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配管スペースの必要高さは各棟で異なる・・・同一は過剰設計?

いつも簡潔で的確なまとめ(地下を「ピロティ」など)の「KintA」さんが、先日記事における次の部分をツィートして頂いていた(同時に書かれている先の大戦の話は、またいつか取り上げたい)。
<これほどの大問題にも関わらず、発生の端緒も的確に掴めていないということでは都庁の意識と能力が問われる>
→改めて見て思った。都側は発生まで遡ると自らのヘマが多々出てくることを、意識・無意識に関わらず、分かっているのではないかと。

例えば、重大なところで、ずっと紹介している2006年「基本設計相当」の資料。図を再掲するが、右下の当方注記は以下の内容。
5街区青果棟は排水が少ないので配管スペースは、この段階では特に意識していないか

イメージ 1

つまり、上図では水産棟(仲卸、卸)には配管スペース(半地下ピット)が描かれているが、青果棟には無い。これは、配管スペースへの考慮必要性の差ではないか。

佐藤「英知」氏も、第1回PTで次のように述べられた。
<地下ピットも、通常の大きな建物だと2mくらいの深さになりますが、今回の市場は350m×200mとか非常に巨大な空間で、・・・2mではとても足りない。実際に設計すると、恐らく3m、あるいは、それ以上になるのが適切な地下空間のピットの寸法です。>
→特に水産仲卸棟は店舗が多く水も多く使うので、排水管は数も大きさも必要になる。一方、相対的に例えば青果棟は排水に対する考慮は少なくて良い。結果的に、配管スペースに必要、或いは適切な高さは、主要な三棟で以下のような順になると考えられる。
 水産仲卸棟 > 水産卸棟 > 青果棟 

特に青果棟は建物自体も相対的に小さいから、更に差は広がる。佐藤氏は専門家として現場も視察し、このことに気づかれなかったのだろうか。逆に「基本設計相当」を作成した設計会社(どこだろうか?)は、ちゃんと分かっていた。

そして皆さんご存知のように、現状は三棟とも地下空間の底面は同じ高さ。当ブログで当初から述べてきた「現状地下空間の高さは、盛土をしないと地表までの間に元々生じる高さ」という認識の重要性が明確になった。盛土前の底面(AP+2m)が全敷地同じだから、空間高さも同じになったという単純な理屈。これが世間一般に、なかなか理解されてこなかったが、分かりやすくなったと思う。

配管スペースの必要高さが違うのに揃ってしまったのは、配管上の要求からではなかった。これはコスト面の解明で重要ポイントになる可能性あり。特に青果棟は、配管用に4mもの空間は全く不要と思われるのに(以下写真参照)、他2棟と同じ設計にしてしまった。これは過剰設計ではないか。

イメージ 2

しかも、3棟とも日建設計曰く「基礎の重さは上モノの重さと同じぐらい(第2回PT発言)」という巨大なコンクリートになっている。このコストは明確に算出して検証すべき。また、前述のように青果棟は明らかに過剰高さだが、仲卸棟・卸棟も適切な高さはどれぐらいか。佐藤氏でも「3mかそれ以上」で、3mか、それを大きく越えないとすれば4mでは過剰だろう。また、仲卸棟より卸棟の方が過剰になる可能性大。それと、上記「基本設計相当」や日建設計の技術提案書では配管スペース高さは2m程度という事実もある。

なお、第2回PTの上記発言を聞いて、「基礎が上モノ全体と同じ重さ」とは建築関係者からしたら笑うところだろうと思ったが、その後も含めてツッコミがない。建築家の方々は過剰設計に甘いのかなと感じていた。地下空間のコストについては、建築関係者でもっと論議が欲しいところ。

更に、例えば都議会でも豊洲問題の解明にあたって、費用問題は重要項目。「過剰設計」、更に端的に言えば「下手な設計」によるコストアップは当然追求必要。ただし、今は都議さんたちも殆ど気付いていないと思うが、報告書で明確に書けば分かる。都側は遡りたくないわけだ(苦笑)

また、過去経緯に遡れば、「基本設計相当」が出来ていたのだから、土壌対策検討の出発点となった専門家会議に示して、建築面も或る程度考慮して貰うことは可能だった。土壌担当主催という背景はあった。しかし、「基本設計相当」まで出来ていて参考にしなかったのは余りにも下手な運営。

結果的に専門家会議には「基本設計相当」の資料は出なかった。ただし、第1回議事録で平田座長が次の発言をしておられる事実は有る。
<○平田座長 内山先生は、非常に厳しいことをおっしゃっているのですが、基本設計の変更は可能かというご意見だと思うのです。>
→平田氏が「基本設計相当」を見られていたかどうか?なども検証必要。都側の意図の一端が分かる可能性あり。

また、市場問題PTは以下の課題を挙げておられる。
<豊洲市場の建設費の適正性
→これを検証するにも、上記設計問題を取り上げることが必要になる。また、高さが同一になった大きな要因として考えられる(使用されていない)「ミニユンボ作業空間」の件も、実際の必要性等について詳細検証必須。
やはり、PTで第3次盛土問題調査を行っていただくのが適切と思う。

[追記]
佐藤委員はこれまでも紹介してきた「英知」発言の場面以外に、締めの場面でも発言しておられる。長くなるが、該当発言を引用。興味有る方で、まだ読んでおられなかった方は御覧ください(議事録全体はここ)。

