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「良い仕事」とは

PTの結果を受けて、ネットで「良い仕事」の話が出ていた。 
2回のPTで①土壌は安全だった、②耐震性も問題なくみんな良い仕事をしたって事が判明したから、ここで盛り土の意思決定を問題視しても殆どのメディアはもう乗ってこないと思う>(10月29日)
→まず①「土壌は安全だった」は、第2回では議題になっていない。更に、再招集された専門家会議でも、「盛土無しでOK」とか、ましてや「盛土無しの方が良い」などと云う話は全く出ていない。ここから既に誤解している人が、識者も含めて多いようだ。事実関係を正確に見るべきで、平田座長の方向性はまだ見えない。
次に耐震性の詳細の方は一旦置いておいて、「みんな良い仕事をした」と書かれている。みんなとなっているが、第2回の状況では主に日建設計(以下日建)を指していると思われる。

また他にも「プロの仕事」などと書いておられる人もいる。これも日建を指すと思われる。
第2回市場「問題」プロジェクトチームの映像、ようやく全体を見る時間がとれました(確かにザハのとき、これがあれば、よかった)。改めてプロの仕事とガセネタの格の違いが明快になる。面倒な手続きは民主主義のコストとはいえ、この結果を知事やメディアがちゃんと伝えないと、本当に無駄金が増える>(10月29日建築家五十嵐太郎氏
→上掲と併せて、日建の豊洲設計が「良い仕事」や「プロの仕事」と言っておられることになる。しかし、当方には大いに疑問に思える。それどころか即座に否定出来るレベル。何故かと言うと、これほどの事態を引き起こした共同責任が有る。

当方の先輩で非常に優秀な方が、以前に「良い仕事をするために」というご自分で書かれた文書を見せてくれた。その中に(システム設計の)基本発想法が有った。以下に掲載し、番号は当方付与。
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この発想法はシステム仕様書を書く際のものだが、設計業務にも適用可能と思う。重要なことは⑧「推奨システムの詳細を書く」を実際の詳細設計と考えると、それより前に考えておくべき項目が多数ある。ここに当方は感銘を受けた。

特に①は当然として、③はポイントと考えている。これを今回の豊洲の仕事に当てはめてみる。「評価尺度」として、市場機能や利用者の満足度が重要なことは言うまでもない。

ただし、豊洲移転の場合は根強い反対運動の問題が有る。実際に高濃度の汚染物質も検出されていた。日建ぐらいになれば、大規模公共建築への反対が多いことも知っているし、それを乗り越えるためには関係者の理解が重要な事も当然認識している。結果として、反対運動に対しても納得して貰いやすい仕様かどうかを評価尺度に入れるべき。そして最終的に納得が得られることが必要。(これは③制限条件としても良いし、②理想形にもなる)

仮に当方が担当したら、間違いなく反対運動の存在を考える。そして、専門家会議報告も重要な基本情報として目を通す。そうすれば建物下も盛土することが提言に記載されており、揮発性汚染物質の遮蔽効果を見込んでいることも容易に分かる。建物下盛土蟻は、表と図で明確に表現されており、間違えようも無い。また、都側が盛土ありで対外説明していることも各種資料で容易にわかる状況だった。

背景説明が長くなったが、端的に言うと、もし当方が担当であれば「盛土なし」は提言や対外説明とも異なり、後で問題になりかねないことを必ず察知していたと断言できる。その上で、「盛土なしに変えるなら、正式仕様変更とそのアナウンスが必須」と都側に話をする。その際には、例えば盛土の厚みを減らすなどの対応案も提案する。また、所属会社が「都側の言うとおりにやって仕事を受けたい」となっても、上司や幹部を説得しようとするし、ダメなら少なくとも担当を外してもらう。それで評価ダウンがあっても覚悟の上。そして、それだけの強い気持ちで臨めば上の方もむげには出来ず話を聞いてくれる。

このように、当方なら盛土問題の共犯者になることは絶対に無かった。ただし。これは自らのことだけでなく、発注者である都側にも問題を起こさせないようにする真の「顧客ファースト」という意味がある。こういうところまで含めて対応するのが、「良い仕事」であり、「(本当の)プロの仕事」と思っている。

しかし、現在ネットを見ていると、そのような観点は今のところ見ていない。逆に盛土問題発生を防げなかった日建に対して、上記のように評価する声がある。結局、「言われたことだけやるのが当然、それでなぜ悪い」という発想が蔓延してしまっているように思う。結果として、「良い仕事」や「プロの仕事」の考え方も変わってしまっているのだろうか。

このような事態を見ていて、現状社会を判定するフィルターを構想した。
(1)日建フィルター
・Yes/No…もし同様の状況で自分が担当するとしたら、同様に言われたことだけやって盛土問題の発生を防げないか?その仕事で良しとするか?
(2)山本フィルター
・3択…①山本氏を基本的に支持する ②中立 ③基本的に支持しない

なお、(2)については同様の質問をコメント返信に書いたが、ご回答は得られなかった。これは揶揄などではなく結構真剣で、「嘘・中傷・技術的無知・罵倒・猫かぶり」等の問題オンパレードの人物を支持される方が実際におられて、どのような考え方かは、今の社会を分析する上で非常に重要と考えている。ちなみに当ブログは技術問題だけでなく、社会的分野も対象。日建フィルターでYes、山本フィルターで①を選択される方、ぜひ論議いたしましょう。

