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真実発掘11 「基本設計のキールアーチはデザインテイスト維持用部材だった」

昨日記事の「平面図からのキールアーチ検討」は、一昨日の「断面図によるアーチタイ有無判定」より分かりにくかったかも知れないが、当方は「基本設計書(案)」の以下頁の記述が以前から気になっていた。

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特にA部(キールアーチ先端)の支持構造について基本設計書では説明が無いため、実際はどうなのか昨日記事で検討してみたら、やはり「支持構造は無い(少なくとも図には描かれていない)」と云うことが判明。
そうなると多分B部は構造材として意味を持たないだろう。ザハ案のデザインテイストを維持するため(だけ)の部材と云うことになってくる。

これは既に森山氏の以下ブログなどで的確に指摘され図示もされていた内容だが、当方は他業界(電子系)の技術者として、こんな無駄でかつ構造的に大きな無理が生じる構成を、建築業界の日本トップクラス設計会社が集まったというJVが本当にやるとは常識的にとても理解できなかった。
(当方注:下図の赤いアーチは屋根部の断面と考えたほうが分かりやすいと思われる。屋根部がスタンド上部に乗っている形。キールアーチ自体は地下2階の少し下まで伸びているので図のもっと下の方まである)

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更にC部は屋根の構造説明であるが、屋根フレームの各構造材には(もっともらしく)効能が書いてある。だが構造計算をしっかりやった結果なのだろうか。「デザイン維持部材」に成り下がったとはいえ、スパン370mもの巨大キールアーチの先端支持が出来ていない(実質的に浮いている?)。このような状態でも日本トップクラス設計会社の技術者は構造計算を行って、確実な構造設計を作り上げられたのだろうか。そうだとすれば凄い能力で、当方などからは想像も付かないような方々がやっておられそうである。

結果的に「基本設計書」では、「構造的に屋根フレーム部分だけで成立させておく」と云う設計意図だったのだろうか。それをスタンド部にかぶせるように建築し屋根自重や外力に対して支持するという、謂わば「蓋構造」の設計になっていたことが考えられる。以下の東京新聞の解説図は、それを表しているのだろうか。
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スタンド外周部にキールアーチも含めた屋根全体が乗って、スタンドが支える構成になる。D部説明でスタンド・屋根とも「免震構造採用」が明記されており、重要な免震について屋根工区は相対的に楽になるがスタンド工区の責任が増すだろう。
このような設計思想で進んでいたと推測した上で、5月28日会議後にJV内部指摘などがあって「アーチ先端を支持しないと構造的に成り立たない」という事になり、急遽追加したのがアーチタイではなかったか。そして結果的に非常に大きな構造設計変更を行ったが、有識者会議を始め、外部に分かるように説明されていなかったのではないか。

更に、そもそもの発端から考えてみるとザハ案のキールアーチが橋梁のアーチを想起させるから、建築業界の方々も、或る程度知識がある一般の方々も、「ゼネコンなら巨大でも作ってしまうだろう」という(楽観的)認識があったのかも知れない。しかし、「2013年5月に始まったフレームワーク設計のどこかの時期~2014年5月までの基本設計の間」はスタンド部にかぶせる巨大なフタの一部という、橋とは全く違うものになっていたと想定される。

その設計思想のまま「2014年5月28日第5回有識者会議」に構造資料が提出され、「8月18日入札公示資料」では再度橋梁構造に近くなるアーチタイ追加が行われた。このような経過だとすると、有識者会議では必要事項(アーチタイ追加)を説明せずに了承得て、その後変更の了承を得ないでアーチタイを入札仕様に追加した」と云うことになる。
有識者会議を欺いた偽装」が行われたと云うことになるだろう。また、基本設計時の工費見積りはアーチタイ無しで行われた可能性が高く、それが有識者会議で説明されていたら了承が得られたかどうか分からなくなる。今回の新国立問題を左右する非常に重大な局面だった。

もしこのような経過なら責任はどうなるかということになる。しかし、仮に本当に「蓋構造」でやれると設計者が思って進めていたなら、どうなるか。故意ではなかったと云うことになると、責任問題はややこしくなる。ただし、結果として有識者会議の委員に必要な資料を提供せず、その後大きな設計変更したことを(多分)伝えてなかったと云う責任は免れない。
結局「当時何か起きていたか」について、出来るだけ正確な事実関係を知ることが一番重要であり、政府の委員会などが設計過程の調査を早くやるべきと切に思う。

なお、参考としてザハデザインを検証しておくと、下図のように細いけれどもアーチ支持部基礎が構成されている。その点では、「蓋構造」は日本側設計者の問題ということになって来る。ただし、ザハ事務所もデザイン監修で参加していたのだから、ザハ案の根幹部であったキールアーチの位置付けが大幅変更(デザインテイスト維持用部材化)された際のザハ側対応などは調査必要だろう。
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以上
[追記]
ここからは推測だけでなく憶測的になるので本文とは別に記すが、有識者会議から入札公募までの間でアーチタイ追加が行われたとして、何故そうなったかを考えてみる。一番考えられるのは、会議資料を後で見た他の設計者などが気がついて、注意喚起したので再検討が行われたという流れである。またその際には森山氏ブログを見ていたかも知れない。有識者会議翌日の2014年5月29日から「新国立競技場の基本設計は出来上がっていない! 」シリーズを書き始めておられたので、知っていた設計者もいただろう。更に同氏ブログでまさにアーチタイ(タイバー)に言及した記事がその前月にあった。

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一般人向けに易しく「米村でんじろう先生風」で原理解説されている「輪ゴムの実験」にインスパイアされて、アーチタイ追加が急遽出てきたなんてことは、日本トップクラスの設計チームにおいて、まさか無いだろうな・・・。これが昨日記事の自己コメントに書いた、頭の中をよぎった「悪夢」。
それでも入札公示資料の、あのしょぼいアーチタイの図を思い浮かべると、「まさか」が実際に有ったかも知れない、などと思えてしまうのは連日の猛暑のせいか。

追記以上