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2010年環境アセス案では「地下2層式」で盛土有り

昨日記事で「自己検証報告書」は源流に遡ることを怠った「欠陥報告書」という趣旨を書いた。これほどの大問題にも関わらず、発生の端緒も的確に掴めていないということでは都庁の意識と能力が問われる。

ただ、報告書そのものだけでなく、添付資料には様々な重要情報も入っていて状況が読み取れる。例えば第1次報告には以下の資料がある。最後のページにある盛土関係の記述を示す。

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盛土(埋戻し含む)が、(b)と(c)に分かれている。これを更に整理してみる。
 ・(b)砕石層~AP+4m(=1.5m) …全面埋戻し→盛土に含める
 ・(c)AP+4m~AP+6.5m(=2.5m) …建物下は建築工事根切り深さまで盛土
  →この部分の盛土高さは”2.5m -建築根切り深さ”となるので、これを(d)とする

この方式だと、次のような「地下2層式が考えられていた」と言えそう。概念図も示す。 (下図で例えば盛土も2層だが、当ブログでは下図において「基礎と配管スペース」と「盛土」で「2層式」と呼ぶことにする)
 ・1層目…”地表~根切り深さ”→基礎と配管スペース(平床式と想定)
 ・2層目…1層目の下側 → "(b) + (d)” の厚みの盛土

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結果的に、「何故これでやらなかったのか?」という疑問が湧かざるを得ない。これなら専門家会議にも再検討して貰いやすかっただろう。(この時に高床式だったかどうかは不明、但し日建の提案書(後述)から類推して上図は平床式)

更に、同月には「基本設計の起工」があった。基本設計と上記の盛土方式の関係はどのようになっていたのだろうか。参考として、先日記事でも紹介した日建設計の技術提案書がある。起工を受けて出されたもので、下図のように基礎の下に盛土が描かれている。

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環境影響評価書の記述と整合性がありそう。しかし、この辺は報告書には全く言及が無い。
結果的に、高床式の件も含めて、解明されていない部分が多すぎる。再三繰り返しているが、「第三次調査」の必要性が更に高まる。

また、石原元知事の「ケーソン案」に興味ありという見解も頂いているが、これも考えてみると高床式に関連する可能性あり。というのも石原氏に結果報告したのは当時の比留間市場長。
<〇九年一月中旬、比留間氏は技術会議の最終提言案を石原 知事に説明した際、ケーソン案はコスト面で割が合わない旨を報告。>
→比留間氏は「高床式」と思っていたのだから、比較は「ケーソン式と高床式」だった可能性が高くなる。高床式は盛土の費用がかかっても、コンクリート躯体は小さくなるから、トータルコストは下がる可能性あり。「現状空間と比べると、ケーソン式も悪くないのではないか?」と思っていた方もおられると思う(当方もその一人)。しかし、高床式前提だったという事実を加味すると、このように辻褄が合ってくる。現状空間はコンクリートだから、「ケーソン式と現状空間」の比較では違いが見えにくい。まだまだ検証が必要。

加えて、日建設計の件もある。前述の環境影響評価書案は、平成23年(2011年)年8月に「案」がとれて正式に公表された(上記に相当する部分の内容未入手)。この間に日建は都側と共に基本設計を行った。
環境影響評価書に関しても、都側は日建と打合せていたことが議事録から読み取れる。結果的に、何故日建も「盛土無し」では問題になると見抜いたり、助言できなかったか。技術提案書の最初に、日建としても「関係者の合意を重視する」ことを明記しながら、なぜ合意事項を無視してしまったのか。

話は少し広がるが、日建は新国立競技場ザハ案の時も結局だんまりで通して説明しなかった。今回もずっとだんまりで、「盛って掘って」を止めたのはコストダウンという都合の良いところはプレスリリース。耐震性等に関するPTも、何故か参考人は1人限定で日建は3人という非対称だった。
そして、本来は都側に依頼し、都側と同席でもっと早く説明するべきだった。守秘義務も都側がOKすれば問題ない。

もちろん日建側にも言い分は有ると思うが、新国立競技場問題からずっと見てきて、ザハ案も豊洲も「日建設計以外だったら、このような大失敗にはならなかったのではないか」という気がしてならない。また、他の設計会社も同じようなものと云うことかもしれないが、新国立競技場は結局ゼネコンが担当した。入札方式の規定等は有るだろうが、豊洲もゼネコンにやってもらっていれば、ここまでの大失敗にはならなかった可能性あり。

