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「加計と新国立」

前川前文科省次官が10日に国会の閉会中審査で参考人招致予定。同氏は新国立問題の検証委員会の事務局長だった。そして新国立を最終的に水面下で取り仕切った和泉総理補佐官の名前が加計問題で出ている。何という巡り合わせかと思う。

新国立問題には余り知られていない重大事実が色々ある。和泉氏につながる件を中心にシリーズで書いてみる。なお加計問題より、新国立のほうが遥かに闇が深く関連も幅広いと思うが、国会追求で中心になる民進党は相変わらずポイントを外していて新国立の深層を掴んでいない。なお、加計は以上の新国立とのつながりのみ記述で詳細には立ち入らない。

和泉補佐官と新国立との関わりについては、当方ブログやTwitterで繰り返しご紹介しているが、発端が以下記事の後半に有り。

さて、新国立問題について改めて書き出すと膨大な内容が有るので、今回は切り口として、丁度「k_wota」さん(k氏)が今年5月に新国立問題を再検証しておられたので、それをベースにさせて頂こうと思う。因みにk氏は、覚えておられるかどうかは分からないが、当方が2015年7月末から人知れず新国立問題をブログに書き始めて、8月になって急にアクセスが増えたので、どうしたのかと思ったらk氏がTwitterでURLをご紹介頂いていたというご縁がある。

まず参考資料を示す。
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続いて、k氏Twitterを引用させていただいて説明。
2017年5月26日 <250mの場合はアーチの両端をリング状に構造耐力を持たせたスタンド部分で受けることになるので、これはもうキールアーチと呼べるものではなく、コンペの時のダイナミックなアーチ構造の建築からは似ても似つかないものになってしまいます。>

→これは2013年のフレームワーク(FW)設計時の話になる。詳細は省略するが、当方にとって重要なことはk氏も「スタンド部で受けるとキールアーチと呼べるものではなくなる」とされている。
続いて次のように述べておられる。

2017年5月26日 <それでもザハ案を撤回してコンペをやり直すよりは、ずっと良い選択肢だったと思います。>

→ここが本日記事の最大の論点。
まずk氏は、「スタンド支持方式は、案だけで実際には採用されなかった」とお考えなのかも知れない。というのは、実際にはキールアーチは250mに短縮されることなく実施設計まで370mだった。「250mではない=スタンド支持にならなかった」とお考えの可能性が有ると思う。

しかし、FW設計後の基本設計はスタンド支持方式だった。(なお、FW設計は詳細図面未公表だが、同様にスタンド支持方式ではないかと個人的に推測。理由は森山氏の地下鉄干渉指摘のように、キールアーチ根本で支持すると敷地内に収まらないことは、設計開始してすぐに分かったと思われる)

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ここからは森山氏のブログも引用させて頂く。
基本設計がスタンド支持方式だったこととは森山氏が早期にブログで説明しておられる。(今から見直すと、細部で実際と異なる部分も有るが、基本は非常に正確。異なるのは「キールアーチで観客席支持」の部分で別途説明予定)
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→何のためか分からない偽(フェイク)のキールアーチになっている。実際はデザインテイスト維持用。
前述のように、k氏は250m案でのフェイクのキールアーチについて、ザハ案撤回よりは<良い選択肢>との見解。しかし、当方は違う考えになる。

新国立で建てることにしたのは、単なる「ザハ案」ではなく、「キールアーチが基本コンセプトのザハ案(短く言えば「キールアーチのザハ案)」になる。キールアーチ抜きでは「別のザハ案」を作ってもらうか、別に公募する新案になるだろう。結局<「キールアーチのザハ案で新国立競技場を建てました」とキールアーチ抜きで言うことは許されない>と思う。

しかし、建築家の方々の中には「キールアーチでなくとも形が似ていれば、ザハの案ではあるから問題ない」と考える向きも有るように思える。例えばk氏も改めて以下のように書いておられる。

 2017年5月26日  <この時期、ザハ案の実現に孤軍奮闘していたのは日建設計を中心とする設計チームでした。なんとか1600億円でザハのテイストを残す設計案を模索し、文科省にはスケジュールの困難を説いて、コンペやり直しの事態に陥ることを避けるよう進言していたのです。>

→「ザハのテイストを残す設計案」の部分。当方は、テイストだけでは「キールアーチのザハ案」とは言えないし、言うべきではないと思う。

ここをもう少し説明してみる。バイクは構造が外から見て分かりやすいので、例にとって説明する。様々な構造形式があるが、「バックボーンフレーム(呼び方は色々有り)」と「ダブルクレードルフレーム」を示す。特にバックボーンフレームを見て頂くとと、太い骨格が中心にあってエンジンや補機類を取り付ける。

