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真実発掘6 「アーチタイ追加は隠されていたのか」

昨日記事で「ゼネコン神話」などによる根拠薄弱な楽観的期待が、工期実現不可能と思える計画が止まらなかった原因の根底にあるのではないかということを書いた。
しかし、「アーチタイ追加」が明確に分かっていたら、建築家の皆さんの中には「ゼネコンで何とかなるかもしれない」というレベルではなくなって、完全に工期が間に合わないという判断をして公表する人が出てきたのではないだろうか。
それで調べて整理してみると、「アーチタイ」が資料として出てきた時期と各種会議の時系列が見えてきた。
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2014年5月まで基本設計が行われ、同月28日第5回有識者会議が開催されて基本設計が了承された。この時のJSC資料にはアーチタイが無く、その後同年8月18日の実施設計入札公示資料には記載があることは今週の当ブログ記事でお伝えした通りである。

つまり、有識者会議にはアーチタイ追加は伝えないで了承を得たことになる。更に同年7月7日と9月8日に「新国立競技場計画に関する説明会」が行われている。これは建築関係団体から建設計画に提言等が出されていた中で、JSCが説明会を開催したものである。「日本建築家協会」芦原会長を始めとする重鎮専門家7名ほどが出席されていた。また有識者会議からも安藤氏、内藤廣氏などの専門家が同席。

JSCのHPにある説明会の議事録が見てみると、「キールアーチ」の話は出てくるが「アーチタイ」については言及が見当たらない。経験豊富な建築関係専門家の集まりであるから、入札で使用した図(以下再掲)を出せば、スタンドとアーチタイの位置関係が上下逆なことも含め、巨大なアーチタイを地下に埋め込むことによる多くの問題点にすぐ気がついただろう。安藤氏や内藤氏も当然気づく。アーチタイの構造や耐震対策等に関する質問も出る。しかし、議事録で言及がないと云うことは提示されていないと推測される。

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アーチタイ追加という基礎構造の大変更が、建築専門家の集まりに示されなかったのである。しかし、基本設計は5月に終わっており、そこでアーチタイ追加がなされたから次段階である8月18日の実施設計入札公示資料に入ったと考えられる。

この経過は以下のように2段階で不思議に思える。
(1)基本設計の承認を得て入札公示に進むための有識者会議と想定されるのに、基本設計における非常に大きな変更であるアーチタイ追加を示さなかった。フレームワーク設計ではアーチタイは無かったので、当然基本設計で承認が必要な項目になる。
(2)8月18日入札公示の前後約1ヶ月と云う近接した時期に開催された2回の建築関係団体への説明会でも、アーチタイの資料は出していないと思われる。

それで5月28日有識者会議にはどのような資料が出されていたか見てみると、キールアーチの説明図は入っている。(下図左側。右側は当方が参考に元の構造を添付)
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元の案と一見似ているが、トラスからストラットへの変更など相当構造的に変えている。つまり、キールアーチ自体の構造変更は明確に示しているが、基礎構造の変更になるアーチタイ追加は図もないし全く説明されていない。それで入札公示資料には入れている。

この経過をどう考えるか。
皆さんそれぞれに受け取り方はあると思う。
当方としては、これまで調べた上記事実を率直に考えると、単に資料の付け忘れにしては会議も複数あったし、結果的に「JSC(の誰か)が専門家には隠して入札に持ち込んだのではないか」と推測せざるを得なくなる。出来ればJSC側の反論や説明を聞きたいものである。

以上