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維新提言の無責任と水位管理破綻

2017年3月9日に日本維新の会豊洲移転問題で会見を行った。録画を見て3月10日記事を書いたが、その後提言の文書も公表されているので考察してみる。

まず3月10日記事で示したように「やながせ」都議は、記者から小池氏ロードマップについて問われ以下のように回答。
<専門家会議は市場当局にも申し上げていますけれども「何で月に一回しか出来ないんだ」ということで、結論に至るまでのプロセスが長すぎるし遅い。>

会議の進行が遅いとの批判は同感だが、専門家会議の当初報告予定は4月。既に3月になっているのに前倒しを言っても無理筋で、しかも3月19日に重要な再調査の報告が行われる予定で短縮不可能。更に100倍汚染データが出て論議2ヶ月遅れも公表。

ロードマップは短縮どころか、逆に延長が避けられない情勢は明らかで、維新として現状に対応した公式見解が必要。しかし、そのアナウンスなどは無く、結果的に維新提言は現実に即していない。

ただし、文書の方を見てみたら、専門家会議の流れと一応辻褄が合わされている部分もあった。
<新市場整備方針が求めている事項のうち、地下水を計画水位以下に維持すること(地下水管理システムの能力増強)、地下ピットに地下水が浸水しないようにすること、揮発したベンゼンへの対策(換気システムの設置)等については、速やかに実施をすることが重要となる。>

豊洲が抱えている3つの技術的問題が挙げられている。
 (1)地下水管理システム
 (2)地下空間防水(当方注:気密も可能性あり)
 (3)地下空間換気

これらについて移転推進派からの言及は殆ど無い中で、理系の足立議員が主導したと推察されるが、的確な認識と率直に評価したい。他の移転推進派とは一線を画すと思う。

なお平田氏が「豊洲の地上は安全」と述べている部分だけ捉えて、「豊洲は安全」と断定する流れが現在出て来ている。しかし同時に「地下空間の追加対策工事を検討中」という状況も述べている。つまり、「地上安全・地下対策必要」が正確なのだが、前者だけ捉えて豊洲全体に拡大してしまっている。(この点の補足は「追記」)

維新提言は地下にも言及しており、前述のように問題意識は妥当。ただし、(2)(3)について専門家会議はまだ構想案を示しただけで、具体化は「技術系で検討してもらう」と述べた。この技術系はPT想定かとも思ったが、先日のPTでの話だと、専門家会議より早く予定通り5月提言で検討の余裕無く、違うということになるだろう。

新設の戦略本部マターになると、工事検討に必要な専門家の人選から始めることになる。いつになるか分からない。冒頭紹介のように専門家会議の進行について苦言を呈した「やながせ」都議は、当然このような事態を認識されている。小池氏頼みばかりでなく、移転推進派としてもロードマップ検討を行わないと、提言は言いっぱなしになる。

更に問題は(1)地下水管理システム。会議では都側が昨年からの水位グラフを見せて「順調に低下している」と適当なことを言っていた。平田氏も見解など述べずスルー(順調で無いことは後述)。この点では維新のほうが「計画水位以下に維持」として、水位が思ったように下がらない事態を認識している可能性大。

しかし現実の水位は「下がるどころか上昇」というデータを前述の3月10日記事でも示した。更に3月全体のデータが公表されたので下表作成。①②の二つの期間での水位比較を行っている。

イメージ 1

①1日と30日比較1箇所を除き水位上昇、最大27cm上昇(期間降水量6.8cm)
24日と30日比較(26日27日降雨の前後)→全地点で水位上昇、最大22cm上昇(期間降水量2.8cm)

まず①では、1箇所を除き水位上昇という結果。平田氏が水位目標1.8m以下達成の目安としていた3月が、低下どころか上昇で終わったのだから、もはや破綻確定になってきた。

更に②では降雨の影響をざっくり見てみた。26日27日に降雨が有り降水量は計2.8cm。しかしその前後の24日から30日で水位変化を見ると最大22cm上昇。この現象の原因も現段階では都側から情報が出ておらず不明だが、当ブログとしては「遮水壁外からの流入」の可能性を先日記事で提起。

水位検証は中央市場HPや気象庁サイトからデータがすぐ入手できる。足立氏なら容易なのだから小池氏任せにせず、自ら検証して公表し対応を促すべき。それをやらないのなら、足立氏が会見で繰り返し述べていた「築地地歴情報入手」のような政治的アピールが主目的なのか、となってしまう。

結果として「地下水管理システムの能力増強」を求めて水位管理の破綻に気づいていながら、問題の大きさを明確に書かないのは不誠実。本格稼働後半年以上経過しても全く目処が立たない深刻さを足立氏が認識していないわけがない。
そして(1)~(3)の対応を含めたロードマップ案を示さないまま、早期移転を迫るばかりなのは根本的に無責任。現段階では見直しで豊洲・築地それぞれのロードマップ検討提起が妥当だろう。

また、「やながせ」都議はTwitterで以下のように書いている。
<やながせ裕文 3月30日  
 ・・・知事は、豊洲移転を放棄していないなら、少なくとも豊洲の安全性について説明するべきだ。開場の条件についての見解も不明。>

維新提言からすると「開場の基本的条件」は自らお分かりではないか。上記(1)~(3)である。これが達成されないと開場できない。だが、どれも目処が立っておらず、特に(1)は前述のように破綻状態。

足立氏や「やながせ」氏は状況が分かっているのに、とにかく小池氏に話をつなげて批判。しかし小池氏の方はロードマップに忠実に「専門家会議報告を待つ」ということになるだろう。結果的に維新の提言は現実味を持たない。

以上
[追記]
「地上安全」に続き、第5回会議で地下は二つに区別して述べられている。地上も含めて列記すると以下のようになる。
■地上…地表面や建物1階は測定値で安全が証明
■地下
 (ⅰ)地下水…飲用や使用無いので安全
 (ⅱ)地下空間…揮発性汚染物質のリスク(1階床ヒビワレ等)があるので対策必要

第5回会議において、(ⅱ)に関して追加対策工事案の構想が図付きで説明されたにも関わらず、マスコミは殆ど報道していないため、(ⅱ)の認識がない人が識者にも多い。それで「豊洲は安全」とする流れが出てきているが、今後工事内容の具体化が行われると、詳しく報道されて又検証されることになるだろう。その時に都民・国民は移転推進派の言い分が、専門家会議見解のつまみ食いや曲解であることが分かり、どのような反応になるかが今後展開の焦点。

また、「やながせ」都議は小池氏に豊洲の安全性を説明せよと言うが、まず維新提言も拠り所にしている専門家会議の追加対策がまとまらないと判断もできない。同都議は提言をまとめたメンバーにも関らず、本当に状況を理解しておられるのだろうか。

追記以上