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移転延期会見と深層にある理由

昨日小池知事の記者会見が行われ、「延期」が正式に表明された。早速内容についての見解が様々報道されているが、的外れのものが多いと感じる。

当ブログでは先日も書いたように一ケ月前の7月31日記事で「延期」の予測をした。小池氏の置かれた立場を考慮すると「延期」以外の選択肢が最初から考えにくい状況だった。それを解明しておくと、移転問題の判断選択肢を整理すれば以下の三つになる。
 ①予定通り開業
 ②延期
 ③移転中止

まず、現地を外からではあるが見てみて「too big to fail」の状況であり、③は困難。次に小池氏は「都政刷新」を掲げて当選したばかりで、既定路線を追認することになる①も無理。結果的に②しか残らない。

このように三択化してみれば、実際は②の一択問題であったことが容易に解る。ただし、これを延期決定してから述べると、「後付け」と言われることになるから認識できた時点で早々に書いておいた次第。

この「延期しかない」という見方は、政治家、特に改革派の方は理解しておられると思ったが、何と維新を唱えた「橋下徹」氏が次のようにズレた趣旨のツィートをしておられて驚いた。
小池都知事が築地移転を完全白紙にする覚悟があるなら移転延期でもいい。そうではなく施設の不具合を修正していく落としどころならまずは新市場を稼働させるべき。>

確かに「移転して稼働させたうえで不具合修正」は正論。しかし、都政の抜本改革を旗印に当選して一ケ月も経っていないのに、従来路線踏襲の決断など出来るわけがない。橋下氏は自身も改革のリーダーであったのに、現在の小池氏の状況における「出来ることと出来ないこと」の区別もつかないのだろうか。

ただ橋下氏は「自分なら出来る」と思っているかもしれないし、彼なら出来るのかもしれない。しかし、もしこの件で小池氏と対峙したなら、「橋下さんがいつも批判者に対しておっしゃっておられるように、ご自分で都知事になっておやりになれば良かったのでは」と簡単に切り返されてしまうだろう(笑)

実際橋下氏は都知事選に出ることも出来た。「TVの番組を始めていたから」というのは、私事であって大義にはならない。当方も従来橋下氏には期待しつつ、何か違和感も感じていたのは、このような現実から遊離した発想方法のためかも知れないと感じた。これでは、もし政界復帰しても大きくは期待できないか。

ただし、前述のように「移転して不具合修正」自体は正論と当方も見ており、小池氏も「環境モニタリング未終了」の事実がなければ、延期の決断にはもっと逡巡して苦労したと思う。
会見では延期理由として以下のように3つの疑問点が提示された。

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(1)安全性への懸念、(2)巨額で不透明な事業予算、(3)情報公開の不足」である。
この中で、「(1)は理解できるが(2)と(3)は移転とは切り離して解明すれば良い」と云う声も、会見後に多く聞かれる。しかし、本質的理由は(1)のみと云うのが実態だから違和感が出るのも当然。決め打ちが余り見えないように(2)(3)も含めたというぐらいに認識すべきだろう。
だから前述のように「モニタリング未終了」が無ければ、小池氏も窮地に追い込まれていた。逆に「未終了」という理由を見つけて、それで押したところに小池氏の勘の良さが感じられることにもなる。

そして、もっと深層にある真の延期理由は「関係者間の調整が付いていない」という点に尽きるのではないか。小池氏も会見で「関係者から未だに不満の声が上がるのはどういうことでしょうか?」と疑問を呈していた。ポイントはここに有る。

ネット議論を中心に反対の声が広がり、筋が通っている指摘も多々有って、押し切るには無理な状況になっていた。もっと「へとへと」になるまで話し合って最後は責任者(知事)に一任という、日本の意思決定には良くある手法が必要な事態だったが、それが不十分だったので今から行うことになる。

よって延期の期間も、まずは「へとへと」になるまでの時間がどれぐらいかと云う点にかかってくる(笑)
それに加えて、モニタリング結果の公表予定が1月であり、それ以降となると早くても移転は2月。それでも9月から議論を始めて年末まででも4か月ある。世間の注目度も高く、議論進捗を随時情報公開してやっていけば、相当のところまで詰めることは可能だろう。

その上で最終判断にあたっては、モニタリング結果が1月のどの辺に出るかにもよるが、引っ越しの準備期間をどれぐらい見るかが最重要。仮に3ヶ月とすると、2月末移転実施でも11月末ぐらいには移転方針の決定が必要。モニタリング終了は11月と云うことだから、暫定結果を迅速に出してもらって移転を仮決定することは可能かもしれない。ただし、正式結果公表を待たずに方針決定するのは、小池知事も考えどころになる。

反面では、延期によって余分に必要になる費用も様々に報道されていて、移転が遅れるほど損害額が積み上がる。小池氏の支持基盤である都民やマスコミの風当たりも強くなっていく。延期期間をどう判断するかは腕の見せ所になってくる。

なお、「中止」になる場合も一応考えておくと、最終モニタリングで万が一検出されたら2年延期も有り得ることになる。しかし、7回も連続OKになっていて最後もOKになる可能性は高いだろう。それでも他にも問題点は有って、構造計算におけるコンクリートの厚みが1cmというのは酷い話。実際は15cmになっているようだが、プロジェクトチームによる精査で「耐震性能」などの致命的部分で問題が出れば、抜本的再検討も止む無しと云うことになる。また、そのような杜撰な構造設計が行われた経緯や責任なども解明必須。

それでも、小池氏が挙げた三つの理由の中に、設計上の懸念が入っていないのは暗示的。技術的課題は修正して対応していくという方針も感じ取れる。それに、市場関係者からも「知恵と工夫を使うしかない」と云う声がある。そのオピニオンリーダーになっているのがマグロ仲卸の生田氏。先日の「新報道2001」でも間口の問題について「マグロも工夫すれば切れる」と持論を披露していた。(経営しておられる会社HPを見てみると、生田氏はなかなかの才人とお見受けし語りも上手い)
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ただし、同番組では、やはり一コマの狭さを訴えている仲卸もいた。
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そして、実際に生田氏の店(鈴与)の築地における写真を見てみると、一コマではなく少なくとも二コマ以上は使っておられる。番組で「マグロ仲卸は一コマでやっているところは少ない」という実状も率直に述べておられた。
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また、間口寸法は「1.5m」との報道もあるが、有効幅は壁の厚み分を差し引くともっと狭くなり、1m32cmぐらいと云う話も有る。基本的にオープンな築地とは違って、壁で動きが制約されるから商売に支障をきたすことも多くなるのではないか、と常識的にも思えて来る。二コマ間の間仕切りは外せるようになっており、基本は二コマ運用の設計思想ではないかとも思う。
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食品衛生の面からは壁が必要と云うことも理解が出来るので、築地方式が良いとも言えない。このように一つ一つの課題にも色々な側面がある。一昨日記事でも触れた、移転しない「場外」の状況なども含めて詳細分析し、出来る限りの納得性を目指して関係者及び識者等も含めた徹底論議を実施して頂きたいと思う。

以上