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日建設計の「地盤面」の考え方に疑義有り

本年2月11日記事で、日建と高野氏の見解相違に関して考察した。根本には「地盤面」の想定に違いがあると思う。同記事で記載した相違内容と図は追記で示すが、当方は高野氏見解を支持。

その後、最近になってTwitterで専門家の皆さんらに確認をしてみた所、やはり高野氏及び当方見解の方が適切ではないか、という方向性が出てきた。

逆に言うと、「日建設計及び、同社見解をPTで支持したJSCA森高会長の方が誤り」と云うことになる。日本の建築構造設計の最高権威と目される方々の説明に疑義が有り、実際に、もし間違っているとすると、構造設計界の問題にもなりかねない。更には、そのような方々の見解を採用したPTの信頼性にも影響を与えかねないと(個人的に)思う。

そのため、本記事では「疑義内容=地盤面の設定」に関して概要を示し、多くの方々の検証にも期待しようと思う。

内容自体は非常にシンプル。下図は高野氏作成図を今回説明用に改訂したもの。②は現状の豊洲市場建物のモデル図。その中で基礎ピット部は、周囲が殆ど擁壁のため、日建設計は「土壌拘束を期待しない(=拘束なし)」とPTで説明。

それで更にシンプル化するために擁壁と土を取り去った模式図が③になる。図から見て、地震での揺れ方は②も③も同じと想定できる。(現実においても隣接して5mぐらいの高低差がある土地は普通にあるが、高い方に建てる場合も低い方に立てる場合も、地震の揺れ方の想定を変えるようなことは基本的に無いと思われる)

イメージ 3

図にも示したが、地盤面の設定は以下の違いがある
日建設計…B「地表面」
●高野氏 …A「基礎ピット底部」

しかし、③を見て頂ければBは無く、構造的地盤面はAしか有り得ないことは自明と思う。
そして、次のような論理展開になる。
■A「基礎ピット底部」が地盤面→地盤面より下が地下→基礎ピットの殆どは地下ではない

これに対して日建設計HPの「豊洲市場の構造安全性FAQ」では次のような説明有り。
豊洲市場の基礎ピット部分は、大きな地中梁やフーチングによって、地上部分に比べて十分に頑丈にしてあり、一般の地下と同様に地震時にほとんど変形しません。>

だが、前述のように「基礎ピットの殆どは地下ではない」。基礎ピット部に関して地下の話を持ち出すこと自体が耐震構造上の実態に合わないと思える。この根本的な疑義から検証し直すことが必要ではないか。PTとして森高委員や小島座長が明確に約束した「専門家同士の議論」を高野氏や今川氏らを入れて実施すべきだろう。このままで報告書を出すのでは、前述のようにPTの信頼性にも係る問題。

また、本記事内容は当ブログとしての現段階での見解(仮説)であり、皆さんのコメント等をお待ちします。
Twitter上の論議も加味して、Kimiko Dover氏も詳細な検証結果をブログにお書きになっているので、是非ご参照下さい。

なお、「どのような考え方や手法であれ、構造計算して安全が確認できれば良いのではないか」という見方もあると思う。PTでの論議も、そのような方向性が感じられた。しかし、当ブログでは「過剰設計によるコストアップ」の可能性も考えるべきと思っている。豊洲市場の基礎ピットは確かに頑丈と思うが、「過剰性能」ということはないのか?

それに対して、もし地盤面や地下の考え方自体から誤りがあって設計に影響を及ぼせば、過剰が発生する可能性も有りうるだろう。豊洲市場建物の高コスト問題は、よく取り上げられるが、詳細分析は余りされていないのではないか。豊洲問題全容解明の一環として、基礎ピット部のコスト検証は今後も必要と思う。

また、耐震設計に話を戻すと、建築基準法第八十八条(地震力)に地上と地下で適用計算式が違う。
●地上…  Ci=ZRtAiCo  ( Co=0.2以上)
●地下… k≧0.1(1-H÷40)×Z

[追記]
■当ブログの地盤面検討記事例
<日建も地盤拘束無し想定なら③になりそうなものだが、日建は地盤面B「地表面」とする見解なので①。高野氏は地盤面A「基礎ピット底部」という見解で③。高野氏主張の方に妥当性を感じる。>→(下図も含め本文の②③とは番号の付け方が異なります

イメージ 2

■地盤拘束の効果
日建設計が言うところの「地盤拘束を期待しない地下」というのは、構造的には地下の意味が無いと思われる。その参考として地盤拘束の効果について書かれた資料を以下に示す。
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追記以上