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専門家会議提言等での「盛土の効果」

昨日盛土問題に関する第2次調査報告が公表された。詳細は見れていないが、報道では8人の関係者処分の話が中心的に取り上げられている。そんな中、「盛土なし空間の方が安全」との見方に基づくと思われる、次のようなツィートがあった。
豊洲がより安全な地下空間へ職員が移行したことに責めるべき罪状を感じない

また、当ブログが「盛り土の必要性に拘っています」との御意見も頂いている。実際には、当方がこだわっているとしたら、先日も書いた「良い仕事」の方になる。本来は今月開場を厳守すべく進めたはずなのに、開場延期になって見通しすら立たない状況に陥り、関係者に多大な迷惑や負担を掛けてしまっている。職員の処分の仕方等とは別に、根本的問題として、こんな悲惨な結果の仕事になってしまったのは何故か。

突き詰めると、こうなった要因は次のような点が大きいのではないか。
 ①専門家会議提言や技術会議合意を反故にして盛土を無くした
 ②盛土をなくすという大きな仕様変更を明確に周知しなかった
 ③専門家会議への再諮問や技術会議の承認取得を行わなかった

①の方が先になるから、当ブログでは「何故盛土なしになったか」を重点的に検証している。つまり、「盛土が必須」という観点ではなく、盛土が無くなった経緯や経過に焦点を当てている。その上で当然②も重要だが、都庁内部の話で窺い知れない部分も多かったため、今回の報告書で何が見えてくるか。

それに対して、上記ツィートのかたなどは、①は、むしろ「安全方向への改善で良いことをした」という見方で③も不要になり、②のみを問題にすることになる。このような見解は識者でも見かける。
しかし、今のところ「安全方向への改善」が「俺様理論」の域を越えて充分な納得性があるか当方には不明。また、専門家会議や技術会議(以下両会議)が盛土の効果について説明していることも無視しているように思える。

それで、両会議が「盛土の効果」を、どう考えていたかを整理してみる。
ただし、その前に「盛土は地盤高さを合わせるためのもの」という見解を取り上げておく。これに関しては以前の記事でも言及しており、盛土実施を諮問した東京都は盛土に「一石二鳥」の効果を持たせていたと想定。
 (1)地盤高さ合わせ
 (2)汚染遮蔽効果

興味深いのは、ネットを見ていると、(1)に気づいたかたは(2)を軽視してしまわれる場合があるようだ。しかし、当ブログとしては、東京都が「一石二鳥」を考えていたことは確実と考える。実際に諮問を受けた両会議も基本的に同調し、両会議としての盛土の効果が挙げられているので以下に示す。
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1.土壌中からの汚染空気の曝露による影響
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専門家会議報告書資料で、上図モデルや計算式などを駆使して詳細な検討が行われている。詳細すぎて当方の検証は及ばないが、盛土の効果が織り込まれていると思う。盛土無しの方が安全との見解の方々は、この論理を崩した上で平田座長率いる専門家会議を説得して頂ければ良いと思う。

また、同報告書では以下のように、盛土をすることにより<汚染土壌の直接曝露によるリスクは生じない>としている。
2.汚染土壌の直接曝露による影響
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ただし、建物下では直接暴露しないのではないか?という疑問も出てくるだろう。しかし、少なくとも元技術会議委員の長谷川氏は次のような趣旨をTVで述べておられた。
「地下空間でもメンテのために人が入ったりすることはあり、砕石層も隙間があるので危険性はあり、密閉が必要ではないか」
これに対しても、例えば入る頻度が少ないとか、マスクをして入るなどの対策等を考え得るだろうが、結局は今後の専門家会議の見解次第ではないか。

技術会議でも次のようなやり取りがあった。
3.液状化問題との関連
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委員が、液状化の影響を阻止する効果もあることを述べておられる。本来建物下は液状化対策対象外だったので、この効果の面から、「盛土なしは安全上問題有り」と指摘される可能性がある状況だった。しかし、実際は建物下も液状化対策が行われていたので、現在は問題になっていないという経緯。ただし、液状化対策を行っても絶対に起きないとは断言できないようなので、今後問題にされる可能性も残っている。

ちなみに上記の「技術会議提言骨子」で、最初に「①専門家会議の提言を確実に実施」と明記されている。その後に「③土壌汚染対策法対応」があるにせよ、会議を主催進行した東京都は、一番目で強調した提言内容に反して、このような事態を引き起こしてしまった。何という取り返しのつかない大失策か。
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このように「盛土なしの方が安全」というような話がすんなり通るかどうかは疑問。一昨日記事にした「環境影響評価」を始めとして色々手続きも有る。外部から、例えば飯島氏が吠えても、そう簡単には行かないのではないか。

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ただ、小池氏は昨日会見で「近々ロードマップを出す」と明言。これは非常に良いと思う。どのようなものが出てくるのか注目したい。ただし、参考として先日のフジTV「Mr.サンデー」での小池氏インタビューを示すが、「農水省への申請と認可」という話を出してきている。これだと、農水省の対応に一旦下駄を預けて、小池氏自身の決断をすぐに出すということにはならないかも知れない。

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以上
[追記]
その後調査報告をざっくり見た段階では、以下報道に出ている「新市場整備部長だった宮良眞氏」の影響が大きいという見立ては妥当性が有るように思えて来ている。

豊洲市場をめぐる問題で、東京都の小池知事は1日、臨時記者会見を開き、2011年8月に行われた技術部門の部課長会議で、盛り土をせず、地下空間を作る方針転換が事実上、決定されたことを明らかにした。さらに、盛り土をしなかったことの責任は、当時の市場長を務めた副知事の中西充氏を含む現職4人、OB職員4人の計8人にあるとした。この8人のなかで、特に問題があるとされたのが当時、新市場整備部長だった宮良眞氏で、盛り土をしないと決めた部課長会議の責任者だ。宮良氏は、モニタリング空間を作り、地下に重機を入れるというイメージ図を部下に作るように指示。図は、専門家会議が「全面盛り土」を提言したわずか4カ月後に作られていたという。そして、都は、この図を、基本設計を担当した日建設計に見せていたこともわかった。小池知事は、8人の処分について速やかに進めるとした。>

追記以上