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地下空間の本質は「建物下への揮発性汚染物質遮蔽性能を持つ盛土不可能」

報告書はまだ一般公開されてはいないようだが、下図などが報道されている。
「ミニユンボが入るモニタリング空間」として盛土無しになったというストーリの模様。
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これについて検証してみる。(報告書がまだ見れていないので仮検証)
まず、当ブログで「地下空間」が出来た根本原因について考察し、全面盛土は「盛って掘って又盛って」というムダで不合理であるため、現実的には実施不可能ということを9月23日記事にした。全面盛土時の手順概念を再掲。
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この中で(1)盛土と(2)盛土除去に関しては、第1回市場問題PTで建築家「佐藤尚巳」氏が、(1)100億円・(2)75億円・計175億円という概算を示し無駄を指摘した。上図も壮大な無駄を示すために作成してあるが、佐藤氏は(3)については触れなかった。

盛土無しになった原因として、(3)再盛土の問題が非常に大きいと当ブログでは考えている。現状での地下空間の写真例を示す。
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このように大きな柱やフーチング、梁などがあって、よく説明に用いられる下図のような空間のみの状態ではない。
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建物地下への盛土は上掲写真に注記したように技術的課題がある。柱や梁が多く、基礎柱が一つの建物で数百本も林立する状態では作業性が悪く、工期・工費増大を招く。更に一番の課題と思えるのが、揮発性汚染物質に対する遮蔽性確保の問題。

そもそも今回の盛土は、地盤面を揃えるために必要だったが、それを汚染対策用にも使ったという事情がある(この辺の分析は機会があれば又書きたい)。特に豊洲では高濃度のベンゼンが検出されて問題になったため、揮発性物質の遮蔽に注意が求められた。そのために専門家会議は「盛土4.5m」が有効と評価し、元々東京都の諮問で示されていた処置であるが、対策の重要な要素として全面盛土を前提とした提言を出した。

揮発性であるから、僅かの隙間でも漏れてくる危険性があることになる。汚染土壌にかぶせて飛散防止するといった一般的な盛土の目的より、ずっとシビアな性能が要求される。しかし、建物下は基礎柱・フーチング等が林立状態で、基礎梁・通常梁なども縱橫に入り、配管などの設備を除いても複雑な空間になる。「盛土」というより土を詰めていくという作業になると推測される。

結果的に、揮発性物質が遮蔽できるように隙間なく盛土を行うのは不可能レベルではないか。重機で一気に被せていける通常の盛土とは異なる技術的課題がある点を認識する必要あり。遮蔽効果の確認という工程も必要になる。
また数多くの配管類まで含めたら完全に対応不能で、配管用ピットを別に設けるなどの対策が必要になってくることも考えられるが、当然構造は更に複雑化。

結果的に当ブログとしては、「元々建物下の盛土は不可能な状況だった」ということが、盛土無しの最重要要因と考えている。上記(1)(2)までは手間と費用の問題になるが、再盛土は技術的困難さが大きく、お金で解決できるものでも無くなる。その点で新国立競技場のキールアーチやアーチタイと似ているかもしれない。

建物下盛土無しの方針が出てきた状況を考えてみると、まず全面盛土は都側から明確に提示して、それを受けて専門家会議が正式提言を行ったという事態になっていた。それでも不可能なものはやれないから、何ととかする必要に迫られていた。

そのような状況の中において、豊洲担当部局内で誰かが「建物が建ってから対策方法」の話を出した人がいた。更に「ミニユンボ」による再掘削のアイデアが出て、「それで行こう」というような流れだったのではないかと推察。

もちろんこれは私的「仮説」では有るが、単なる憶測ではなく、今となってみれば分かるように、今回の基準値超えでも「早速ユンボを入れて対策だ!」ということには決してならないと思う(成り行きは見てみたい)。つまり無用の発想。

建物ができた後では、地下水管理システムによる浄化で地下水汚染を防ぐのが本来の対策で、実際に構築されている(稼働が遅すぎるのは大問題だが)。例えば、汚染源が有ったとして建物下とは限らないから、建物外だと4.5mの盛土を掘って、その下の汚染源を見つけて掘削して除去することになるが、どれだけの大工事になるか。

当然外からも見えて不安感も与えることにもなる。結果的に盛土まで完成したら、後は掘り返しは考えなくて地下水管理システムの浄化機能を使うのが大前提。だから、モニタリングも本来は地下水管理システム稼働後に行うべきものと思うが、現時点でも稼働していないので話がややこしくなっているように思う(笑)(別途考察)

このようにミニユンボ使用構想については、不可能な建物下の盛土を何とかして避けなければいけない状況で理由に使われたと見る。絶対必要で追加したわけではないので、ハッキリとした提案者や承認者も特定しにくくなっているのが、今回の報告ではないかと思う。

世間的には冒頭図のユンボ入り図で、「そんなものか」と思う人が多くなりそう。技術的な深い知識が無いと、なかなか真相にたどり着けない問題。もしかすると識者でも安易に乗せられる人が多いかも知れない。当ブログでは実態の追求を続けていきたいと思う。更に興味深い事態になってきた。

ミニユンボ用空間は実際には有効性の無いアイデアだったと思うが、それでスタートしてしまったことが現在の地下構造への違和感につながっているかも知れない。中でも「地中梁」の位置が気になっていたが、報告書の図では地下空間下部に「地中梁」と明記されている。但し図は少なくとも2種類あるようだ。

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図Aの地中梁位置がペコさん指摘の「本来あるべき位置」ではないかと思われ、当方も同感。しかし、現状では図Bのように1階の床下(=地下空間の天井相当)に地中梁がある。これを肯定している専門家もいて、本来はどちらの位置が適切なのか曖昧。

どちらでも対応可能ということかも知れないがが、耐震性や強度では下方に位置する図Aの方が有利ではないだろうか。なお、細かい点になるが、1階は実質的にはAP+2.0m面から高床式になっている。「地中」とは呼び難く、1階床下の地中梁は「基礎梁」と呼ぶのが妥当なのだろうか。

なお、結果的に盛土無しになってしまったが、「規程上は盛土かコンクリートだから、コンクリートのみでOK」という一部識者の主張がある。規程はそうだが、もし都側も同様に考えていた場合、当ブログでも指摘してきた「建物外周部の気密性無し」が問題になる可能性があり。また、ミニユンボ使用とは別に「モニタリング空間」としての利用についても検証必要と考えている。

まだ報告書を見ていない段階でも色々検証すべき事項があるが、都側の検証では、どれぐらいの究明がなされているだろうか。

以上
[追記]
仮にミニユンボ使用で納得してしまうと、それを決めたのは汚染対策や土木担当の技術系職員の可能性が高くなる。建築系職員は、それを実現する建築方法や配管スペース等への応用を後化rた考えていったと思われる。

そうなると、渡辺氏が「「英知」とまで賞賛した地下ピット?空間の確保のための決定では無かったことになる。技術系とひとくくりにして、(実際には使われない)ミニユンボ作業空間設置を「英知」と評するようになるのだろうか。或いは、ご指摘された本文(1)(2)相当だけでなく、(3)のために「必然的に盛土無しにならざるを得なかった」という本質へ到達されるか。

追記以上