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真実発掘8 「アーチタイ追加経過は一大偽装事件の趣き」

これまで見てきたアーチタイに纏わる諸問題を全体的に考えてみると、これだけの根本的大問題を設計会社やゼネコン、そして発注者のJSC担当者が知らないわけがないと思われる。
特に設計会社は日建設計を中心とする4社のJV(ジョイントベンチャー)がフレームワーク設計・基本設計・実施設計の全てを担当している。(実施設計はゼネコンが入っているが、技術協力という形であり、設計は引続き日建設計他JVが担当)
設計の進展過程から再度アーチタイ追加経過を整理してみる。

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表の最下欄はアーチ支持方法である。今回の設計において、まず考えることは構造の中心となる巨大キールアーチの支持方法だろう。アーチ部の基礎構造を先に固めないと、他の部分の構造検討にも影響が出る。
表から分かるように、フレームワーク設計と基本設計の段階では、アーチタイを記載した図面は有識者会議に示されておらず、支持方法は不明である。
アーチ支持方法は基本的に以下の2種類が考えられる。

(1)アンカー … アーチの両端にコンクリートなどのブロックを付けて支持(下図例)
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    (2)アーチタイ…アーチの両端をケーブルやバーで結んで支持(今回はタイバー)

(1)のアンカー方式は新国立の場合、キールアーチに合わせてアンカーも巨大になるため地下鉄との干渉などが発生することは良く知られている話である。設計会社も検討を始めて早い段階で認識していたことは確実。それで(2)のアーチタイ方式が出てきたと思われるが、フレームワーク設計後の図面にはアーチタイは入っていない。ただ、フレームワーク設計はデザイン変更と規模縮小で敷地内に収めること及びコストダウンを主眼で行ったと云う理由付けが一応出来るかもしれない。

だが、基本設計では基礎部分の検討は避けて通れない。具体的構造を決める際には構造計算が必要になり、基礎部分が決まっていないとやれない。新国立で一番深い所に位置する基礎はアーチ支持部になるから、まずそれの方式と具体的設計が必須。しかし2014年5月まで行われた基本設計の結果を了承してもらう第5回有識者会議資料に、スタジアム全体の細密断面図は入っているがそこにアーチタイ追加は示されていない。

2014年7月7日第6回有識者会議資料「新国立競技場設計概要(案)(基本設計時からの主な変更点等)」には次のように書かれている。
2.実施設計段階における検討 新国立競技場の実施設計については、平成26年(2014年)5月に国立競技場将来構想有識者会議で了承された基本設計に基づき、実施設計を進めてきた。

「了承された」と明確に書かれている。しかし第5回会議の資料にアーチタイは無いので、アーチタイ無しで了承されたことになる。だが第6回資料の<基本計画からの変更点>には、アーチタイ追加の記載はない。

各段階ごとに承認を積み重ねて進められていた中でこのような異常なことが行われた意図については、設計者や発注者などの限られた関係者しか分からないことだろう。しかし、アーチタイを追加しないと建築物としての設計が成り立たないとすると、各担当者の業務上で次のように重大な問題が有ったことになる。
 ・設計者側担当者…実際には建てられない構造の設計を提出して設計料(基本設計で約3or4億円?)を受け取った
 ・発注者側担当者…建てられない設計を精査せずに受領して発注者や国(ひいては国民)に損害を与えた

これが過失ではなく、分かっていて進めたとすると、もはや「偽装」になってくるだろう。姉歯東洋ゴムのような建築界の偽装事件があるが、これもその中に入るか、或いは国家的問題にまでなっているのだから、最大級の偽装事件ということになりかねない。
また、「過失レベルとは思えない」と云う理由になる資料を参考に示す。

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左側は第5回有識者会議資料でアーチタイは無いが、右側は東京新聞記事の図でちゃんとアーチタイが付いている。有識者会議資料と入札公示資料を組み合わせたものと推察されるが、このような図を有識者会議に出す必要があった。そうすれば早めにアーチタイに関わる多くの問題に気がつく識者も出てきただろう。新聞社でも作れる図を設計会社が作れないはずがない。基礎部分の大変更という重要事項を示さないで了承を得たのは、「意図的偽装」と受け取られてもやむを得ない行為だろう。
また、有識者会議資料ならJSC HPで公開されているが、入札公示資料は公開されていない。結果的に関心を持ってJSCのHPを見る人にもアーチタイ追加は隠されてしまった。

実際にアーチタイ追加隠しが意図的だったかどうかは、基礎設計時の具体的作業図面が設計会社に時系列で保管されているのは当然で、それを精査したらすぐ分かる。アーチタイがどういう経過で追加されていたか、構造計算は適正に行われていたか。(もし構造計算が適正に行われていないなら姉歯の二の舞いにだった)
更に実施設計について、ゼネコンは設計協力という形であり、設計は引続き日建設計他JVが担当したようだ。実施設計段階ではアーチタイ付きキールアーチが本当に作れる設計になって図面が出来ていたのか。これも調べればすぐ分かることである。ここでも実際には建てられない設計を提出して設計料を受け取っていたとすると、引続いての偽装になるだろう。
設計会社とJSC・文科省との協議や摺り合わせ等がどうなっていたかも明らかにする必要がある。議事録やメール等が残っていると思われ相当なところまで調べられる。

だが総理大臣の「白紙見直し」表明で、この「一大偽装事件」も表面化せず闇に葬られることになるのだろうか。ただし各担当者も宮仕えの中で大変だった事は推察出来る。だがそれぞれの組織でどこまで上層部が関与していたかは重要だろう。白紙見直しと文科省局長勇退・文科大臣の内閣改造時交代などを表に出して、真の問題は全部まとめて有耶無耶にしてしまうだろうか。だとすれば、そのような体質で次の見直しの工程も上手くいくのかどうか、大いに疑問を持たざるを得ない。今後の政府対応を注視。

以上