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石田純一氏と憲法

石田純一氏(62)が「野党統一候補なら出たい」という会見を行ってから数日過ぎた。野党側の対応は不明で結論は参院選後になりそう。ただし、知名度は抜群でも議員や行政の経験が全くない人物を野党第一党である民進党が正式に推すのは相当ハードルが高いと思われる。石田氏は大阪市での橋下元市長の例を挙げているが、東京都との規模の違いは大きく、また五輪と云う巨大イベントも控えており、全く政治経験なしでは常識的に考えて不安。

民進党では長島昭久氏(54)が岡田氏の求める野党共闘の枠組みでは、共産党の支持も受けることを良しとせず候補選びから離脱した。他に現時点で名前が挙がっているのは松沢成文氏(58)と古賀茂明氏(60)だが、松沢氏は自民党より右だった次世代の党で幹事長を務めた経歴を持ち、長島氏が外れるなら同様に共闘候補としては筋が通らないだろう。古賀氏は明確な反政府・反安倍側だが、報道ステーション降板劇などで今や所謂「とんでも」に属するイメージもあって露出も減っており(古賀氏は圧力の結果と言うかもしれない)、民進党として担げるレベルだろうか。

石田氏が最終的に出馬するかどうかは未知数だが、国政の参院選挙で争点として余り明確にならなかった「憲法問題」を投票前に取り上げたのは功績という声も有る。(逆に参院選前に影響を与えるのはどうかという批判もあった)

確かに会見で以下のように参院選で「憲法改正論議が隠されていることを批判していた。
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また、今回の出馬意思表明には伏線も有って、昨年国会議事堂前で行われた平和安全法制関連法案に対する抗議集会に参加し、反対を訴えていた。その際に集団的自衛権行使容認を批判し「個別的自衛権でも守れる」と主張。
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憲法に関心がお有りで、このような主張と云うことは現憲法でも「自然権としての自衛権」は認められているという見解をお持ちと推測される。これは従来の政府見解と同様と云うことになるが、当ブログでは以下の記事などで、「現憲法制定当時は『自衛権も放棄する』という趣旨だったのが9条の本来解釈」と云う事実関係を書いた。
<国会(1946年6月28日)吉田茂内閣総理大臣答弁
戦争抛棄(放棄)に関する憲法草案の条項に於きまして、国家正当防衛権による戦争は正当なりとせらるるようであるが、私は斯くの如きことを認むることが有害であると思うのであります。近年の戦争は多くは国家防衛権の名に於て行われたることは顕著なる事実であります。故に正当防衛権を認むることが偶々戦争を誘発する所以であると思うのであります。・・・>

制定審議時の吉田答弁等や、警察予備隊自衛隊創設のために修正された経過などは、ずっと前から沢山の資料が出ている。それにも関わらず、選挙に出ようとするぐらい政治に関心が有って60歳も越えた方が、少し調べれば分る経緯もご存じないことになる。
自民党系政府が(当初は諸般の事情で止むを得ない面はあったにせよ)長年続けて来た欺瞞の解釈を、自民党を批判する側が信じ込み、しかもそれを正論と思って自ら主張する。どれだけ茶番なのか。

石田氏は国民生活面の課題として、「子育て・老後」のことを取り上げていた。周囲の人の評判も出て来ているが、石田氏は本当に「いい人」のようである。不倫も有ったが、今の奥さんとの間でも二人のお子さんを授かるなどして、子育てを真剣に考えておられると思う。

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しかし、石田氏は子供たちに「憲法の虚偽解釈を続ける国」を継承させたいのだろうか。近代教育では真実を探求する姿勢が最重要だと思うが、国の根本にある虚偽をそのままにして真に子供たちの為になる教育が出来るのだろうかというのは大きな疑問。(大きな虚偽が見えないという状況は非常に危ないと思うので、新国立競技場の「ザハ案が建てられなかったのではないか」と云う問題や、流用問題での虚偽説明についても取り組んできている面がある)

また、安全保障面を蔑ろにしては政権が成り立たない。それは民主党政権時代を考えてみればよく分る。まず鳩山総理は「普天間移設」問題で躓いて退陣。その後菅総理は就任直後に起きた「中国漁船体当たり」事件の処理でミソを付けた。三人目の野田総理は「尖閣諸島国有化」で今に至る日中間の緊張状態を生み出した。なお尖閣国有化は正しかったと思うが、仮に野田政権が続いていたら、その後の尖閣周辺侵入への対処を巡って当時野党の自民党などから強烈に批判され、政権が持たなかったと推察する。(現野党の民進党は自分たちが蒔いた種だから強く批判できない)

つまり、安全保障だけはどの党が政権を担おうが、空想的な平和主義だけでは成り立たず現実を見ることが必要になる。そして軍事面を考えたら、核心として憲法9条改正を避けて通ることは困難であり、今のままを続けたら矛盾が拡大していく。しかし今回の参院選では石田氏の指摘通り与野党ともに論議を避けているから、盛り上がりに欠けて都知事選の方に注目が集まるのも当然の帰結

結局石田氏の掲げる生活面の課題はもっともであるが、それを実現する政権樹立と運営のためにも安全保障政策は根本的に重要。そして安全保障を考えて行くと、憲法改正の必要性に突き当たる。
自衛のためには何らかの実力が必要であり、「武力」と云うことになる。武力行使を行うのは常識として「軍隊」であるが、日本政府は「自衛隊は軍隊ではない」としてきた。例えば昨年安倍総理の「我が軍」発言に関しても次のような答弁書を出した。
自衛隊国際法上は軍隊」 答弁書閣議決定”2015/4/3 日経新聞
「(自衛隊は)国際法上、一般的には軍隊と取り扱われる」とする答弁書閣議決定した。「通常の観念で考えられる軍隊とは異なる」としつつ「自衛の措置としての『武力の行使』を行う組織」とした。>

自衛隊は軍隊ではない」という解釈は、現与党だけでなく民主党政権も、そして村山政権時代の社民党なども同様だった。しかし、「警察でも軍隊でも無い何か = 自衛隊」と云うことになってしまう(苦笑) それでは答弁書にもあるように国際的に通じない。
ますます進展する国際化社会において、このような論理破綻の状態を続けたまま、子供に教育を受けさせたいとお思いですか?と石田氏に聞いてみたい。論理を重視しない姿勢は、子どもの教育にも悪い。

安全保障には冷徹な思考が必須。「戦争は文化ではありせん」と前述の集会で述べておられたようだが、ご自身の有名な発言に掛けているとはいえ、情緒的な感覚主体で厳しさを増す日本周辺の状態に対処していけるのだろうか?と云う疑問はぬぐえない。

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以上
[追記]
安全保障問題と並んで、原発政策も日本の根幹に関わる大問題になっている。本文で書いたように安全保障に関しては、どこが政権をとっても従来型の憲法解釈のままでは早晩行き詰まって改正や新憲法が必要になると想定。しかし、原発政策は廃止の方が国民世論の過半数を占める可能性も有ると思う。(当方は今のところ五分五分)

それなのに何故原発廃止がもっと大きなうねりにならないか。考えてみると、原発廃止派は護憲・絶対平和主義とセットになっていることが多いからではないかと推測している。選択肢として、「原発廃止」と「9条改正」を主張にする、政権を担える可能性が有る政党が出て来ないものか。

追記以上