さて、日建設計は上手く乗り切ったようにみえる第2回PTでも、危うい姿を資料に残している。例えば「土の拘束効果を期待していない」という言い方の不自然さをこれまで指摘してきたが、日建資料でその理由が分かるようになっている。
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まず、「基礎ピットの外周は大部分が土に接しています」と云う言い方も違和感あったが、やはり以下のカラクリがあった。
  ”「擁壁=ピット壁」とする→擁壁は土に接している→「ピットの壁は土に接している」
三段論法を悪用した誤認識を誘導する詭弁。世間をコケにして分かりっこないとタカを括ってるのだろうが、そうはいかない。そもそも一段目の「擁壁=ピット壁」が、別体のものを一体としてしまっていることは、すぐ見抜ける。(「地階」の扱いによる階数問題の方は先日記事で詳説済み)

また、丁度上図は外周部構造が分かりやすいので、例の山本氏10月9日ブログ記述を再掲。
横のポリスチレンフォーム云々についても、専門家からは「地面よりもポリスチレンフォームの方が固いから問題ない(意訳)」と回答を頂いてます
→ぜひその専門家さんにも、日建の図と見解を見てもらって、ポリスチレンフォームが地震時にどのような役割になるか、再度ブログで説明するか、訂正記事が必要でしょう。ちなみに資料を流したという話がある音喜多都議も、別件だが訂正の考え方に関して次のように言っておられる。
<誰にでも間違いはあります(政治家にもある)。腹を切れとか罰金を払えとは思いませんが、せめて一言「間違っていました、訂正します」と発信するのが、最低限の専門家としての責任では。>(10月26日)

日建の仕事に話を戻すと、仕事ランクとして「S・A・B・C」のランクを考えてみる(SEなどではよくある分け方)。上記の「良い仕事」・「(本当の)プロの仕事」がSランクとすると、今回の日建の仕事は盛土問題を防げなかったということでSは有りえない。また上図のような不明瞭さも含めればAにもならないと思う。つまりBランクぐらいか。

しかし、実際はもっと問題が隠れている。例えば重要な要素であるコスト。都側報告書で「地下空間を埋めたほうがコスト圧縮になる」と云う記述を10月25日記事で紹介した。しかも「空間の高さを出来るだけ低くしたほうが、コスト・工期が抑えられる」となっていて、「地下空間の高さが高いほど、コスト・納期が増加する」ことも示されている。

地下空間は「がらんどう」で安いのではなく、土で埋めるより高い。非常に重要な話だが、「盛土より地下空間のほうが元々良い」と吹聴している識者の方々は、コストのことを言わないか、盛土無しが安いと思いこんでいる。こんなツィートも有った。
盛り土がないのは適切な設計だったと結論づけられているのに
→コストは考慮に入れておられないと思われる。 藤井氏・橋下氏などもこのレベルだと思うので、ぜひマスコミは「盛土より地下空間の方がコスト・工期が増えるのですが、いかがですか?」と聞いてもらいたい。(山本氏には聞く意味さえ無いだろう)

しかも、日建は、立派な階段で入れてピット階と明記もされている地下空間を「基礎」と強弁しているが、その作り方でもコスト差が当然出てくる。第2回資料で出ていた図が左側だが、長いフーチングの上部に基礎梁があり、その下は人が立って通れるぐらい開いている。佐藤氏は例のない高下駄を履いたような構造と言っている。右側に示すフーチング例では、そのような長大なフーチングは想定されておらず、地中梁も高下駄のようにはならない。豊洲は特殊構造と思われ、同氏も特殊としている。

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更に日建も<巨大な基礎を作ってるもんですから、重さそのものが実は建物の上部と基礎がおんなじぐらいなんです。要は重いんですね。>と言っている。地下空間を作るとしても、これはコスト・納期が低く抑えられる構造なのか? ぜひ専門家にご検証いただきたい。

また、使用予定もなく、使えもしなさそうなミニ重機対応も、真偽と経緯を早く明らかにしてほしいところ。もしミニ重機作業用空間として高さを取りながら、其の中に配管を多数通すことを認めれば、大きな無駄であり日建は設計上どのような仕様にしていたのかが問われる。このように懸念事項は色々有って、これらが問題有りとなればBどころかCランクの仕事になってくるだろう。

そして、PTメンバーの建築専門家も「盛土と地下空間のコスト・納期比較」は容易にできると思うのに、安全性だけに絞った論議をしているだけでは、「B(orC)→S」という「ランクロンダリング?」に協力していることになりかねない。

 もし仕掛けた人がいれば大成功だろう。それがいるかいないかは別にしても、PTの進行に問題が有ることは見えてきた。このままなら、肝心なところが官邸と文科省によって制限がかかって不十分だった新国立競技場調査の二の舞いか。

以上
[追記]

まさに、見かけ上の責任者処分で済ませて、真相調査は曖昧にする新国立競技場方式が見えてきた気もする。公表を待ちたいが、結果によっては五輪会場問題とともに小池劇場のゆらぎが明確になってくる可能性もありそう。

追記以上