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第4回検証委員会傍聴記3 「国民が渡されたのは委員長自己採点が『良』の一番下という検証報告」

委員長は会合の最後で検証報告について自己採点していたが、その内容については会合後の会見で記者とのやり取りがあったので、該当部分の文字起こしを行った。


------文字起こし開始------23分ぐらい~
(1)記者:今日の会議の最後に「ABCDの評価で言うとBの一番下ぐらい」とおっしゃいましたが、Aにいかなかった部分としてどういうところがありますか?
委員長:1625億円は平成25年7月の物価ベースにしていたわけですから、それを平成27年初めのベースに引き直しても2100億円ぐらいにしかならない。現実に最後に決まったのが2520億円。
その乖離が何であんなに大きかったのかというのは、もうちょっと検証したかったなと思っております。ただ、それに対しては多大な費用と時間がかかります。それだけの意味が有るかということで、成績としては「可」の上、「良」の一番下で満足行くものではないのですが、これで8割方、9割方問題点は明らかになったと思います。
よく水道工事とか光ファイバーですとか、「ラスト1マイル」という言葉が有りますけども、ようするに拠点から拠点までは割りと簡単に建設が出来るが、最後の詰めが難しい。一番費用がかかる。時間もかかる。ですから少なくとも私に与えられた使命、つまり「一体今度の問題はどこにあったんだ?」、「その責任の所在はどこだったんだ?」と云うことが大体出来たと思います。

例えばさっき言った1625億円が最終的に2520億円になったわけですけども、これは突き詰めれば設計JVの見積りが甘いのか、或いは施工予定者が何か余計に利益を見込んでいるのか、という問題に帰着する。今回の問題の本質にはそんなに関係ないことですね。つまり私がこの検証を始める前には、ぼやーっとした怪物の絵しか無かったのが、輪郭がだいぶ分かってきた。更にその上に爪が何本あって、どれぐらい研ぎ澄まされているかと云う詳細まで検証するのは、コストと効果の点からは余り適切じゃないんじゃないか。
少なくとも肝心なところは何とか合格点が頂けるところまで検証できたんじゃないかと思っています。

(2)記者:それに関連してですけど、8割9割分かったということなんですけど、元々検証やるにあたって9月中旬という期限を文科省側から決められて、本来責任を追求される側である文科省から期限を設定されるというのは、何か疑問のような気もするのですが、これは検証されるんですか?
委員長:私ども委員会というのは、文科省から何を検証しろという問題を与えられているので、必要な範囲においてちょっと拡大したりしましたけど、検証委託事項にないことを権限逸脱するというのは、やりかねたということです。
------文字起こし終了------

上記では質疑が2つあるので当方で番号を付けたが、まず(1)の方。
柏木委員長自己採点は<「可」の上、「良」の一番下>とのことだが、自分の仕事(検証)がこの程度しかできないのに本プロジェクト関係者の批判がよくできると思う。「白紙撤回」は零点だから、それよりはマシと言いたいのだろうか。このような人物が委員長とは情けない。この人選は誰の主導なのかと問いたくなる(文科省なのか和泉氏なのか…当方の裏側推定も今のところ古阪委員と羽山氏接点まで)。

また委員長は冒頭の方で有識者会議について<有識者会議の存在そのものが問題だったのであって、有識者会議でどういうことが議論されたかということは今回の検証内容について余り影響がなかった。有識者会議がむしろ有害無益だったのではないか。有識者会議対応はかなり無駄だったと思う。意見を聞くなら会議システムは不要で、個々にサッカー協会とかラグビー協会の意見を聞けば良い。>と述べている。

柏木氏の方が仕事のやり方を知らな過ぎて呆れてしまう。多くの関係者がいるプロジェクトは、まず会議を開いて趣旨や背景を説明し認識してもらい、全体的な方針を合意する。詳細は分科会や直接意見聴取などで進めていく。いきなり担当者が各組織の幹部に話を聞きに行っても、それで全体がまとまるはずもない。また会議なら一度に説明できるが、聞きに回ればその度に説明が必要になる。特にこのプロジェクトは複雑で、柏木氏もそれは重々認識しているのだから、信じられない暴言レベル。余りにも酷すぎる委員長人事。

なお、柏木氏が「もうちょっと解明したかった」という「1625億円→2100億円或いは2520億円」の件は、「もうちょっと」どころか一番解明が必要と思われる部分で、ここにアーチタイ追加が絡んでくると当方は見ている。

検証報告書の構成を見てみると、第1章~第3章は事務局主導作成の可能性が高く、第4章(検証事項2)は文章を比較してみたら各委員担当分ごとに違いが見られるので、各人作成の可能性が高い(為末氏分除く)。それを各自読み上げつつ若干解説していた(為末委員欠席)。
事実関係が記載された第3章(検証事項1)の主旨である「工費変遷」については、第1回会合から詳細な資料が配布されており、殆ど事務局作成と考えられる。総論担当の委員長やコスト検証担当の委員などは、第3章やそのベース資料等とヒヤリング結果などから第4章を書いたのではないかと推測。つまり柏木氏が「もうちょっと解明したかった」と言ったのは、「事務局は第3章でそこまで書いて欲しかった、何故書いてくれなかったのか」と云う趣旨ではないかと思う(笑)

