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 隠れた真実1「決定的証拠は複数あった」(補足3)「丙社履歴の多さ」

以下記事で2014/11/26に行なわれたシンポジウムでの神保氏の発言を紹介した。
"本事件の隠れた真実1「決定的証拠は複数あった」" 2014/12/9
更に神保氏は同シンポジウムにおいて次のように述べている。
取り調べをきちんとやって、もしサイバー捜査がしっかりしていれば、片山氏が自分で作ったシナリオでは矛盾点が出てきて説明がつかない可能性は充分あった

根本的で重要な指摘と思うので、当方もこれに補足。
まず取り調べをしなかった問題については、当ブログでも幾度と無く指摘してきたが、最終的に裁判官は判決で取調不実施をどう評価するのかは要注目と思う。検察側寄りの判断をして、全く言及しないでスルーするかも知れない。しかし、被告・弁護側が「録音取り調べが行われれば黙秘権を行使しない」と明言しているのにも関わらず実施しなかったことで、本事件の処理が混迷・長期化したことは検察側が何と弁明しようと客観的事実。それに対して裁判官は取調不実施の検察側判断をただ是認するのか、注目したい。

次にサイバー捜査の問題だが、当ブログ開設当初から「アクセスログ」でシロクロの判定を付けられるのではないかと述べてきた。しかし、残念ながら遠隔操作犯行を行なった乙社では判定に使える有効なアクセスログは残っていなかったと見られる。だが、公判前整理手続が進む中で「10月以降の派遣先である丙社はセキュリテイが厳しく、Torは使えず、アクセスログも取られている」という話が出て来た。丙社に移ってすぐの10月初には事件関連先へのアクセス記録があるということも明らかにされた。
警察・検察側は当然丙社ログを入手・分析しており、その意味ではサイバー捜査をきちんとやっていたことになるが、野間氏が入手できた「Google検索履歴」を警察・検察側が入手していなかったことはサイバー捜査上の大きな問題点と言えるだろう。

野間氏が第17回公判で説明した丙社からのGoogle検索履歴を当方でまとめてみた。
イメージ 3
これだけだと一見アクセスは少ないように見えるが、実際には他にも以下のようなアクセス記録があったことが分かっている。
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 (1)10月1~9日までの間に事件の報道記事が記載されたウェブページを閲覧している(佐藤氏会見など)    
 (2)丙社からのLogMeInの履歴が膨大にある(rec*lde**des*さん傍聴報告)    
 (3)Yahooリアルタイム検索…丙社プロキシログを見ると多数のアクセスが存在する(野間氏証言)
(なお丙社での勤務期間(10、11月の2ヶ月)のプロキシの全ログが数万件という話があって、どのログを指しているのか今のところ不明だが、大量のログがあったことは間違いないし、野間氏もGoogle検索履歴を上表以外にも沢山発見しているだろう)
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このような丙社アクセス記録を、例えばカレンダー上に丸で印(しるし)してみると、まず上表の分だけで以下のようになる(A)。
イメージ 1

もし(1)~(3)などの詳細アクセス記録を我々も見られたら、極端な場合片山氏は毎日事件関係アクセスを行っていた可能性もあり、カレンダーの出勤日は以下のように殆ど全部印が付いてしまいかねない(B)。
(仮なのでごく簡単にしてみたが、実際の記録は膨大だから午前午後や時間帯別などでも詳細に表現できるだろう)
イメージ 2

もし毎日はしてなかったとしても、例えばAとBの中間ぐらいで2日に1回ぐらいのアクセスがあったとして、別の真犯人がやったとしたら約20日も丙社の片山氏PCに繰り返しアクセスしたことになる。

もし検察側が実際のアクセス記録によって印を付けたカレンダーを見せるなどして、「真犯人がいても単に被告人を陥れるためにだけにこれほど沢山のアクセスを繰り返す必然性はなく、結果的に『別に真犯人がいる』という主張は合理的ではない」と説明すれば、多くの人は納得するのではないか。もちろん、そう思わない人もいるだろうが、そこは裁判であり、裁判官が自由心証によって理解すれば良いということが重要。当方はまず間違いなく裁判官は納得すると思う。
(昨年12月10日記事"隠れた真実1…(補足1)"で記したように、もし別の真犯人が遠隔操作でアクセスする場合は、アクセスの度に片山氏がPC操作可能な状況であることを確認する必要が生じる。そのような手間がかかることを、単に片山氏を陥れるために多数回行なったとすることは到底合理的ではないと云えることも重要)

また、(3)のYahooリアルタイム検索について、片山氏は「Yahooトップページからたまに事件のことは見たがリアルタイム検索は知らない」と言っていたとの野間氏証言があった。取調べを行っていたら同じことを言うだろうから、その上で多数あるというリアルタイム検索のアクセス履歴を突きつけて、「これを全部別の真犯人がやったと言うのか?」と取調官が問えば片山氏は持ちこたえられなくなっただろう。
(リアルタイム検索では時事刻々の情報が得られるから頻繁に行なっていたことが想定される。特に「犯行声明メール」(10月9日10日)、「自殺予告メール」(11月13日)の後などは反応を見るために連日多回数のアクセスを行なっていることが考えられる)

このように有罪に出来る証拠は充分以上に集められていたのに、それを的確に使えていなかったことが本事件立証上の最大の問題と言えるだろう。警察にはサイバー捜査部門があるが、検察にはそのような明確な部署が無いようで、それが影響したのだろうか。ただし、警察の捜査段階で既に上記のような丙社アクセスログを活用した何らかの立証方法を立案しておくべきだったとは思う。

以上
[追記]
警察・検察の捜査の問題点をこれまで取り上げて来ているが、本事件では警察が江ノ島の防犯カメラなどから片山氏を容疑者として迅速に特定したことは高く評価できると考えている。
しかし、その後は丙社アクセスログなどのように、片山氏特定さえすれば順次入手・解析できた証拠によって取調べで落としていれば、早期に解決していたのは確実。よって江ノ島特定後の捜査は本来容易だったと云える。
しかし、実際には既述のようにアクセス記録と云う膨大なデジタル証拠を的確に使えず事件決着を余りにも長引かせた。真犯人メールもその結果発生したとも云えて、警察の監視でスマホを発見して解決に導いたことについても、いわゆる「マッチ・ポンプ」的になってしまうだろう。
それでも世間的には分かりやすいから、スマホ発見のことはよく取り上げられる。結果的に本事件は後々「デジタル犯罪であるが、アナログの捜査による河川敷スマホの発見で解決した」というような真相とは大分違うストーリーで語られることになるのは確実と思われる。まだ少々早いが「真相が埋もれていくという経過」と云うものをリアルタイムで見れそうである。

追記以上 (明日から又不定期掲載に入ります)