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豊洲建物の「建て方」仮説

まず、技術会議委員だった「長谷川 猛」氏が、どこかの番組において「第18回会議で『4.5mまで盛土する』と云う話が有った」と言っていた。議事録では次の記述があった。

----第18回技術会議2014年11月27日 抜粋開始(P16)-----
○藤原課長(東京都)…今、先生ご質問のお話は、掘削した土量に対して埋め戻し土量がちょっと少ないので、そこら辺の差分についてということでございますが、そもそもこれ、区画整理事業で5街区、7街区ともにですけれども、操業地盤A.P+4mでありましたけど、それよりも2.5mぐらい盛土が全体的にしてございまして、それを全部かき取って、さらに2mまで取って、周りの部分を盛土して戻したということで、今ある地盤については、A.P+2m建築敷地、それ以外のところを盛土というところで、もともとの地盤面が結構高かったので、捨てる量のほうが多くなっているというのが現状でございます。
○矢木座長・・・そうですか。わかりました。そうすると、今回の工事では2mよりも低いところは、汚染しているものはみんな掘り上げてきれいなものを入れている。それから、2mと4mは全部掘削して、きれいなものと入れ替えている。それからさらに、2.5mですかね、きれいな土を入れているということで、要するに、4.5mはきれいなものが積んであると、こういうふうに考えてよろしいわけですね。
○藤原課長・・・はい。 
○矢木座長・・・ わかりました。
----抜粋終了-----

この藤原課長(課長)と八木座長(座長)のやり取りは噛み合っていないように思う。課長は「建築敷地はAP+2mになっていて、それ以外はAP+6.5mまで盛土した」という会議資料図面と合致した話をしている。しかし、座長は、その中の「建築敷地」という言葉を聞き逃して、「要するに、全体が4.5m盛土されている」とまとめて解釈した可能性が有りそう。

これだと、周りで聞いていた委員らも、「4.5mはきれいなものが積んであるんですね?」という座長の確認質問と、課長が肯定した「はい」だけが耳に残った可能性は有るだろう。つまり、説明不足・誤解・思い込みの連鎖だった可能性あり。(なお、長谷川氏は当日急遽欠席、議事録で知ったのだろうか)

このような状況だったとすると、昨日紹介した新報道20001でも取り上げられた「土壌対策イメージ図が第18回になって変更された」件も、気づかなかった可能性は充分考えられる。
イメージ 1

この変更は、イメージ図と実際の盛土仕様との相違に気付いた都側人物の指示で行なわれたことが想定され、委員には特に知らせなかったと想定される。直接指示した人は不明だが、少なくとも上記の藤原課長は知っていた。都側で盛土無しを知っていた人物が一名は特定できたことになる。
実際の仕様変更決定は、もっと前と考えられるが(2009年7月〜10年7月…毎日新聞)、このように追跡していけば迅速に事情は分かってくるだろう。

加えて、それ以上に重要な経緯もありそう。
様々出ている土壌汚染対策イメージ図は、下図のような関係になっていて、一番右の「地下空間有り」の図は都側は出していなかった。
イメージ 2

しかし、PTの小島座長会見は次のようだった。
<東京の豊洲市場で「盛り土」が行われていなかった問題で17日、小池知事が立ち上げたプロジェクトチーム(PT)の小島座長は、都が盛り土を行ったと説明したことに、「思い込みや認識違いが重なって起きたことで、隠す意図はなかったのではないか」との見方を示した。>(日テレ)

これについて前述議事録のように、委員には思い込みや認識違いがあった可能性大だが、都側の課長は盛土無しを完全に知っていた。最初から小島氏のような予断を持たず、「(担当者に隠す意識は無くとも)実質的には隠したのと同じ」という客観的認識から始めるべきだろう。これではPTの調査も、OBを含めた公務員同士のかばい合いに陥る危うさあり。小池氏がどうコントロールしていくか。

さて、上記イメージ図について更に考えて、本日表題の「建て方」に対する仮説が見えて来た。
下図に示すように建設手順として、まず①でAP+2.0mまでの汚染対策が行われた。次に②で盛土が行われた。専門家会議や技術会議は、敷地内外に関わらず全域にAP+6.5m盛土を想定していたが、都側は敷地内側を盛土無し状態で工事完了させ、技術会議はその意味に気付かず承認して解散した。

イメージ 3

結果的に建築担当部門には②の状態で引き渡されたことになる。つまり施設建物の底面はAP+2.0mが設定されていたと推察される。この仕様は前述の2009年7月〜10年7月ぐらいの時期に都側が決定していたと思われる。

2011年3月の発注で受託したN建設計は、都側の仕様に沿ってAP+2.0mから上に「地上5階」の施設を建てる設計を行ったのではないかというのが当ブログ仮説になる。その結果、AP+2.0mと盛土上面との間が空いて「謎の地下空間」(地下ピロティ?)になる。このように、盛土上面の「地上ライン」ではなく.「AP+2.0mライン」から建てられたと見ると、当方には理解しやすくなった。

ただし、この場合は地下ピロティと周囲の地盤との関係が、通常の地下構造と変わってくるだろう。上図右Aの部分である。これが実際はどうなっているか。また、AP+2.0mを底面に建てられたなら、同Bの部分には基礎梁相当が必要になるようだが、実際には無い模様。これらの懸念を高野氏は指摘されていたと思われる。

更にこの仮説が妥当であれば、同氏の最重要指摘「構造計算は6階建て相当で行うべきでないか」ということが現実味を帯びて来る。もしそうなると、階数が増えるだけでなく基礎梁相当無し等の状況もあり、耐震性がどうなるか。豊洲問題の検討に影響を与えることが推測され、高野氏始め建築専門家の方々の詳細な検証及び都議・マスコミ等の調査を期待。

以上
[追記]
第18回議事録では液状化対策についても、委員と都側の施設整備部長で次のようなやり取りが有った。

----液状化対策やり取り(P14)抜粋----
○安田委員 …もう一つの質問は、先ほどこの左側の図の中で白い部分は建物が建つといったことで別の液状化対策をされるという話だったんですが、具体的にはどういうふうにこれはされるんでしょうか。 
○中山部長 …施設整備担当部長の中山でございます。建築のほうの担当をしておりますが、建物下につきましても、各街区、それぞれ地盤の性状、また建物の設計内容に応じて適切な工法を組み合わせております。具体的には、建物を支える剛強な杭に、こちらの土壌汚染対策と同様でございますけど、砂杭締固め工法なども併用しながら適切に行っているということでございます。 
----抜粋終了----

本文の藤原課長は「基盤整備担当」で、中山部長は「施設整備担当」。ここで、長谷川氏などが指摘しておられる「縦割りにつながる組織」が見えて来る。ただし、本件では藤原課長は本文記載のように「敷地内に盛土無し」の情報を知っていた。両組織ぐるみで専門家提言と異なる仕様を、変更承認も受けずに実施していたことになる。

不可解なのは議事録にあるように、液状化に関しても専門家が納得していた「敷地内は液状化対策無し」の仕様を都側が変更している。盛土無しとは違ってコストアップ方向の変更になる。しかも敷地内の液状化対策無しは、都側が財務局指針を基に規定した仕様であり、何故このような変更が行われたか経緯不明。

ただ、建物下の液状化対策は砕石層とともに技術会議終了段階では無しだったが、施設建設段階で追加される仕様になっていたことは確認できた(当ブログの関連記述は訂正実施)。
石原元都知事は「都庁は伏魔殿」と言っていたが、このような技術的仕様の決め方も複雑怪奇のように見える。「都政大改革」は必須。

追記以上