kensyou_jikenboのブログ

yahoo!ブログの同名ブログを移行しました

真実発掘10 「基本設計平面図のキールアーチ」

昨日記事で基本設計図の「断面図」にアーチタイが記載されていないことを解明した。
引き続いて、基本設計図には各階ごとの「平面図」もあって、それにはキールアーチの断面図が記載されている。キールアーチがどう配置されているかが概ね分かる。
6F~B2F各階平面図におけるキールアーチとその周辺部分を以下に示す(南側)。地下から天井に向けてアーチが立ち上がって行く様子が分かる。図が見えにくい場合はJSCの公開しているpdfで原図をご覧頂きたい。 (「新国立競技場基本設計図(案)」 http://www.jpnsport.go.jp/newstadium/Portals/0/yushikishakaigi/20140528_yushikisha5_shiryo2.pdf )

イメージ 2


キールアーチは一番下の階のB2F平面図にも書かれている。図ではB2Fを貫通して、その少し下まで伸びて止まっているように見える。その部分を以下に示す。

イメージ 1

平面図のキールアーチ記載に当方が注目したのは、アーチタイは無くても何らかの方法でキールアーチを支持しないとアーチのスラスト力だけでなく自重も支えきれない。それを設計者がどう対応しているかである。しかし、アーチタイと同様にキールアーチ支持部の記載も見当たらないようである。

一体どうなっているのだろうか。プロの仕事とは全く思えない。支持部の設計を行っていなくて上モノだけ設計し、支持部は実施設計時にゼネコンに丸投げする算段だったのだろうか。しかし、実施設計段階も設計自体は同じ設計会社JVが担当している。一番の基礎になる部分を早く検討しておかないと時間が無くなって、自分で自分の首を締める事になるのに何故基本設計で支持部の設計図を作っていなかったのだろうか。またフレームワーク設計も担当したのだから、その際に支持部も或る程度検討していないと、上モノの検討も出来なかったのではないか。

もし実際には支持部の検討を行っていたのなら、何故設計了承を受ける最重要な有識者会議資料に概略でも載せなかったのか。或いはやはり実施設計へ先送りするつもりだったら、なぜ入札公示資料にはアーチタイを入れたのか。(アーチタイが実施設計の結果で追加されたことにすれば、有識者会議でアーチタイが無かったことも一応言い訳できる。ただしゼネコンとのネゴが必要になるだろう)
他にもJSCの担当者との関係など、分からないことだらけである。

設計のプロが重要な会議で建築家(安藤氏)も出席するのに、このような図面をよく出したと思う。そしてもっと不可解なことは、設計会社は4社JVで外資系設計会社も入っている。「日建設計・梓設計・日本設計・アラップ設計共同体(JV)」である。
基本設計の集大成を有識者会議に示す資料だから、多くの設計者が関わって作成し内容も見ていたと想定される。大手設計会社や外資の優秀な設計者たちが図面を見て、ザハ案の根幹を成すキールアーチの支持部が抜けていることに対して指摘が出なかったのだろうか。

また、4社JV以外に「発注者支援業務」と云う目的で、「山下設計・山下ピー・エム・コンサルタンツ・建設技術研究所共同体(JV)」が入っていたとのこと。このJVが建築に詳しくない発注者(PSC)を支援して、設計会社JVから上がってきた図面や資料などを精査する業務も行っていたとすると、設計会社JVと同じく優秀な建築のプロ達が本来すぐ見抜けたのではないか。

繰り返しになるが一体何が起きていたのだろうか。政府は「新国立競技場の経緯などを検証する第三者委員会」を立ち上げたそうだが、委員たちに正しい情報を与えるためにも、JSCや設計会社などのヒヤリングを行ってまず「基本設計承認と入札に至る経過」を明らかにすることから始めるべきだろう。

以上