また、基本設計図の概要だけで公募がされていた。我々もいろいろ想定して技術提案書を作ったという状態だった。
○ 業務が開始された後、実施設計図が出てきて、そのときに参考数量ももらった。ただし全ての数量をもらっているわけではないので、我々で拾った数量もある。
○ 自分たちなりに、専門業者から、短期間ではあったが、見積りを出してもらい、試算を出した。設計JVが屋根を幾らと見積もっていたのか、ついこの間知ったところで、当時は知らなかった。その状況で、設計JV、JSC、発注者支援者らと何故この金額だという形で協議していたが、(見積もりを取っていたところより安く調達が可能な)他の業者がいるのだったら、是非紹介してほしいなどの会話を繰り返しながらやっていた。大きな食い違いがあったのは、鉄骨の単価だった。
設計側の見積もりについては予定価格に似たようなものだから出せないということだったが、常に出してほしいとお願いしていた。(P37)
-------引用終了-------
→「公募は基本設計図の概要のみ」、「実施設計図の参考数量は全ての数量ではなかった」など設計JVからの情報開示不足に言及している。設計JVの見積りも「ついこの間まで分からなかった」とのことで、比較も出来なかったようである。
鉄骨に関してはJSC側が韓国製を考えているという噂もあったが、食い違いはそのことか?
また竹中は屋根工区なのにアーチタイについて言及が全く無いのは解せない。アーチタイの設計や施工困難性などに関して設計JVと認識は合っていたのだろうかか。


-------抜粋引用開始-------
大成建設株式会社】
技術提案した時に開示されている資料は限られていた技術協力者・施工予定者に選ばれてから、その後に開示された資料を早急に読み込んで、平成31 年(2019 年)3月末に間に合わせるべく、頂いた実施設計図だと本当にどれくらいかかるのかや工期短縮の提案を伝えた。与えられた時間の中では、ベストに近いことはしたと思う。(P56)
JSCが新国立競技場整備計画経緯検証委員会に提出した資料で、設計JVの見積もりを初めて知った。
○ 複雑な建物なので、工事実績で分からない単価については、専門工事業者に見積もりを取って、建設会社として精査した上で見積書に反映させている。
設計JVの出した数量と何割も違うということは無いとは思う。ただ、これだけ大きな建物なので、数量の拾い方、考え方が違えば、例えば数パーセントの差があっても、間違いという範囲にはならないかとは思う。
最初の見積もりは平成27 年1月に渡していて、設計事務所が数量を指定されたものに対して見積もりを行った。3月2日に新しい図面を入手して、当社として担当するエリアの数量を拾ったものに対して積算を提出した。6月に工事費協議を、設計JVも含めてJSCと開始し、協議の中でスタンド工区として1,570 億円を目標に基本合意をしたというのが正直なところ。実は協議は続いていて、白紙撤回の話がなければ、引き続いて8月末まで、JSC、設計JVと1,570 億円で基本合意できるような条件を詰めるという段階だった。あの時点で完全に全てクリアになっていたわけではない。1月の時は数量自体は設計参考数量値だが、平成27 年3月に出したものは、主要なものについて(数量自体)はそれほど乖離してなかった。(P57)
-------引用終了-------
→大成も「当初の開示資料は限られていた」、「設計JVの見積りは検証委員会への提出資料で知った」と情報不足を言っている。
見積りは本来設計JVと大きくは違わないという認識のようだが、今回何故乖離したか?最安値と平均値の差が殆どなのか。

-------抜粋引用開始-------
【古阪氏】(検証報告書より)
競争入札の公平性を担保するためとはいえ、技術協力者・施工予定者には設計JVが作成した見積もりについて不十分な情報しか提供されておらず、技術協力者・施工予定者においては工事費の削減提案を行うことが難しい側面があった。>(検証報告書P52)
-------引用終了-------
→「競争入札の公平性確保」、つまり談合防止のために「見積りについて不十分な情報しか提供されていなかった」ので、ゼネコンが削減提案等で見積りを合わせていく取組みが難しい面があった。談合防止は必須だが、そのマイナス面も有ることが改めて分かる。
また古阪氏が「見積り情報提供不十分」としていることは、冒頭の山崎氏の認識とは違う可能性がある。山﨑氏は「使っている図面、数量は同じ」とのことで、「情報開示されていた」という認識が想定される
しかし、同じ図面であっても、作成した設計JVはよく分かっているが、ゼネコンは設計JVから説明してもらわないと分からない点が多くなる。その説明が適切に行われていたかの検証も必要だっただろう。

ゼネコン関係は一旦ここまでで、明日は設計JV見積りに戻って検証する予定。

以上