kensyou_jikenboのブログ

yahoo!ブログの同名ブログを移行しました

自己検証報告書は欠陥品…「高床式」の検証が必要

先日記事で「設計の出発点は高床式」だったことを明らかにした。しかし、都側の自己検証報告書には高床式を示す重要文書である「豊洲新市場基本設計相当について(業界との合意事項)」(平成18年10月)が出てこない。

これは報告書の検証開始点が平成20年からと新しすぎるからである。しかも、第2次の方が平成21年と更に新しい。責任者の特定は必要だが、経緯調査の根本が蔑ろにされている。(逆に考えると、遡りたくなかったか)
イメージ 1

高床式が正式決定されていたことも当然の如くスルー。調査の常道である「源流に遡って考える」ことが不十分な「怠慢調査」による「欠陥報告書」と言わざるを得ない。(しかも、最大の特徴となる「個人特定」も肝心の宮良氏が反論書を提出して否定)

本日は高床式を巡る経緯を更に示す。そのために、まず一昨日記事で示した3つの資料を再掲。ただし、(2)では地盤面高さ追加。

----高床式経緯 資料再掲---
(1)”豊洲新市場実施計画のまとめ”平成17年(2005年)9月
→文書中に「高床」が20回も出てきて、「地下」は0回。

(2)”豊洲新市場基本設計相当について(業界との合意事項)” 平成18年(2006年)10月13日 第12回新市場建設協議会 資料
→この資料が専門家会議招集前の段階における最終まとめと考えられる。
 ①業界合意を得た公式文書である
 ②「基本設計相当」であり、基本設計の初期段階が実施されたと思われる(仕様表と図面あり)
 ③「水産物部(6,7街区)」は”高床式”が明記され図面にも描かれている

仕様表と図面の内容抜粋を以下に再掲。追加として、5街区図面のみだが地盤面高さの記述もあったので記載(図左下)。専門家会議時や現状と同じくAP+6.5m。他の街区も含めて盛土高さも現状と同じ構想だったことが類推できそう。

イメージ 5

(3)”第13回新市場建設協議会議事録” 平成20年(2008年)12月4日
→第12回の約2年後に開催された第13回では当時の市場長から以下の挨拶。
<(比留間会長)…(市場長)
本日は大変お忙しい中、第13回新市場建設協議会にご出席いただきまして大変ありがとうございます。
本協議会は、平成18年(2006年)10月に基本設計相当を取りまとめて以来、約2年ぶりの開催となります。>
→この発言から、前項(2)の「基本設計相当」は、2008年12月時点でも変更なしと云うことになる。

よって、2008年7月専門家会議報告(提言)及び同年12月第8回第9回技術会議も、高床式前提だったことは確定。しかも、比留間市場長は平成21年(2009年)6月まで在任。同年2月策定の「豊洲新市場整備方針」も全面盛土であり、高床式前提と想定できる。(同氏は「盛土あり」の認識だったと述べており、高床式と整合性あり)。

----資料再掲ここまで----

[考察]
第1次報告書の添付資料で以下があり、2枚の図が含まれている。
イメージ 2

右側の図は2009年1月13日の日付がある。左側の図は作成日付がなかったが、第2次報告書で以下のように「2008年11月作成」と明らかになった。
イメージ 4

左側の図「Case-1」では、5街区と6、7街区で仕様が分かれている。(Case-2以降も有るのだろうか)
 ・5街区…平床式、配管スペースは描かれていない、1F床下に地中梁
 ・6、7街区…高床式、配管スペースは2層式(半地下)、地中梁は描かれていない

イメージ 6

これと(2)を見比べると、各街区の仕様からし「Case-1」は(2)を基に描かれていることは確実と思われる
やはり、(3)から推測できたように、(2)の高床式仕様は「2008年末迄」時点で生きていた。更に前述のように2009年2月の技術会議報告と東京都整備方針も全面盛土なので高床式前提と想定できる。

上図右側の地下空間は2層式だから、配管スペースの下に盛土を行えば、4.5mまではいかないが盛土は可能だった。この場合、観測井戸は配管スペース底面から掘ることになる(底面の防水方法などは考える必要が有りそう)。
しかし、実際には2層式も無くなっており、どのように現状空間にまで変遷したか。検証すべき要因として考えられるのは以下がある。

