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第7回公判前整理手続後記者会見(2) 争点に関して

争点に関する平光副部長の話(佐藤弁護士談…会見ビデオ1時間02分頃~)
「弁護人の意見は証拠に関する事が多くて、争点の整理には無関係だ。
 よって検察官は必要な限りにおいては反論するけれども、
 多くについては(12月10日書面でも)述べないと思う」

公判前整理手続において争点整理は主要目的である。
しかし、上記平光氏を始めとする検察側は何を争点としようとしているのか、未だ当方には分からない。
検察は膨大な捜査資料を持ち、専任者(2名?)までいるというのだから、弁護側の要請にどんどん答えて行って争点を絞り込むという、謂わば横綱相撲で臨める事案だと思える。
また、それでも両陣営が拮抗して膠着したら、間に立つ者、つまり裁判所が争点の整理に乗り出すというのが普通の社会的慣行からの流れだと思うが、日本の司法の場合は「当事者主義」(当事者:被告人・弁護人や検察官)を取っていて、裁判官が職権を行使してまとめ上げることを余りやらない。
今回がまさにそのような事態となっている。

これでは争点がいつまとまるか不明なので、個人的に争点を考察してみた。
当方が考える最大争点は現在二つ。
一つ目は、会見で出た「被疑者アカウントのしたらば掲示板に指令書き込みがあった」という件に関する点である。これが事実だとすると本事件の中核である遠隔操作の犯行に、今までで一番近い直接的証拠になりうる可能性がある。
これに対して弁護側は、「被疑者PCが遠隔操作された結果、そのような履歴が残ったのではないか」という課題提起をしている。
よって、一つ目の争点は以下になると思う。
 争点1:被疑者PCが遠隔操作されていたか?いないか?
この争点1は「悪の教典」やフィギュアの購入履歴、更に予告先や江ノ島に関連する検索履歴などにも絡んでくるので非常に重要となる。
なお、検察側が「遠隔操作されていない」というなら、検察・警察側で証明するのが当然であると考える。
弁護側に立証を押し付けるのであれば、検察側と弁護側の能力差からして到底納得出来ない。
悪魔の証明のようになってくる部分は切り捨てても止むを得ないが、出来るところまでは検察側が真摯に証明する取り組みが求められるし、裁判官もそのように判断するのではないかと思う(期待する)。

争点二つ目は、遠隔操作と並ぶ重要ポイントになる「ウィルス作成」に関連する点である。
(起訴されているのはウィルス供用罪であるが、作成が証明できれば供用にもつながっていく)
今回会見でウィルス(トロイ)作成に関連して以下の話が佐藤氏よりあった。
 (1)被疑者からC#で作成したソフトを貰った人がいて、それは100行ぐらいのものである
 (2)今までVS2010はインストールしたことはないと言っていたが訂正する
  ((1)のソフトをVS2010を使用して作成したということと思われる)

当方が見る限り、率直に言ってこれは被疑者に非常に不利な事実となるだろう。
(1)については、例え100行でも、「C#でソフトを書いたことが有るか無いか?」という点では、「有る」ということになる。
それでも「C#出来るか出来ないか」という論議においては、使いこなすレベルまで達しているかどうかは分からないから、「100行レベルではC#出来るとはいえない」と被疑者が主張すれば虚偽とは言えないだろう。
他方、「そこまで(100行)やったことがあれば勉強すれば出来るのではないか」という主張も意味を持って来る。
結果的に被疑者の言う「C#出来ない」は虚偽ではないが、「全く出来ないとも受け取れない」ということで、「どちらとも云えない」という曖昧な見解になってしまう可能性がある。
(2)の方は、今までの発言訂正になり、相当印象が悪くなるだろう。

ただ、「C#出来るか」と云う点は曖昧になるが、当初から当方が重視していた「被疑者が約一ヶ月で初回動作版のトロイを作成できたか?」という点にようやく焦点が当たるのではないかと考えている。
それで当方が考える二つ目の争点は以下になる。
 争点2:トロイ開発想定期間の6月末から8月末にかけて被疑者が本来業務を殆どやっていなかったという検察側主張は納得性の有る証拠を示せるか?

約2ヶ月の開発期間でも、前述のように特に7月末の大阪の犯行までの約一ヶ月間が特に重要になる。
開発期間中の要確認ポイントとしては以下の様なことが有る。
 ①本来業務を殆どやらなくても派遣先の会社として分からなかったのか。
  何故見逃されていたのか? 何故チェックが入らなかったのか。
 ②隣に同僚がいたという話もあり、同僚は本来業務やってないことに気が付かなかったのか?
  開発や遠隔操作をやっているときは忙しくPCに向かっていたと思うが、それが本来業務と全く違うことに気が付かないことが本当にあるのか(バリバリやっていたら、どこまで進んだか聞きたくなるものである)。
 ③7月頃からはメンタルクリニック?を受診していたという話もあり、業務外のソフトとはいえ、バリバリ開発できる精神状態だったのか。
  症例的に精神的不調と開発能力の好調が一人の中に同時に1~2ヶ月も共存する状態はありうるのか。
  ありうるとしたら、被疑者がそのような状態だったことを証明できるか。

これらの疑問点について、検察は例えば派遣先の上司や同僚証言、報告書や日報、会議議事録、医師証言や見解などで明確に立証できるのか。

以上まず二つの主要争点を例示してみたが、まだ他にもあるので今後更に考察予定。
ただ、本日の争点例示で述べたいのは、検察側は弁護側が争点設定になかなか乗ってこないのなら、当方が挙げたように検察側自らが想定される争点を列挙して、弁護側に選択や同意を迫っても良いのである。
弁護側がそれでも乗ってこなければ、裁判官に依頼して職権で争点設定してもらうことも可能になるだろう。
更に追加捜査も検察自らも出来るし、警察に依頼することも出来るのである。
つまり、検察主導でどんどんやればよいし、それだけの材料も手段も持っているのに、弁護側に対して「答えない、手持ち証拠がない」というような対応に終始しているように思える。
関心を持つ方もまだまだ多いと思われる事件で、検察には優秀な方々が揃っているのだから、国民に納得がいくような真摯かつ丁寧な取り組みを望みたい。

以上