kensyou_jikenboのブログ

yahoo!ブログの同名ブログを移行しました

真実発掘17 「コンペ表彰式プレゼン案」

JSCのHPにコンペ表彰式の紹介があり、プレゼンの動画とその中にCGも入っている。
”新国立競技場 国際デザイン・コンクール 表彰式” 2013年3月19日

これを見ると、コンペ案そのままではなく、「南北を逆にした修正案(これを修正案1とする)」でプレゼンを行っている。修正案にはコンパクト化してコストダウンを行った案(修正案2とする)も存在し、コンペ提案も含めると公表の時系列は以下のようになると思われる。
 ・コンペ案…公募締切2012年9月末
 ・修正案1…2013年3月19日コンペ表彰式プレゼン
 ・修正案2…2013年11月26日第4回有識者会議フレームワーク設計了承)

修正案1はJSCの依頼でザハ側が敷地に入るように設計変更し図面やCG等を作成したと思われる。既にこの時期ザハ側に支払うべき費用が発生しているたことになる。
修正案2は日建設計・日本設計・梓設計・アラップジャパンの4社JVと2013年5月31日にフレームワーク設計の契約を締結し、ザハともデザイン監修契約を結んで、ザハのデザイン監修の下、4社JVが作成したことになる。(この辺の経緯を記載したJSC資料を追記に添付)

当ブログで取り上げて来た「キールアーチ支持構造」に関して、この流れで再確認してみると、まずコンペ案は元々敷地に入りきっておらず、支持構造もどこまで考えてあったかは不明。
修正案1になると、以下のように表彰式プレゼン構造図には支持構造の位置と説明文が入っている。ただし、大きさや強度充分かは不明、また動画やCG中に支持構造の説明場面は無く詳細は説明されていないかも知れないが、ザハ側も一応まともにアーチ構造を考えていたことは分かる(アーチ支持必要性は常識だから当然だが)。
イメージ 4

だが、外観図では大江戸線が地下を通っている道路に近すぎると思われ、アンカー等の構造まで検討した結果だったかは疑問。
イメージ 1

モデルを見ても、キールアーチを地下まで伸ばしていくとアンカーを付けたら道路の下まで掛かってしまいそうである。だが、上記のようにプレゼン構造図には明確に支持構造が記載されているので相反するように思われる。

イメージ 2

結果的に修正案1にアンカー等の支持構造が入っていたかどうかは判定が難しい。外観から推測すると無しの可能性が高いと思われるが、最終的にはザハ側に確認するしか無いだろう。(昨日記事では「ザハコンペ案は結構まとも」と評価したが、日本側主導と当方が想定していたコンペ後の修正ザハ案にザハ側が深く関与しているようなので、ザハ側にも相応の責任が発生してくる可能性が出てきた。責任割合分析もなかなか一筋縄では行かなさそうである)

修正案1をベースに行われたと考えられるフレームワーク設計では、同年11月有識者会議時点で今までご紹介したJSC会議資料の図から考えても支持構造は無い可能性が高い。フレームワーク設計の何処かで支持構造無しが定着して「キールアーチの飾り部材化」に至ったと推察される。これに関与しているのは、ザハ・4社JV・JSCが主と想定され、彼らから聞き取りを行なっていかないと本問題の真相は掴めないと思われる。
だが、検証の第三者委員会はメンバーから見ても、このようなところには全く切り込めそうにない。上っ面の金額変遷だけ追いかけて、真相に迫れなかったら国民の不信が拭えず逆効果にもなりそうである。

それと「白紙見直し」の決断についても、実態は上記のように修正案1の段階から、致命的な「キールアーチ(実際はアーチになっていないから偽キールアーチか)」の問題が入り込んでいた可能性が高い。「キールアーチの支持構造が無い」という問題から、「アーチタイ」追加に発展し、アーチタイの実現性やコスト・工期の問題が大きくなった。プロジェクトに初期から「地雷」が仕込まれていたようなものだと思う。
今から考えると、当ブログでも引用させて頂いている森山氏ブログでは、爆弾の存在について幾度も注意喚起されていたことになる。当方としてもようやく流れが一本につながった気がする。4社JVの中にも見ていた人はいたと思うが、アーチ構造という建築の世界ではよく知られた話なのに、爆発前に軌道修正に至らなかったのは本当に残念。何が彼らをそうさせたのか。