(ⅰ)高床式廃止理由…明確な理由出ていない→現段階の当ブログ検証概要を追記に記載
(ⅱ)2層式廃止理由…A案B案は両方とも2層式ではないが、この辺で変化の兆しあり?→但し、配管スペースについては注記もなく、ミニユンボ作業空間との干渉も含めて構想不明(A案B案の違いは地中梁の有無なので平床式の5街区地下の検討の可能性あり)
(ⅲ)盛土廃止理由…ミニユンボ作業用空間のためか→これが盛土無しの元凶である可能性大(ミニユンボ作業用には盛土無し必須、またCase-1の配管スペース底面コンクリートが40cm厚なのは底面下が空間前提と推察)

これらの組み合わせ理由もあり得るため、一筋縄ではいかないと思うが、いずれにせよ「高床式」仕様が後まで生きていたことは事実なので、経緯調査やり直しが必須。特にもはや都側自己調査を越えて、第三者による調査が必要と思われ、市場問題PTでやっていただくか、同PT内に盛土問題調査の分科会設置などが望ましいと思われる。

以上
[追記]
本文(ⅰ)高床式廃止理由に関して、以下の第1次報告書の曖昧な記述で納得できるとは言い難い(第2次報告書は高床式の言及自体なし)。

イメージ 3

取付道路が急勾配」との懸念が示されているが、(2)の図の右上に「315号」と「連絡通路」も書かれている。勾配は見当たらずフラットのように見える。ただし、取り付け道路なので確かに外構の問題かもしれない。
だが、本文(2)の図で5街区には地盤面の高さが入っており、現状と同じくAP+6.5m。他街区も高さを合わせてあるのは確実。これで検討されて「基本設計相当」となっているのだから、整合性が取れていたと考えられる。

それでも、もし取り付け道路の関係で高床式が採用できなかった経過が有るとすれば、その検討を行った資料などを出すべき。高床式の是非だけでなく、これだけの大問題なのだから、中途半端な調査ではなく徹底検証が必要。都側の問題意識不足を感じる。

なお、以前森山氏・高野氏が連絡通路と盛土の高さ関係を指摘しておられた。
<番組独自の専門家会議(森山氏、高野氏他)でも都の説明と食い違う事実があった。また豊洲市場の中を通る高架式の道路の下にある建物が盛り土中止をもたらした原因かもしれないという。
豊洲市場を通る道路の真下にギリギリまで迫る建物。この建物は卸売場棟と仲卸売場棟をつなぐ連絡通路。この連絡通路と高架道路の存在が盛り土を妨げた可能性があると指摘した。盛り土があると高架道路の下に連絡通路を作るのは不可能、そもそも高架道路下に連絡通路を通す計画は高濃度汚染が発覚する前、その後4.5mの盛り土が提言されたが、この時すでに盛り土の存在が高架道路と連絡通路の両立を不可能にしていた。>

これらの検証も含めて、やはり第3次調査が必須ということになってくる。

また、今までも述べてきているが、何故2層式の検討を進めなかったのか?が大きな疑問。日建設計の技術提案書でも2層構成が意図されていたと思う(地下ピットの下が盛土)。
高床式や2層式が結果的に採用されなかった経緯を考える場合、やはりキーマンは報告書で部下証言がある宮良元部長ということになる((ご本人は否定)。

前記事コメント欄で同氏関する記事を紹介したが、もっと詳しい記事も有った。
<宮良氏は、「盛り土が行われなかったことは今年9月に報道されるまで全く知らなかった」と述べた上で、盛り土を行わないことについて「指示や意思決定をしたことはない」と反論しました。宮良氏は、盛り土を行わない変更について部内の建築部門から説明や相談はなく、部課長級会議でも「話は聞いておらず、決定もしていない」と主張。宮良氏自身は、盛り土の上にモニタリング空間を設ける「高床式」にするものと認識していたということです。・・・>
→「高床式と認識していた」の発言が注目される。「高床式」の検証がポイントであることがハッキリして来る。

ただし、以下記事によると宮良氏は「都側が設ける弁明の機会は拒否」とのこと。
都では、一連の問題の処分を検討するため関係者に対し弁明の機会を設けることを伝えていますが、元部長はこれを拒否したうえで、今月4日、報告書に対する反論書を提出してきたということです。
→もし宮良氏のヒアリングが困難な場合は、やはり迅速に第3次調査を実施し、経緯を整理してから「百条委員」が必要なように思われる。

追記以上