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 求刑予測に関するコメント返信

昨日の記事に2名の方からコメントを頂いてる。以前何度か量刑検討の記事を書いた時はまったく反応がなかったが、論告求刑が次回に迫って来たということで関心が高くなっている表れと思われる。返信を本記事で記す。

(1)morinosatooさん
>求刑は4年6月以下か10年以上15年以下のいずれかしかあり得ないような気がするのですが、どうなんですか?
→日本の場合、併合罪の刑期は以下の刑法規定によって「最も重い罪」の1.5倍が上限。本事件に含まれる全部の犯罪が併合罪を構成し、その中で最も重い罪はハイジャック防止法違反で長期刑期は10年となり併合加算で15年上限。
刑法第47条 併合罪のうちの2個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。

ただし、本事件は再犯加重対象でもあるので、更に上限刑期は長くなる。刑の加重減軽の順序は、「再犯加重→法律上の減軽併合罪の加重→酌量減軽の順番で行う(刑法72条)」とのことで、併合加重より再犯加重のほうが重視されるようである。
そのため第12回公判で大阪府警に誤認逮捕されたAさんが<私の気持ちとしては、一生(刑務所の中に)入っていただきたいが、それは難しそうなので、30年ぐらいは入って反省して欲しい。 >と証言したことを皆さんも江川氏記事などでご存知と思われるが、この30年というのが再犯加重も考慮した場合の上限のようで、多分法律知識がある誰かがAさんにそのことを示唆したのではないかと推測する。
ただ、Aさんのお気持ちはわかるが、30年どころか次項の「 h*s*a*u*」さんも指摘されているように、世間的に見て10年も有りえないというのが実情と思われる。(もし30年を示唆した人がいるとすると、やり過ぎではなかったかと思う)

なお、時々懲役何百年と云うような報道があったりしてよく知られているように、米国では個々の犯罪に対する判決刑期の単純加算ができる制度
これに関連して、本事件の個々の犯罪に対する法律論議の問題がある。特に、ハイジャック防止法第4条(以下「同法」とする)が初適用と思われるのにも関わらず法律論議がなかった問題。途中まで有罪無罪の争いだったので個別の法律適用を論議する状況ではなかったと云う事情があるにせよ、犯行自供後も論議が行われていない。
結果的に、同法の適用可否を争うと非常にややこしい話になることが法曹三者とも分かっているので、阿吽の呼吸で避けたのではないかというのが当方推測。しかし、法律に関してそのような曖昧な対応は適切ではなく、適用可否について堂々と論議を行うべきなのは当然だろう。

その意味で米国流の個々の犯行に対して判決を下してから加算する方式であれば、本事件も全犯行まとめての量刑検討だけではなく、個別法規の適用についても論議を行わざるを得なくなる。各方式でメリット・デメリットはあるにせよ、米国流も有益な面があることに改めて気付かされる。本事件は色々な示唆を与えてくれるが、これもその一つであると思う。

また、当方は以前から書いてきているが、本事件で同法適用することは、例えば他の大量輸送交通機関などへの犯行予告があった場合と比較して、本当に妥当性が有るかという問題が出てくるだろう。検察側にも色々事情はあるとは思うが、端的にいうと本事件への同法適用は相当無理筋ではないかというのが当方見解。(適用するとしたら他の交通機関も含めた法律整備の方が先に行われる必要があっただろう・・・整備自体は急務と思う)

(2)h*s*a*u*さん
>痛み分けという表現がベストだと思います。
→内実はまったくその通りでしょう。
ただ、痛み分けというと、もっと丁々発止切り結んで痛みが生じてからというイメージになってくると思われる。実際に有罪無罪を争っているときは、そのようなやりとりもあったが、自供後は様相が大きく変化した。
そして残るのは、「被告人の謝罪と反省表明がどうなるか」と「情状鑑定結果の内容と評価」に絞られてきていたと思われたところに、「謝罪と反省」は本人からしっかり示し、鑑定結果は証拠請求取りやめということで、急転直下まとまった形になった。

しかも、公判傍聴した印象では、検察官や裁判官からの被告人質問も「まとめ」に乗った形で行われたように見えて、謂わば「歌舞伎」のような法曹三者による「様式美」も感じられたぐらいであったので、内実は痛みわけであっても「大団円」と表現させていただいたという次第。そのため実質は同じになってくる。また、よく使われる言葉で「予定調和」に至ったと見ても良いと思う。
(後は出席していなかったと思われるK検事の意向がどうなるか。更に出席しておられた上司のT検事など地検幹部はどう取りまとめを行って求刑を主導するか)

>全員納得できるのは4年6月であり、それ以外は無いのではないでしょうか。
→当方予測も4~5年であり、その中心点である4.5年が妥当性高いというのは同感。
ただ、幅を持たせたのは以下の様な意味合いを含めている。

・4年…本人が「反省と謝罪」を示し、周囲も2度と犯行に及ばないようにサポートするということで更生は速いと思われ、社会復帰しやすくするためにも出来るだけ短い刑期が望ましいのではないかという意味での年数。(事件の重大性と再犯から4年を下回ることは難しいと見る)
・4.5年…上記のように妥当と思われる線。
・5年…黒子は全く反省しない意思表明で4.5年だが、本事件は再犯であるため反省を示しても黒子と同年数で納得性があるかという点と、検察側もハイジャック防止法で起訴したメンツがあるだろうから裁判官も考慮して、業務妨害罪併合の4.5年に対して若干上乗せしてバランスを取ることも有り得るのではないか。
(・5年超…量刑不当による控訴の可能性)

以上