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真実発掘2 「工費変遷の謎」

本題に入る前に以下の記事が出ていた。

これは舛添氏の更迭要求を実行したような形になったが、担当者は可哀想である。当方から見ると下村氏や舛添氏の方が遥かに責任は大きいと思われるのに担当者が犠牲になった。事情をよく分かっていない政治家による恣意的処分が未だに横行している。白紙見直しになったは云え、責任の所在等も含め今後に活かすためには客観的な経過分析の必要性を改めて感じた。当方のような別分野(電子系)の技術者から見た分析も、そのような検証に少しでも資するのではないかと考えている。

さて本日は注目度が高い工費の問題を検討する。
そのためにまず金額変遷経過をまとめてみた。ポイントはザハ案と言われるデザインについても、大きく分けると3種類あり、更に仕様の違いもある。
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説明を加えると、まずデザインは3つとも上方が北側(JR中央線方向)であるが、①のコンペの案はアプローチが中央線や高速道路を跨いでいて実現不可能であった。工費の方もコンペ設定の約1300億円に対して、それを越えると云う提案にはなってなかったと想定されるが(詳細は不明)、公募から締切まで約2ヶ月と云うことで相当荒い概算ということは否めないだろう。またコンペ条件における事業費設定自体が、昨日記事で紹介したようにざっくりした確認に留まっていたようである。

コンペデザインを活かしつつ北側での干渉をなくすために、南北をひっくり返すという(多分日本側設計会社主導の)荒業で②案になった。これは仮案だったようで余り表には出ていないが、何らかの形でコンペ後に設計会社による試算は行われたようで、この時に3000億円という数字が出たらしい。(コンペのザハデザインのままでは敷地逸脱などもあり試算もできなかっただろうから、②の段階で仮見積したと想定される)

よく知られているのが③案で、規模縮小などを行ってコスト圧縮したが1300億円には収まらず、1785億円になった。それでは国民の納得が得られないと云うことで、文科省が1625億円の予算上限を示し、それを受けてJSCが最終的にその金額で文科省に提示して合意されたのが④案と云うことになる。

次に基本設計から実施設計に移る段階でゼネコンを選定したが、今年初め頃にゼネコン試算で又3000億円と云う金額が出てきたのが⑤になる。その後下村大臣が発表して可動屋根(正式には遮音膜)の設置を五輪後に先送りにしたり、可動席を仮設にしたりして圧縮し、2520億円にした⑥案が今年7月7日に有識者会議で了承された。それに対しても国民の批判は強く、7月17日には安部総理が「白紙見直し」を発表したという経過。

この二転三転それ以上している迷走ぶりには皆さんも呆れておられると思う。しかも説明を聞いても変動の理由がよく分からない。
それに対して今回調べてみて思い当たった事がある。発注側の1300億円や1625億円の想定を遥かに上回る3000億円という数字が2度出てきている(②と⑤)。しかも勘レベルではなく、設計会社、ゼネコンとも試算して3000億円が出てきたようである。
技術者としての経験から、最初見積もった金額からそう大きくは外れないし、外さないのがプロであると思っている。しかも今回は納期がきっちり決まっている割に設計に関しては長丁場の進行になっているので、設計会社もゼネコンも急に見積もり出したのではなく、或る程度検討時間もとれたと思う。

その上で両者とも3000億円と云うことは何か意味があるのではないか。ここでもう一つ技術者の経験から思いつくのが「断り見積り」というやり方である。しがらみがあって見積りはしなければいけないが、到底合わない金額の場合は先方から断ってもらえるような高い金額で出す。「出来ない」とはっきり言うとカドが立ったり、「なぜ出来ないのか、どこかを直せばよいのか」など延々と聞かれる。だが仕様を或る程度変えたぐらいでは、とても出来ない場合もあり、そういう時に使うのが「断り見積り」になる。実際③での1300億円、⑤での1650億円に対して、3000億円と云う試算は断り見積りとしては「安すぎず高すぎず」の上手いレベルの金額設定ではないかと云うようにも思える。

どうも設計会社もゼネコンも断りたいのではないか。それはザハ案の仕様には両者が断りたくなるような技術的に不可能なレベルの難題があるのではないかと云う疑念があり、明日以降それについて記す。

以上