引用の前に、当方注目発言(1)~(4)を先に抽出してご紹介(もっと有るが絞った)。

(1)<私も都の方とお仕事をして理解していますけれども>
→先日記事で代表作が「東京国際フォーラム」という点を取り上げたが、同建物は90年代竣工で相当前になる。この発言からは、それ以降も都とお仕事をしておられる可能性がありそう。関係性を明らかにして頂きたいと思う。

また、森高委員に関しても、構造のJSCA会長であるが、第2回PTにおいて日建設計側で耐震性を説明した常木氏が副会長という関係性を昨日記した。その森高氏が、先日の第3回PTで<構造面の安全性は第2回で決着済み>との発言。だが、第2回PTの最後で別途「専門家同士の打合せ」を行うことになって、その結果はどうなったか。
更に、続けて同氏は<1ランク上の耐震性が確保されていると、私は判断しました>と述べられた。結局PTの見解では無いわけで、先の言い方は誤解を生む。また、勝手に委員がPTを代表してしまうかのような発言の仕方は常識的にもおかしいだろう(しかも前述の専門家打合せの件もある)。第2回の佐藤氏に続いて、社会常識に欠ける事態が起きている。

全体的にPT運営は相当問題有りと言わざるを得ない。しかも、余りに露骨すぎる。これでは小島座長の見識まで疑われかねない。

(2)<設計を始めたときは、そこから2m土盛りして、そこからピットをつくるという選択肢も恐らくあったと思います。>
→まさに、この通りやっていれば、ここまでの問題にならなかった。「英知」なら、少なくともこれだろう。
また、2m盛土すれば配管スペース高さは2m程度になってしまう。結局「3mかそれ以上が適切」という主張はどうなったのか(しかも現状の4mが英知とのこと)。佐藤氏発言には矛盾がある。当方が第1回PTで感じた印象は正しかった。いや第2回で見せた社会常識の無さは、予想を遥かに上回った。

(3)<実際に2011年3月には何がありましたか。東日本大震災が起こりましたね。…土木関係の技術者なり職人なり機材なりが圧倒的にそちらに流れてしまうという懸念があったわけです。恐らく、都の担当者の方は、…判断の一つの指標にもなったのではないかと思います。>
→当時の議事録等もまだ全く出ていない段階だったのみ、「恐らく」と勝手に担当者の心中を察して「物語」まで作っておられる。調査もしていないで、こんなことを言い出すのは、実証を旨とする技術者の取るべき態度とは思えない。しかも、問題は余りにも深刻で勝手に作った「物語」など出している状況ではなかった。

(4)<担当の課長さんや部長さんは、絶対に上司に報告したと思います>
→報告書では、部長までもが上司報告していなかったことが明らかになった(当該部長否定)。その状況を踏まえて、現在の見解をお聞きすることは必須。公式の場で「英知」と言ってしまった責任は重い。言いっぱなしでは困るし、無責任。様々な見解表明は自由だが、技術者なら事実調査に立脚して頂きたい。当方は「誤解の連鎖」を是非とも止めたいと考えている。

----以下第1回PT議事録 佐藤氏発言2回目 引用----
<先ほどガバナンスの問題とおっしゃいましたが、私も都の方とお仕事をして理解していますけれども、担当の技術者は当然そう考えていただろうと。それを、技術系のトップの方、財務局で言えば局長さんなりに報告していないわけがないんです。私の経験で言えば。そういうものをできるわけがないので、局長クラスの方は絶対にわかっていたはずです。
  もう一つ申し上げると、先ほどの経過の中で、土壌汚染対策工事の設計図が完了したのが2011年の3月です。これで2011年8月に発注されているということは、発注されていた図面は土盛りをしない形で発注されていました。ということは、2011年3月の設計図は土盛りをしない設計図ができていたわけです。それをもとに、恐らく、技術系の人は連絡し合っていたと思いますから、建築の設計を始めたと思いますが、設計を始めたときは、そこから2m土盛りして、そこからピットをつくるという選択肢も恐らくあったと思います。それを含めて地下空間をつくることを検討課題とするという条件がついたと思います。
  そこで、実際に土盛りをせずに下からつくろうという決断をした。実際に2011年3月には何がありましたか。東日本大震災が起こりましたね。大震災が起きて何が一番困るかというと、土木関係の技術者なり職人なり機材なりが圧倒的にそちらに流れてしまうという懸念があったわけです。恐らく、都の担当者の方は、やはり土盛りをせずに最も合理的に進めるには建築を下からつくったほうがいいだろうという判断の一つの指標にもなったのではないかと思います。
  さらに、一旦取りかかった工事は、土木の場合、途中で数量が変わると、その数量を全部調整して最終的にお金を払いますね。そういうことを考えると、途中で震災関係のことで費用が上がるとかいうことになると、とてつもなく土工事の費用が上がる可能性が十分にあった。そういうことを考えると、できるだけ土はいじらないほうがいいという判断があって当然だったと私は思います。それが、技術系のトップにはきちんと報告されていただろうし、その技術系のトップの方と事務系のトップの方の連絡がうまくいっていなかったか、理解が十分ではなかったか。私はそのレベルの話だと感じます。担当の課長さんや部長さんは、絶対に上司に報告したと思います。>

追記以上