なお修正案1以前のコンペ審査やコンペのやり方、要求仕様の決め方などにも遠因はあったと思われるが、具体的には修正案1の段階から考えるのが整理しやすいのではないかと思う。「支持構造なし」という地雷が、基本設計後に「アーチタイ」と云う更に破壊力を増した強力地雷に変わったが、地中の問題だからなかなか見えてこなかった。
しかし、着工が近づくとまず基礎工事を行わなければならず、アーチタイと云う地雷に触れざるを得なくなり、爆発してプロジェクトが吹き飛び白紙見直しになった。これは単なる上手くない喩え話だけではなく、着工に至ると必然的に吹き飛ぶ、つまり「着工できないプロジェクト」になっていたと云う趣旨である。

そのために安部総理も今回は英断のはずだが、スッキリ感がないように見受ける。官邸から事情を調べさせたら頼みのゼネコンを含めて、誰に聞いても出来ると言う人がいなくなる。工事費も実情は金額の問題より幾らかかるか読めない方が難題だっただろう。追い込まれて決断したと思う。それでも無駄に粘らなかったのは立派と思うが、IOCの会合が迫っていたという事情もあった。
内実は追い込まれ決断なのだから、「支持率アップに利用した」とか言う野党や一部マスコミ等は実態を知らなさ過ぎる。そして総理にしてみれば、自らが招致でプレゼンした公約を覆すのは忸怩たる思いがあったと推察する。支持率は流動的だが、国際的公約違反はずっとついて回る。しかも、この先に見通しが確実にあったとも思えない(一応「全部上手くいけば」間に合うというような激甘見込みは有るのかも知れないが)。
真相に殆ど迫れそうにない検証委員会、「ご意見募集」から始めねばならない官僚的悠長さ、オプションで幾つも選択肢を増やしてくる与党、政権揺さぶりありきの野党、揉めたほうが嬉しいマスコミ・・・、まさしく前門の虎、後門の狼に取り囲まれてプロジェクトの行く末は見通せてないのではないか。
「(五輪目指しては)建てない」と云う方向に近づいているのかも知れないが、それについては明日又書いてみる予定。

以上
[追記]
第4回有識者会議(平成25年11月26日) 資料1 新国立競技場基本設計条件(案)

フレームワーク設計の実施】
その後、基本設計に入る前段階として、ザハ・ハディド氏のデザイン案を基にコ
ストや規模などの基本設計条件を整理するための「フレームワーク設計」を行うこと
とし、3月1日に公募型プロポーザル方式で選定手続きを開始し、別途設置した選
定委員会において、5月15日に、日建設計・日本設計・梓設計・アラップジャパン
の4社JVを特定し、5月31日に契約しました。
併せて、ザハ・ハディド・アーキテクツとデザイン監修契約を結んでいます。
フレームワーク設計における検討】
フレームワーク設計」では、ザハ・ハディド・アーキテクツのデザイン監修の下、
基本設計を行う前段階として、既に決定しているラグビーワールドカップに加え、オ
リンピック・パラリンピック競技大会開催を想定しつつ、ザハ・ハディド氏のデザイン
案を忠実にかつスポーツ・文化の各WGから出された要望をすべて取り入れた場
合の試算を行いました。
その試算した工事費がデザイン競技時の目安を超えるものであったため、各方
面からの御指摘などを拝聴しながら、ザハ・ハディド氏のデザイン案を生かしつつ、
各競技の関係規定を前提に、規模やコストを縮小し、基本設計条件をとりまとめま
した。
6. 構造
施設規模の縮小や都市計画、建築基準法などの規定を踏まえ、デザイン競技
時のデザイン案を生かしつつ、コンパクト化を図ることが可能であることが検証さ
れた。コンパクト化を図った現在案を以下に示す。
その具体的な構造計画は、今後、基本設計において検討する。
イメージ 3

追記以上