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 量刑議論

本事件の量刑には当方として、やはり疑問がある。以前に法務省で次のような会議が行われて、行刑の論点が整理されている。
行刑改革会議第4回会議議事概要”平成15年7月14日
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量刑の議論にも通じるこの論点に対して皆さんはどうお考えだろうか。
久保井委員(元日本弁護士連合会会長)が以下の見解を述べられている。
行刑の基本理念・ビジョンについて・・・刑の目的ないし刑務所の目的は、犯罪を行なったことの償いとして、一定期間自由を拘束することによって、受刑者に反省を促すことにあるが、基本的には「受刑者の更生、社会復帰に向けた再教育」にあるというべきである。

当方はこの見解に同感で、特に「更生と社会復帰」を重視すべきと考える。
また、外国が何でも良いわけではないが、欧州連合(EC)の資料でも以下のように述べている。
犯罪者に刑罰を科すことの目的は、その人に自らの過ちを理解させ、自責の念を育み、その人物を更生させ、最終的には社会復帰させることにあります。

さて、ここで上掲の論点整理に戻り本事件に即して考えてみる。
③改善更生・社会復帰」については、社会に出た時に「職」が必要だが、片山氏はIT技術者としての経験があり、それは又活かせると考えられる。ただ、服役が長いとその間の技術進歩に追いつくのが困難になってくるのは当然である。
また、今回のような事件を起こした経歴があって、雇ってくれる人や会社があるかという問題だが、これは理解のある人を一生懸命探すことになるだろう。ただし、それを探す前提は「更生」して2度と再犯をしないことである。更に、片山氏が今回のような犯罪を行なってしまった根底には、「職場で私用検索やTor使用を日常的に行う」、「仕事が進んでいないのに進んでるように虚偽の報告をする」など、規則違反を平気でやってしまう性格上の問題があるだろう。これを直さないと雇ってもらっても業務に適応できない。

結局精神的な改善が必要だが、発達障害自閉症スペクトラムなどの問題が絡むと思われ、更生のためには精神的治療やケアが必要になる。これをどのように実施すれば良いか検討するためには心理鑑定が必須だった。心理・精神鑑定と云うと、すぐ「責任能力」の話になってくるが、事件を起こした要因解明だけでなく更生や社会復帰のための必要性が本事件では大きいと思われる。

また、「②社会からの隔離」に関しても、再犯可能性が高い場合は一旦隔離するという考え方はあると思うが、そのためにも鑑定で心理状態を把握する必要がある。

結果的に、本事件において更生・社会復帰・隔離に資する量刑を検討するためには心理鑑定が必須だった。それには客観的鑑定が重要になるから、弁護側が行う鑑定ではなく、裁判官が命じる正式鑑定が必要であった。裁判官は判決で「反省は心もとない」と述べたそうだが、そのような曖昧な心証しか持てないのなら、なおさら正式鑑定を行うべきだった。

「①応報」についても、一番罪状の重い「ハイジャック防止法」の適用に関して課題があることを当方はこれまで指摘してきたが、次記事で判決内容から新たに再検証する。

以上