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決定的証拠と決定的反証

(本日二本目記事)
一本目記事のように、神保氏は「真犯人メール発覚前には決定的証拠は無かった」と言っておられる。それに対して「決定的証拠はあった」という立場の方もおられる。
当方の別見解(後述)を除くと、「決定的証拠の有無」というシンプルな対比になる。ただし、決定的証拠がある場合は有罪と云うことになるが、逆に反証が決定的ならば無罪になる。
つまり、「決定的反証の有無」という観点も必要になるだろう。それで2014年6月以降に予定されていた「弁護団反証フェーズ」が重要になるはずであったことを当方は以前から述べてきた。
反証として予想された内容を挙げてみる。

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この中で、特に2項と4項は反証の方が真実であることは皆さん御存知の通り。
2項では検察側主張の開発期間より前に「egservice」という原形があり、かつ検察側が「乙社で開発」と主張したのとは違って、殆ど自宅で開発したようである。そのため反証である「それなりの開発物の存在」は真実であり、検察の「開発期間において殆ど業務に従事していなかった」という主張が誤りだったと考えられる。4項では実際の撮影に使用された機材は「PlaySport」であったから、「スマホでは撮影できなかった(しなかった)」という反証の方が真実であった。
真実に沿った反証には検察側も主張を変えない限り対抗できないが、変えれば当然「後付け」との批判が出ると共に主張の信頼性まで問われてくる。

また、1項の雲取山は公判前整理手続段階から既に検察側がギブアップ状態で、12月1日「頃」という曖昧な主張をしていたそうで、登山者聴取の調書も証拠申請していないという。
3項のDNAは検察側主張が真実ということになるが、テープのどの部分にDNAが付着していて、「他の人のDNAが付着する可能性があること」や、「巻く際に犯人のDNAが付着しないように巻けること」を詳細に立証しないと、DNAは証拠(反証)として分かりやすいので弁護側有利になってしまう。(「他人のDNA付着」だけでなく、「私のDNAが出ないことが重要」と片山氏は保釈後会見で発言)
5項のSDカード日付は、野間氏が発見した改竄履歴を、警察・検察側は発見できていなかった(シンポジウムでの野間氏談)ので、日付変更ソフトの使用可能性だけでは立証として弱くなる。

このように分析してみると、真実に立脚した反証も複数あるのだから、検察側立証に対して神保氏も述べている「合理的疑い」が当然出てくることになるだろう。検察側はこれを乗り越えられたか。
上掲表を眺めてみれば、検察が警察と連携して再捜査でもしないと合理的疑いを払しょくすることは困難ではないかと当方には思える。再捜査しなかったとは断言できないが、証拠の追加は基本的に出来ないということを検察側も重々分かっているから、再捜査しないことは考えられるだろう。

そのような状況で裁判が続いていたら、「合理的疑い」を乗り越えることが出来たのだろうか。今となっては不明だが、「出来た」と断定することも難しいだろう。結果的に真犯人メールが無かった場合の裁判の行方は、有罪になる可能性が決定的に高かったとは当方には思えず、片山氏本人の見方である五分五分の方が妥当な線だったのではないかと思える。しかも実際に反証が始まる前で五分五分と云うことは、反証の仕方次第でもっと被告有利になる可能性もあって、真犯人メール前の当時、個人的には裁判としては被告有利と感じていたぐらいである。(無実かどうかは別で、当時「クロの可能性の方が高い」と云う見解を記事で表明していたことは今週記事でも言及した)

しかし、裁判官が予想より検察側寄りというのは保釈対応や判決でも感じたので、その点は潜在的に検察側有利だったかもしれないが、それで有罪判決が出たら控訴確実と想定された。
「決定的」証拠であるなら、自供に追い込めるか、控訴も断念させられるレベルということになるのではないか(また世論的には関心ある人の大多数を納得させられるレベルが想定される)。その点からすれば「決定的証拠は無かった」という神保氏らの主張も理はあるだろう。
また反証に関しては、合理的「疑い」を主張できるレベルでも「決定的」となる場合が有ると思う。「推定無罪」原則があるから、五分五分まで持っていけば無罪となるので反証の方が有利という理由である。
以上のように反証フェーズや控訴以降まで考えると、「有罪になる可能性が非常に高かった、或いは無罪になることは無かっただろう」と言えたのかどうか。精々「担当裁判官の自由心証次第」という状況だったのではないだろうか。

さて、決定的証拠に関する当方見解であるが、既に以下記事やその補足記事で詳細を示している。

特に強調したいのは、社内からTorが使えず明確な記録が社内サーバに残っていた「丙社アクセス履歴」で、これを使って色々な犯人証明の仕方があるが、例えば弁護側の「真犯人は再遠隔操作(遠隔操作の遠隔操作)を行なっていない」という基本的主張を容易に崩せたのである。丙社PCからの自宅PCに対するLogMeIn遠隔操作を、真犯人が何らかの手法による丙社PCの遠隔操作で行なったとすると、再遠隔操作になって弁護側主張に相反し、消去法で真犯人ではなく片山氏が行なったことが示される。
弁護側主張自体が片山氏犯人を証明する訳で、決定的な打撃を与えられたのに検察側がなぜ気付かなかったのか、本当に不思議でならない。しかも、片山氏アカウントを使用して野間氏が入手出来た多数のGoogle検索履歴があり、それを併せればアクセス履歴は更に強力な有罪立証証拠となったが、野間氏によると警察・検察側はGoogleから入手できていなかった。
また、上掲表の項目5「SDカードの書込日付」も野間氏は改竄を発見していた。これも、片山氏が提示できた唯一と言えるアリバイを崩すもので、決定的な効果を持たせることが出来る証拠だったが、警察・検察側は発見できていなかった。

以上のような事情を、野間氏と同じシンポジウムにも出ておられた神保氏が、刊行予定されているという書籍でどのように扱われるだろうか(神保氏も一本目記事にあるように「実は犯人と証明できたことは何点かあった。それが裁判で全く出来なかった」とのことで、実質は当方見解と同様の可能性あり)。ただし野間氏には特別弁護人としての守秘義務があるだろうから、差し支えない範囲で今後どの程度まで明らかにして頂けるか。またこれから本事件を扱った書籍が複数出版されることも予想されるが、それぞれの独自取材による新事実などが出てきて、判決が確定してもまだ疑問点が多い本事件の解明が進むことを期待したい。(肝心の片山氏手記も待望されるが、すぐは無理でも将来的には是非検討して貰いたいと思う)

以上