また検証委員会の事務局にも、和泉氏の意を受けた官邸内国交省ラインが深く関与した可能性は極めて高い(文科省事務局では第一回から工費詳細資料は出ない)。その上で肝心なところは隠蔽したので、柏木氏にも違和感が残ったと思う。国民にとっても、このような検証報告で良いのだろうか。(なお、工費変遷は[追記]で考察)

次に(2)の方は、記者が<本来責任を追求される側である文科省から期限を設定されるというのは疑問>と核心を突いている。
和泉氏の仕切りが裏側にあると知っていると、本件では文科省も同氏が動かしているので、このようなことが起きると理解できる。記者は知らないから素朴な疑問として出てくる。同氏の個人的能力の高さで仕切って行くとしても、このように今後色々な場面で疑問噴出が予想される。それで果たして2020年完成までの長丁場を乗りきれるか。

なお、毎日新聞が報告期限と政治家の責任の取らせ方について当方と同様の見方をしている。
<ある政府関係者は冷ややかにみていた。「みそは検証委の報告期限だ」。期限は9月中旬とされた。設置からわずか1カ月半しかなく、事案の大きさに比べ異例の短さだった。
 この狙いを政府関係者はこう解説する。「国会で追及されても『検証委で調べてもらっている』と言えばこの間の野党の矛先も鈍る。でも、期限を『年明け』にしてしまうと、逆に『逃げようとしている』と責められる」。既に内閣改造が9月下旬にも行われるとの見方が広がっており、下村氏の交代説がささやかれていた。徹底した検証よりもこんな政治的な事情を優先したとの見方だ。

この記事自体はJSC河野理事長任期には言及していないし、他マスコミも含めて今回の検証結果追求は甘いままに終わり、仕切り成功になると思われる。しかし、政治に配慮しすぎた仕切りを続けていけば、徐々に国民の信頼を失っていくのではないか。和泉氏を制御できるのは菅官房長官しかいないだろう。菅氏から、止むを得ない秘匿以外は国民に真相を知らせていくよう指揮しないと国民から乖離してしまう。

以上
[追記]
「検証報告書」(P3)記載の「第1回委員会で文科大臣より示された検証事項の具体例」6項目中に「・工事費が1,625 億円を大幅に超え、2,520 億円となった経緯」と云う項目がある。柏木氏が「もうちょっと調べたかった」と言っていたのは、これに当たると考えられる。

まず1625億円は、報告書を見てみると、出て来た場面が少なくとも2つあると思えた。
一つ目は2013年末頃に出された1625億円。(同P23)
①<自由民主党行政改革推進本部無駄撲滅プロジェクトチームとの調整も始まり、(2013年)11 月28 日にはJSC及び文部科学省ヒアリングを受けた。そして、12 月19 日、12 月27 日のヒアリング等を踏まえ、新競技場の工事費が1,625 億円(平成25 年7月時点の単価、消費税率5%)に縮減された。

二つ目は、2014年5月の1,625億円。(同P27、28)
②<平成26 年5月28 日にJSCは、第5回有識者会議を公開で開催し、基本設計案が承認された。・・・ この際の工事費は1,625 億円(平成25 年7月時点の単価、消費税率5%)とされ、JSCから実勢単価の見通し等について特段の説明はされていない。> (①と②では設計が違うのに、同じ1,625億円になっている)

そして、ゼネコンが入ってから、設計JVとゼネコンで見積りに大きな乖離が出た。(同P30)
<平成26 年11 月の段階で設計JVは物価上昇と消費税増税や工事条件の確定を踏まえ、2,112 億円に上るとの試算を出していた。
一方で、明けて平成27 年1月13 日には、屋根工区の竹中工務店から1,248 億円、1月20 日には、スタンド工区の大成建設から1,840 億円の概算見積がJSCに提出され(両工区合計3,088億円また、両工区合わせた工期が66 ヶ月となり、竣工が当初計画の2019 年3月末を超えることも併せて報告した。>

この後最終的に白紙見直しに至る2,520億円の話になるが、本質的にはこの①~③が重要と当方は考えている。そして特に②と③の間でアーチタイ追加が行われている。その結果として設計JVとゼネコン(特に屋根工区)の見積りに乖離発生と想定。③での工期の長さも重要。また検証課題になっていた「見直し検討タイミング」も、少なくともアーチタイ追加せざるを得なくなった時にはキールアーチを止めるべきだった(=ザハ案取り止め)
この経緯は別途詳細検討予定。

追記以上