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長谷川氏の対策案

「安全性」に関して、当ブログでは「再招集された専門家会議の論議進展を待ちたい」という姿勢であることを書いてきているが、その趣旨がなかなか伝わりにくい場合もあるようなので本記事で更に述べる。

説明用に丁度適した報道がある。盛土問題での小池氏記者会見から4日後のTBSテレビ「NEWS23」。
豊洲市場の青果棟・地下空間に大量の水が、石がむき出しに” 2016/09/14  TBSテレビ 【NEWS23】 

この中に技術会議委員だった「長谷川 猛」氏のインタビューが有る。同氏は「東京理科大学工学部工業化学科卒業後、東京都に入都され、その後東京都環境科学研究所長を8年間務められた」というご経歴。
同氏が盛土無しの事態について語っておられた内容。

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考えられる対策についても述べられた。

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同氏は専門家会議委員ではないが、環境専門家として、そのご見解は傾聴に値するだろう。「水は通さない鉄筋コンクリートの床をはって中には換気室を設ける」という対策案は当方も基本構想として納得できる(詳細後述)。当方と同じく環境専門家ではない一般の方々も、理屈的に妥当と考えられる方は多いのではないかと思う。

しかし、藤井聡氏はTVタックルで「水が抜けるようになってる方が安全です。何十人にも聞きましたもの」とご発言。「水を通さない(長谷川氏)」と「水が抜ける(藤井氏)」では全く正反対。当ブログではこのような違いを、そのままにしておかない方が良いと思い藤井氏発言を検証している次第。

公式の検討は前述のように専門家会議になるが、その際にまず「何故盛土無しになったか?」をメンバーの方々はお考えになると推察。都側が提言を反故にした理由や経緯をまず知りたいと思うのは当然。盛土無しにした理由が有益なものなら、それを考慮して検討する必要が出てくるからである。

だが都側の報告書はあのレベル。当ブログでは昨日も記事にしたように「盛土無し」経緯の検証と推測を実施。その中でミニ重機作業空間の件に注目してきた。モニタリングだけなら観測井戸による測定だが、空間の高さが高くなったのはミニ重機の作業空間という話がある。上記番組中にも元東京都幹部の話がある。

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<ショベルカーを入れる空間があったほうがいいという議論になった>とのこと。これが本当に必要な方策なら、当初想定のモニタリング期間は11月で終了だが、基準値超えが出たということで更に期間を延ばすような場合は重機使用も検討することになるのだろうか。

しかし、実際には基礎梁が大きいだけでなく、それを避けて配管が低い位置に来ている箇所も多く、ミニ重機と云えども地下空間全域に渡って作業空間を確保することは実質困難だろう。なぜ当初ミニ重機使用が考えられて、今は使えないのか経緯調査が必要。本来は都側がやる話だが(苦笑)、昨日記事で仮説を立ててみたので今後の進展によって出て来る情報で検証予定。

また、専門家会議から、例えば長谷川氏のような趣旨の対策案が出た場合はどうなるか。藤井氏のように現状空間を全面肯定していく方向性では、現状が良いと言った手前押し通すのか、或いは会議の見解を尊重するか。

結局「密閉空間で無い方が良い」などという言説を振りまくことになる現状全肯定より、「盛土無し」での対応策はどういう手法が有るか、早く検討すべきと思う。全肯定論の方が却って遅れてしまう可能性がある。これが先日記事のタイトルで「移転を危うくしかねないのは、むしろ推進派の言説ではないか」とした趣旨。

実際専門家会議は、現状のままではOKとしない可能性があると思う。<盛り土がなければいけないとする前提の妥当性>というコメントを頂いたが、同会議は提言にあたって検討を行っている。ただし、4.5mという厚み自体は都側提案によるものなので、その状態で汚染対策が成立していることの確認結果が提言の中にある以下書類(一昨日記事でも紹介済)。

この中で詳細に検証が行われている。その前提とした4.5mがゼロに変わっても問題なしという結果が出るだろうか。例えば、4.5mを2mにしてもOKという方向は出せても、ゼロでは、そのまま承認になる可能性の方が少ないと予測。

仮に専門家会議も長谷川案と同趣旨の案を出したらどうなるか。この案でも地下空間を密閉化して換気設備も設ける工事は、設計から始めて施工完了まで時間と費用がかかる。密閉型にすると、都側が当初から懸念していた「地下階認定」される可能性があり、その対応も必要になる。

また長谷川氏はこの発言時点で、建物周囲の気密性が保たれていないことへの考慮は無かったかも知れない。外周だけでなく地下ドアなども含めて全体に気密保持が必要になれば、一体どれぐらいの工事になるだろう。

この状況に関連して来る次のようなツィートがあった。
これで落とし所を探る折衷案としてもう2年様子を見るなんて言ったら、とか国が徹底して援助しない限り廃業する仲卸が多数出るんじゃないかしらね。

当ブログで「延期期間がどれ位になるかの見通しが最重要」とこれまで書いてきたのが、まさにこういうこと。長谷川氏案だと、どれぐらいの期間・費用がかかるか?、プラス建物周囲等も気密性保持ならどれぐらいか?、或いは他の案が有るか?。

安全性評価は専門家会議が主体的に検討するにしても、そのメンバーは建築の専門家ではない。同会議と建築専門家などが共同作業することも必要ではないか。現状全肯定論で押し通そうとすると、協働モードに入るのが遅れかねない。

ただし、藤井氏は内閣参与という立場でもあり、政治家や官僚が同氏などの協力を得て現状のままでの収束を狙っていたりすると、新国立競技場のように国民が実態を知らされないままフェードアウトしてしまう可能性もあり得る。しかし、当方はそのようなやり方は決して良いとは思わない。

以上