もちろん、タラレバの話になるし、一番悪いのは都側。それでもゼネコンなら、自ら設計して建てると全部責任になるから意識が違うだろう。中間に設計会社を入れると失敗しやすくなるということも考えられる。率先して自らも出来るだけ経緯を明らかにすることは、日建にとっても後々良い教訓になるのではないか。目先を上手く立ち回っているだけではツケが回ってきかねない。

ということで、都側と日建の全面的協力を取り付けた上で、専門家が入った第三者委員会方式で調査すべきだが、その候補となるのが市場問題PT。
本日は丁度第三回が開催予定で、議題は「使い勝手」とのこと。次回以降でも盛土問題に取り組んで頂きたいが、その前提として、やはり「英知発言」を再検討して頂く必要あり。
上記のように、盛土が可能だった別案もあった。「英知」とするなら、高床式も含めて様々出ていた案の中から、現状案を選択したことが最適となる理由を説明して頂かないと納得性がない。或いは現時点における再見解を出して頂きたい。公式なPTの場で述べられたことはPTで対応して頂きたいと思う。

なお、報告書添付資料の方に話を戻すと、他にも隠れた情報がある。このところの記事で”豊洲新市場基本設計相当について”(平成18年)を紹介しているが、約3年後の平成21年(2009年)7月にも「基本設計相当」が作成されていたことを示す発言が議事録にある。

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しかし平成21年7月版の方は、中央市場HPにも、添付資料の中にも見当たらず、今のところ「謎資料」。この時点で「高床式だったかどうか」が確認できるかも知れない重要情報である。
また、他にも基本設計・実施設計の打合せで使われた配布資料は、議事録を見ると多数あるが公開は殆どなし。都側の取り組みは不十分。

以上
[追記]
移転判断時期も見えなくなっている状況で、業界団体からも批判の声が上ってきている。
<伊藤会長は、1.移転延期発表以来、補償の問題がまったく前に進んでいない、2.小池知事やプロジェクトチームが移転反対派の偏った意見ばかり参考にしている、3.都庁の市場担当職員が機能していないなど、小池知事のやり方に疑問があると指摘し、憤りをあらわにした。
築地市場協会・伊藤裕康会長「まったく先が見えない、我々大混乱ですよ。不満なんです。もっと知事、本来の思ってらっしゃることをきちっとやってくださいと、これが私どもの願いです」>

→もっともな批判と要望だと思う。ただ、「2」のPTについては、英知発言や法的安全性確認?などで実質は推進派を後押ししているのが実態と思われ、会長は誤解しておられると思う(苦笑)
プッシュするならPTより「専門家会議」の方が対象だろう。PTの方は現状をどう使うかという方向性が有ると思われるが、専門家会議は「都から独立している」と平田氏が再三言っておられる。どのような進行になるか、まだ見えないが、同会議が結論を出さないと全く進まない。

小池氏が先日記者会見で4つのステップを示された。
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第1ステップを「来年1月のモニタリング結果判明時期」と見る報道も有って、ズレっぷりに驚いたが、実際は専門家会議の検証結果になる(モニタリング結果の確認も当然行われる)。そして先日の第2回では「換気」という話がでていた。「今から盛土は出来ない」と平田氏は当初から述べておられるから、別の方法で揮発性汚染物質対応が必要になり、「換気」は有力候補と思う。

また、「換気」という案が出た事自体も重要であり、「現状空間全肯定派」とでも言うべき方々の主張は通らなくて、何らかの改善が必要なことを示している。当ブログでは、「現状通りで全く対策なし」という形での専門家会議了承は困難という見方を当初から表明してきた。結局全肯定の主張が如何にズレているか、明らかになってくる。

そして、10月31日記事”環境影響評価”で述べたように、対策を行うにあたっては机上検討だけでなく実地調査や測定・実験などが行われることになる。また、換気と言っても広大な地下空間だから、設計や施工にも、どれ位時間がかかるか。またフィルター等を付けることになるが、外部排出だから手続き的には住民説明会なども必要になってくる可能性あり。

結果的に、相当な時間がかかる。少なくとも来年5月移転は、もはや無理と思われ、それを越えると都議選がある。もし移転反対派が躍進したりしたら、過半数には届かなくても、その声を無視できなくなる。上記の推進派業界団体なども、「無理押ししている」と見られたら逆効果になる可能性あり。慎重な対応が必要だろう。ただ、小池氏の姿勢が見えないという批判は、もっともであり、難しい局面が続きそう。

追記以上