真実発掘13 「基本設計のキールアーチ補足」
(本日2本目記事)
このところアクセスが急激に増えたので検索などで調べてみたらTwitterで拡散して頂いていて、Twitterと云うメディアの効果を改めて感じた。それでTwitterを眺めていたら当ブログ記事「基本設計のキールアーチはデザインテイスト維持用部材だった」 を引用頂いて以下の様なツィートがあった。
<屋根構造は、テンションリング&コンプレッションリングかなとも思ったけど、リング閉じてないからやっぱアーチ構造でしょね。>
当方には基本設計のキールアーチが「アーチ構造」とはどうしても見えないのだが、ツィートされた人のプロフィールを見せていただいたら「1級建築士」となっていた。建築技術者ではない当方より遥かに建築知識をお持ちな訳で、当方としても追加考察してみた。該当記事で使用した図に、リング状部分へのコメント追加して再掲。
「アーチ両端に支持構造がない場合の模式図」を森山氏の図面に部分変更させていただいて作成してみた。
やはりアーチ両端が例えばアンカーやアーチタイ等で支持されていないと、全体としては「アーチ構造」とはならないように当方には思える。
それとツィートにある「テンションリング&コンプレッションリング」と云うのは屋根外周を指しているのだろうか。
以下ザハ案には一応キールアーチの支持構造と思われるもの(A,B)がある。しかし前掲の基本設計図で、例えば「デザインテイスト用?」とした部分は端部の支持構造が無いので、屋根から下がったアーチ風味の(巨大な)棒状部材ではないだろうか。そのような点で当方はザハ案の「キールアーチ」構造が基本設計では継承されているとは思えない。屋根が部分的に何らかのアーチ構造であったとしても、それはザハ案キールアーチの踏襲とは違うものだと想定する。
この辺は知見お有りの方おられましたら、コメントなどいただけるとありがたいです。なお、コンペ時ザハ案のキールアーチは基本設計時とは違って、ちゃんとした効能が意図されていたことは別途検証予定。
さて話は変わって、以下の様な記事等でJSCや設計会社の見積りの話が出てきている。
”JSC:新国立工事費、「3000億円」設計会社提示無視” 毎日新聞 2015年08月07日
<事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)が昨年5月、基本設計の概算工事費を過少に見積もって公表していたことが、関係者の証言で分かった。設計会社側が約3000億円と提示したのに対し、JSCは資材の調達法や単価を操作するなどして1625億円と概算していた。>
昨年5月と云うと基本設計承認の頃だが、当ブログをご覧になっている皆さんは御存知の通り、その際はアーチタイが入っていない。ただし、毎日はJSCが金額操作したことを問題にしている。それはそれで重要だが、「設計会社側の3000億円見積」がどのような仕様で行われたかも含めて検証しないと、全体像が見えて来ない。
毎日だけでなく他の新聞社も、途中でアーチタイ追加など基本構造仕様が大きく変わっていて、どの仕様で見積もったかによって数百億、或いは1000億でも見積金額が変わってくる特異なプロジェクトだと云うことに、いつになったら気がつくのだろうか。特に材料費や工賃単価だけでなく、アーチタイなど深刻な技術的課題で工期がどれぐらいかかるかさえ読めない。工期設定の仕方によって金額が大きく違ってくるプロジェクトでも有る。分析が難しいことは確かだが、専門家のブレーンなども使えるはずなのに、いつまでも仕様面の相違などに突っ込めないということで、報道のレベルというものを改めて思い知らされた。
それと基本設計書に明記されている「スタンド部・屋根部とも免震構造」も、「免震」と書くだけなら簡単だが(笑)、スタジアムのような建物は免震ではなく耐震がスタンダードらしく、コンペ金額検討時にも参考にした模様の日産スタジアムなども耐震となっている。(免震のほうがコスト高く構造も変わってくる)
・味の素スタジアムも耐震のようである
更に有識者会議で承認された基本設計仕様で行われるはずの入札公示資料で、アーチタイ追加という基本構造変更がなされている。それに伴い免震関係の設計が大きく変わるであろうことも紹介してきた通りである。つまり、可動機構付き巨大屋根と8万人スタジアムに対する免震設計がどのようになっていたかも見積りに相当影響するのは確実。しかし、新聞社はとにかく「金額」だけに目が行って肝心の中味(仕様)の件はいつまで経ってもスルーのようだ。
以上