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ザハ案のキールアーチも、このようなコンセプトと考えるべきと思う。アーチが他(スタンド)から支えられる形にしてしまっては本末転倒。

更にバイクの例で、フレームを外側に目立たせてデザイン上の特徴にする場合がある。
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これが実は外観のハリボテだけで、例えば中に別の細いフレームが組んであったりすればフェイクになる。

まさに基本設計のザハ案は、キールアーチのごつさが、デザインだけになっていた。商品企画で考えると、場合によっては、そのようなフェイク商品もありうるが、日本を代表する新国立競技場では、やってはいけないと思う。

このような経過を隠したままザハ案を中止にしたのが、和泉氏を中心とする官邸の国交省出身チーム。
更にザハ案での隠蔽はこれだけではない。森山氏が更に注目した実施設計での「アーチタイ」と云うものがある。

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実施設計では、スタンド支持から、キールアーチ根本をつなぐアーチタイ(タイバー)支持に大きく構造が変わっていた。これなら、「(アーチタイ付きの)キールアーチ」と呼べる。

これで理屈は合ったのだが、約370mもの巨大なアーチタイを、スタンド地下にどうやって構築するか。非常な難題になることは、すぐ分かる話。しかし、ここで不思議な事が有って、ザハ案の実施設計書には具体的なアーチタイの構造説明が無い「基本設計からの変更点」の項目にもアーチタイの記載なく、単に上図同様の断面図でアーチタイが簡単な線で描かれているのみ。

これはどういうことかというと、「実施設計の実態は、アーチタイ追加前の基本設計が使われていると推測される」ということ。信じられないかも知れないが、他にも間接証拠がある。そのポイントが検証委員会の報告書(関係者ヒアリング結果含む)で、一言もアーチタイという言葉が出てこない。しかし、費用にも工期にも重大影響必至のアーチタイ追加とその実現方法が、一言も出てこないはずがない。つまり、実施設計にはアーチタイが無かったと見るのが妥当。

残念ながら直接証拠は無いが、例えば「五十嵐太郎」氏がTwitterで書いておられる「ザハ案の分厚い図面集を見る機会が有った」という際に、少し突っ込んで見て頂けたら、それは「アーチタイ追加前でスタンド支持の基本設計の図面」だったことを見抜いてしまったのではないかと思う。
<ある打ち合わせで、日建設計による新国立競技場のスタディ模型や数十センチの厚みに及ぶ図面集を見る機会を得た。後は着工するだけで、ザハ案を潰した損失の大きさを改めて思い知る。・・・ところで、白紙撤回は首相の「英断」とされるが、そんな権限があるの?>

この中の<首相の「英断」>の件も重要。安倍総理は多分家計も同様と推測するが、直接的な指示は出していないと推察。しかい、加計は忖度なのだろうが、新国立では総理自らザハ案中止を発表。その背景をよく把握できないまま、補佐官らによる隠蔽を許してしまったのでは管理監督責任も問題(知っていたらもっと問題がだが)。

また、和泉氏の手腕を買って引き入れたのは菅官房長官という報道もあった。また官邸内の意思決定の仕組みを推測すれば、和泉氏は菅氏には真相を話している可能性は高いのではないか。そうなると菅氏は隠蔽に加担。

このように、官邸が中心になって国民に実情を知らせず、隠蔽してたらを騙していた事になる。また、ザハ案の中止原因は費用だけではなく、ザハ氏側の構想設計の問題が影響していたとすると、ザハ氏から日本の意思決定を批判されることもない。しかし隠蔽により、政府だけでなく、日本人全体にも悪い印象をこの先ずっと持たれる事案になってしまった。官邸の責任は大きい。

また、このような国家的問題だけでなく、予定の設計が出来ていないのに設計費を満額支払っていると考えられる問題なども有る。そして、検証委員会は当時の下村文科大臣と文科省から、検証範囲に最初から制限をかけられていた節があることが、報告書の精査で分かる。前川氏は事情を知っている可能性がある。

今後家計だけでなく新国立問題でも、前川氏や、和泉氏とその官邸グループなどを参考人招致や喚問して、徹底再調査の必要があると思う。

なお、ザハ案を中止して新コンペを実施し、隈研吾氏の案が選定された経過も疑惑一杯だが、本日はここまでとして、Twitterで建築家の方々にザハ案の御見解を伺ってみようと思う。

以上