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調査報告書1…「地下水モニタリング」の混同

調査報告が公開されたので、「盛土無し」問題の深層を考察してみた。

(1)「盛土4.5m」は東京都が諮問した対策であることを完全スルー
まず、これまでの記事で言及してきたように、盛土問題の前提として「第1回専門家会議資料”東京都が予定している土壌汚染等の対策”」では、建物下の盛土が明記されていたと云う重要事実がある。

平田座長も先日会見で、「専門家会議は東京都から『4.5mの盛土をしたい』という諮問を受けて、それでの安全性について9回の会議を行った。提言を受けてどうするかは東京都の裁量範囲」という趣旨の発言あり。結
しかし、報告書はこれらの事情をすっ飛ばして、提言が出された専門家会議第9回から経緯を記述開始している。
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これだけでも報告書は重大事実の欠落で失格。都庁が知事の直接指示を受け、或る程度時間もかけて、この結果とは唖然とする。

また、経緯を推察してみると、豊洲移転担当部署の間でもセクショナリズムがあったと想定される。上記のように全面盛土で諮問してしまった汚染対策・土木系部署が、途中で全面盛土は不可能と気づいた際に、諮問内容撤回では責任問題になる。何とか汚染対策関連の理由で盛土無しに変更出来るように頭を捻ったことが考えられる。

というのは、配管用ピット等だと理由は明確になるが建築系部署の知るところとなり、情報が漏れやすくなる。汚染対策に関する必要性ということに出来る「モニタリング空間」が浮かんだのではないかと推測。

(2)「モニタリング」の混同
驚くべきことであるが、報告書は「モニタリング」について、「改正土壌汚染対策法による2年間の地下水モニタリング用空間」のみに関する記述になっている。つまり、現在稼働してなくて水が溜まって問題になっている「地下水管理システム」のモニタリング機能には言及なし、豊洲市場の恒常運用にはこちらの方が重要な施設。2つのモニタリングについて説明。
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①2年間の地下水モニタリング
小池知事が11月の最終結果を待って移転を判断するとしていたのがこれ。直近では基準値超えの汚染物質が検出された。このモニタリング用ポイントは下図のように施設の下にも配置されている。ただ、2年間のモニタリング結果でOKとなれば、その後は必要がなくなるものだった。

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②恒常的な地下水管理システムのモニタリング
今まで紹介してきたシステム。地下水を汲み上げて水位をAP+1.8mに保つ。汲み上げた地下水は浄化して下水に流す。年間30億円かかるというのがこれ。観測(モニタリング)井戸は、建物を避けて建物外周に沿って配置されている。
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長谷川氏は、モニタリング用空間とは、この②のことだと認識。実際第18回技術会議などでも②が説明されていて、①の説明はない。
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結果的に①と②の混同が技術会議内でも起きていた。都側も技術会議で2つを明確に分けて説明していない。
地下水管理システムは技術会議に下図右側のように示している。が、その中に「モニタリング空間」の説明などは無し。それどころか、逆にわざわざ建物とは別体の擁壁で囲って見えなくしている(笑)その下にあるはずのモニタリング用井戸なども示されていない。

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左側図の技術会議提言では、「モニタリングは毎月実施する」となっていて技術会議も「地下水浄化システム」には関与を行っている。しかし、モニタリング空間の方は、技術会議に正式にかけられておらず、関与していない。

これらから推察してみて、以下のような仮説を考えている。
都側にも、全面盛土は不可能と認識した人が少数いて、盛土無しにできるアイデアが求められ、「モニタリング空間」はそのニーズに合致して造られた。
その後、出来た空間は広いから配管スペースなどに使用され、多目的空間のようになっていった。
しかし、決して重機が入って掘り返すような用途には使われなかったし、使う気もなかった(これから無理やり使って見るかも知れないが(笑))
法改正対応で「モニタリング空間」が必要になった際に、技術会議にかけて仕様変更を検討すべきだった。しかし、責任問題になるから、ハッキリ説明しないで一応話はしたということにして、①と②の混同も利用して曖昧なまま進めたか。

これであれば見え見えの経過なのに、都の調査は見抜けていない。

(3)重機に関して
既にミニユンボの話に乗せられている識者?もいるようだが、報告書を読めば都側も分かっていて、次のように逃げを打ってある(爆)
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今までも使ってないし、今回の基準値超えでも使う気配はなく、しかも対象期間は2年間(今回延びるかもしれないが)。
実際にどのように活用するつもりだったのですか?と聞かれるとボロが出るから、地下活用例として検討してみただけの「ポンチ絵」であるとして逃げた(実際にもそういう位置付けと思うが)。「モニタリング空間」を持ち出した知恵も含めて、責任回避の能力はさすが。

(4)今後に関して
まず、平田座長がどうするか。この報告書だと「発端は専門家会議の提言」となる。それが厳しすぎて必要な配管スペース等も取れないので、技術系(特に建築系)職員が英知で提言に反する地下空間を周知しないまま設定した、というストーリーが出来てくる(笑) 渡辺氏発言はまさにこれにハマるが、同氏は独立に発言したとは思う。

平田氏は、このままでは専門家会議が悪役になってしまう事態に、どう対処するか。可能性としては報告書がこの内容で公式に出たということは、事前に見せられて言い含められているのか。或いは、会見でも都側からの独立性を強調し、盛土が都側諮問であることも明言していたから、諮問内容をカットして悪印象を持たせてしまような都側対応に異議を唱えるか。ちなみに、「盛土4.5mは都からの諮問ですよ」と公式の場で再度言えば、報告書の前提が崩れていく。

小島PTは盛土問題に関して、安全性については平田チームに任せるとのこと。都側の問題については、例えば<建物地下空間の図面を書いた人は、何故土壌の専門家の評価を求めなかったのか?>を論点の一つにしていた。しかし、(1)で書いたように「土壌担当」の方が自分たちでクローズして盛土無しを決めて、建築系には最小限しか知らせていなかったとしたら、建築系の責任は余り問えないだろう。結果的に小島PTの認識は本質から遠い可能性があり、大きくは期待できないかも知れない。

他では、外野ではあるが識者と言われる方々が、今回の報告書をどう受け止めるか。ミニユンボの絵に惑わされて都側言い分を鵜呑みにする人がどれ位出てくるかか。或いは、配管ピットなどは後からの利用で、根本は「再盛土が困難だから建物下は盛土無しが必然だった」という本質に至る人が出てくるか。注目してみていきたいと思う。

なお、早速分かってない識者?の例を発見。読んでこれだから痛い。盛土無しという重大仕様変更が積み上げで決まるわけがない。積み上げなら変更願いが知事まで行く話。不可能な仕様を諮問して提言させてしまった大チョンボリカバリーを図った少数の人達がいた。全面盛土は「盛って掘って又埋めて」という工程になって、「工期・工費増大に加えて技術的にも実質不可能」という点を認識できないと盛土問題は核心に迫れない。都庁もそれが全く出来ていないので、最後の部分は同意。
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以上