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第4回検証委員会4 「見積り額乖離」

昨日の追記で書いた件をもっと掘り下げてみる。まず、昨日追記を再掲、読まれた方は飛ばして下さい。
------[追記]転載開始------
「検証報告書」(P3)記載の「第1回委員会で文科大臣より示された検証事項の具体例」6項目中に「・工事費が1,625 億円を大幅に超え、2,520 億円となった経緯」と云う項目がある。柏木氏が「もうちょっと調べたかった」と言っていたのは、これに当たると考えられる。
まず1625億円は、報告書を見てみると、出て来た場面が少なくとも2つあると思えた。
一つ目は2013年末頃に出された1625億円。(同P23)
自由民主党行政改革推進本部無駄撲滅プロジェクトチームとの調整も始まり、(2013年)11 月28 日にはJSC及び文部科学省ヒアリングを受けた。そして、12 月19 日、12 月27 日のヒアリング等を踏まえ、新競技場の工事費が1,625 億円(平成25 年7月時点の単価、消費税率5%)に縮減された。>
二つ目は2014年5月の1,625億円。(同P27、28)
<平成26 年5月28 日にJSCは、第5回有識者会議を公開で開催し、基本設計案が承認された。・・・ この際の工事費は1,625 億円(平成25 年7月時点の単価、消費税率5%)とされ、JSCから実勢単価の見通し等について特段の説明はされていない。> (①と②では設計が違うのに、同じ1,625億円になっている)
そして、ゼネコンが入ってから、設計JVとゼネコンで見積りに大きな乖離が出た。(同P30)
<平成26 年11 月の段階で設計JVは物価上昇と消費税増税や工事条件の確定を踏まえ、2,112 億円に上るとの試算を出していた。
一方で、明けて平成27 年1月13 日には、屋根工区の竹中工務店から1,248 億円、1月20 日には、スタンド工区の大成建設から1,840 億円の概算見積がJSCに提出され(両工区合計3,088億円)、また、両工区合わせた工期が66 ヶ月となり、竣工が当初計画の2019 年3月末を超えることも併せて報告した。>
この後最終的に白紙見直しに至る2,520億円の話になるが、本質的にはこの①~③が重要と当方は考えている。そして特に②と③の間でアーチタイ追加が行われている。その結果として設計JVとゼネコン(特に屋根工区)の見積りに乖離発生と想定。③での工期の長さも重要。また検証課題になっていた「見直し検討タイミング」も、少なくともアーチタイ追加せざるを得なくなった時にはキールアーチを止めるべきだった(=ザハ案取り止め)。
------[追記]転載終了------

この関連で産経新聞の以下記事も出ている。
今年(2015年)初めに設計会社の共同企業体(JV)が算出した2112億円と施工予定者が出した3088億円の見積もり額の違いの原因は解明できなかった。

柏木委員長がこの点について、更に会見で語っていたので文字起こしした。
------文字起こし開始------(会見ビデオ11分ごろ~)
記者:余り書かれていないと思うのですが、設計JVの見積りと施工業者の見積りが1,000億円ぐらい乖離した原因についてはどうお考えですか?
委員長:これは難しい。原因については色々言われております。例えば設計JVというのは設計屋さんですから自分で作るわけじゃないですね。設計JVが積算するときも色々な業者から見積りを取っております。設計JVは色々見積りをとった中の一番安いのを採っていた。
施工業者は一番安いのを採って実際に施工を請け負って、はっきりした時に「あれじゃ出来ませんね」と言わたらどうしようもないし、逃げられても困る。幾つかの見積りを取って平均を採っていたみたいです。

それから「不確定要素」があります。それに対する安全の「糊しろ」みたいなものを乗っけていると云うこともあったと思います。例えばVIPルームと云うのは最後まで詳細設計が決まりませんでした。設計JVの方は一応標準仕様で見積もって、施工業者はそれで良いのか、例えば絨毯はもっと高級なものが求められたりしないか、ということで安全を見る。考え方の違いがある。
もう一つ、狭いから資材置き場がないんです。資材置き場がないと、ジャストインタイムでセメントや鉄筋を持ってこなければいけなくなって非常にコストがかかる。資材置き場についても、絵画館の前の軟式野球場を考えていたみたいだが、最後まで決まらなかった。このような不確定要素に対してリスク量をどれぐらい見積もるか。これも(設計JVと施工業者で)違ってきた要素だろうと思います。

本当はもっともっと調べるべきだったのかもしれませんが、莫大な費用がかかります。例えば私に調べろと言ったら出来ません。積算は専門的な知識を要するものですし、積算表の本を見ても厚さが十何センチもあります。設計JVが計算した計算根拠、施工予定者の計算根拠、それを突き合わせてどちらが正しいかというのは、本当の専門家しか出せないと思います。

古阪(ふるさか)先生はこういうことの専門家ですが、古阪先生に言わせると、さっき私が説明したような理由、つまり「設計屋さんの思想と実際に自分のリスクで工事を施工する人達の思想、この違いによる見積りの差はあるけども、それにしても差が大きいよねとおっしゃっておりました。
------文字起こし終了------

専門家の古阪氏が「それにしても差が大きいよね」と言っている。古阪氏自らが、もっと突っ込んで調べていただきたかったが、ご自身の担当分は殆ど発注方式の話になっていてコスト分析は無い。それでも「コストに対する思想の違いだけでは乖離の説明が付かない」と云う違和感は持っておられたようである。

「違和感あるところに理由あり」が当方の考え方で、「理由」は「アーチタイ追加」だと考えている。結局「アーチタイ追加」後の見積りを分析すれば乖離の真相がわかると思う。大筋は見えてきた気がするので明日記載予定。

以上