真実発掘14 「設計会社の説明責任」
当ブログで検討を続けてきて、基本設計完了時の「基本設計書(案)」と本来それをベースに作成されるはずの実施設計入札公示資料で大きな問題が見つかっている。以前記事と重複する点も有るが、本問題にとって非常に重要であると思えるので再整理して記述。
まず手続き的に2点の瑕疵があると思われる。
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第5回有識者会議議事録と入札公示資料は公開されていないので詳細確認は出来ないが、概ねこのような状況だったとすると「有識者会議を欺いた」という重大な業務違反になってくる。特に(1)の時点でアーチタイ追加必要性を既に認識していて、(2)入札公示段階では追加する積りでありながら、アーチタイ無し図面を有識者会議に提出していたとしたら「偽装」と云うことにもなるだろう。何故このような業務違反行為が行われ、どのような人が関与していたのか。
次に、もし5月28日有識者会議後から8月18日入札公示までの間にアーチタイが追加されたとすると、フレームワーク設計から基本設計まで同じ設計会社JVが担当し、2013年5月~2014年5月まで約1年間設計した中でキールアーチの支持構造についてどのような検討を行っていたのか。
また入札公示資料中の図を分かりやすくするために横に並べてみると以下になる。
アーチタイはとても「設計した」とは呼べないような簡単な図になっている。入札公示段階でアーチタイやキールアーチ等の構造設計はどうなっていたのか。もし基本的な構造設計が出来ていないまま入札公示を行ったとすると、基本設計を完了できていないことになって契約違反の疑義も出てくるだろう。(当然ながら「基本設計」でどこまでの設計を行う契約になっていたかにもよるが、文字通り「基本」的構造は検討しておかないと屋根やスタンドの概要設計さえ出来ないのではないか)
このように今回の新国立問題には設計に関わる要素、しかも建築成否にまで関わるような重大問題があった。政府与党は相当遅くなったが今からでも迅速に設計会社の公式調査を行うべき。ただし技術的内容だから第三者委員会とは別に例えば国交省が入って調査するのが良いかもしれない(第三者委員会の件は追記で言及)。文科省の当事者能力が危ぶまれて既に国交省が入っているようだから、大体の所は既に掴んでいる可能性もあり、それなら政府は早くまとめて公開すべき。
なお、上記(1)(2)の過程のみならず、以前記事でまとめた下図のような設計各段階での変遷がある。またキールアーチ、アーチタイ関連だけでなく、他の仕様も当然変遷がある。問題になっている工費や工期の見積変動に関しても、まず仕様を整理しないと比較にならない。設計会社JVからヒヤリングして設計状況をまとめて、JSC・文科省等の指導内容なども併せて解明する必要がある。
或いは設計会社が政府の了承を得て、自ら記者会見等で直接説明する場も検討出来ないだろうか。辛い立場になるとは思うが、設計者の矜持として勇気を持って国民に真相を明らかにしていただきたい。なお、設計会社JV以外に、業務内容がまだよくわからないが「発注支援JV」があり、ゼネコン・ザハも含め調査する必要があると思われる。
以上
[追記]
第三者委員会第一回会合が昨日開催。委員は以下の様な方々とのこと。
建築の専門家は古阪京大教授のみ。これで本文に記したような技術的問題に充分迫れるだろうか。他の委員は自分の専門分野の話をしたいから、その時間に相当取られるだろう。本問題では法的・会計的要因もあるにせよ、まず技術的に大きな問題があって、それを隠蔽したり取り繕う過程で法的・会計的問題も出てきている可能性が高い。つまり、根本的な技術的問題を先にやってしまわないと、派生要因で重箱の隅をつつく話に終始してしまう危険性がある。しかし委員長が企業法務で、弁護士・公認会計士・みずほ証券が各一名。法的問題と工費問題が主要対象になる可能性が高そう。
結局技術系が少なすぎるし、大学教授だけでなく民間も必須。それには例えば森山氏という当初から本問題に取り組んで来られた最適任者がいるのに、何故政府は依頼しないか。本問題の根幹には前例のない巨大建築物で技術的課題が多かった(多すぎた)という面があるのに、技術専門家が教授1名のみで、しかも民間無しでは「政府は本気でやる気があるのか?」ということにもなってくる。
しかも以下のような報道も有り、元から設計会社JV、そしてゼネコン等は主要検証対象にならない可能性もありそう。これでは結果は推して知るべしか。
<委員長に選出された柏木昇東大名誉教授は、9月半ばまでの最終報告に対し「ほとんど不可能。これだけの問題では半年はいただかないと、しっかりとした調査にならない」と苦言。下村文科相をはじめ、同省やJSC幹部、デザインの審査委員長だった安藤忠雄氏、有識者会議の森喜朗氏らのヒアリングを念頭に、焦点を絞り検証する意向を示した。>
追記以上