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 第18回公判の位置付け(続)

今回公判で表明された「謝罪と反省」が、刑期を短くしてもらうための「うけ狙い」ではないかという率直な疑念に対して、当方の印象は「本物」と思えた。
ただし、当然被告人や弁護団の本当の心中は分からないが、結論めいて言ってしまうと「裁判としてはこれで良いのではないか」と感じた。被告人の精神状態は安定したようだし、法曹三者、そして被告人含めて(暗黙の)合意が出来た状況が生まれたと思える。
外部から見ると、真相解明は?と云うことになるのも止むを得ないが、裁判の当事者である法曹三者と被告人、及び被告人家族には「これで良い」という状況ではないか。また、被害者に対しても現在出来得る限りの謝罪が行われたと考えられる。

この状況は、思い返してみると弁護団が「全請求証拠同意」の大技を使った時と似ていると思った。終盤に来てもどんでん返しがあって、「裁判における被告人の利益を最優先する」という方針転換になったと見ている。
なお、どんでん返しだと、どうしても違和感が出るが、その点も今回は適切に対処が行われていたと思う。それは「面接によって(大きく)変わった」という変化の理由を述べたことである。
それに対して、検察官からも「面接で分かってきたのか?」とそのものずばりの質問があり、裁判長からも「長谷川氏の面接によって(動機が)理解できたのか?」という趣旨の質問があった。片山氏の答えは当然「はい」であり、これでどんでん返しの違和感も裁判関係者の中においては相当解消出来たのではないかと思った。
更に、方針転換がこの時期になったことは、佐藤氏と弁護団が意識してやったかどうかは不明だが、今回公判以前は被告人の反省と謝罪が示されるかどうか曖昧な状況が続いてきたところに、土壇場になって明確に示されたので逆にインパクトが強くなった効果も感じた。

鑑定書の証拠申請取り止めも、「まとめ」に向けては「話をややこしくしないほうが良い」と云う(潜在的かもしれない)判断が有ったのではないかと推測している。
鑑定書は平易に書いて貰っても専門的なところが出てくるし、長谷川氏ツィートを見ると社会的な視点なども入っているようであった。
そうなると、その評価を法曹三者はそれぞれ考えなければいけなくなるが、結審が今月末に迫っているという時間的制約がある。仮に鑑定書提出による鑑定人尋問が予定通り10月17日に行われていたとしても、法曹三者による評価は非常に難航したと思われる。
結果的に、弁護団もギリギリまで鑑定結果を証拠申請する準備を進めたのは事実だろうが、元々鑑定書は出さないほうが法曹三者間でスムーズに本裁判を終了させられるという”目には見えない方向性”があって、今回の事態になったのではないかというのが当方の見方である(ただし憶測レベルではある)。

また、謝罪文はカウンセリングで心の整理がついたので10月下旬に書いたとのことで、その後に心理鑑定結果について法曹三者論議するのは順序が逆とも思われ、謝罪文を出して真摯な反省を示したということをもって片山氏の心境の現れとした方が話はまとまりやすいだろう。
このような状況を一言で表すと、今回公判は本事件裁判の「大団円」だったような気がする。

ただ、当方も公判での状況を見る前は、「ここまで来ての証拠申請取り止め」には大いに疑問があった。片山氏という人物の心理をできるだけ深く明らかにすることが、本人の今後のためにもなるし、社会のためにもなると考えた。
しかし、当方が何回かの公判を見て、一番危惧していた本人の心理状態が良くなったことが表情や声の様子から明確に見て取れたので、被告人にとっては結果オーライではないかと思った。
取り止めに関するもう一つの疑問であった「鑑定人と弁護団の関係」については、長谷川氏をあそこまで憤慨させたことに対して、弁護団として再度考え直して関係修復して頂いたほうが良いのではないかと、詳細事情が分からない外野からではあるが思ってしまう。

また、会見での「お答えしません」連発の背景もよく分からない。穿って考えると「裁判における被告人の利益最優先で方針転換した」と云うことが判決までは言いにくい、などの事情かも知れないが、本当のところは現在見通せない。
長谷川氏は<会見で「嘘」を言ったことは、よろしくないですね。>とまでつぶやいておられる。両者間であったことの詳細は知るよしもないが、確かに今回法廷での弁護団の進め方は全体的に無理の少ないものだったと思えても、会見での説明がそれまでの鑑定重視姿勢と整合性が取れたものであったと言いがたいのは多分皆さんも同様だろう。

方針転換の理由などが率直に言いにくいということであれば、例えば以下のように概略説明することも出来たのではないだろうか。
「非常に的確な鑑定書を仕上げていただいて、その間長期に渡る面接の過程において被告人の心も整理され、ここに来て初めて本人が真に謝罪と反省の念を持つことが出来るようになった。最後の被告人質問の機会でも有り本人自らの意思表明を優先するために、鑑定人のご苦労に対しては大変申し訳無いが、鑑定人尋問を取りやめることにさせて頂いたので鑑定書も出さなかった」

また長谷川氏も公判後のツィートで、<今日の法廷、終わり。「そういうふうにもっていったか!」という感想。>と書いておられて、これは被告人利益優先のことを充分に分かった上でのつぶやきと当方は推測した。
今後の修復に期待したいと思う。

以上