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都知事選と民進党

民進党蓮舫参院議員が不出馬を示唆した。
民進党蓮舫代表代行(参院東京選挙区)は18日午後、都知事選に出馬しない考えを示唆した。・・・「まだまだ国政で取り組むものがある。政権交代可能な2大政党制を作りたい」と述べた。>

「政治と金」の問題が続いたことから今度は女性候補を待望する声があることや、高い知名度から最有力と目され、本人も最初はやる気を見せていたと思うが一転断念。しかし、これは当然の帰結。国政云々も格好を付けているだけ。

同氏では五輪を控えた東京都の知事を務めるのは到底無理。当方は、民主党政権下での事業仕分け会場で実際に同氏と枝野氏が担当していた教育関係での討議場面を見た。詳細は長くなるので省略するが、両氏とも好き勝手言ってるだけの酷い内容だった。とても都知事の器ではないし、前述のように東京五輪という大プロジェクトがある時期だから尚更困難。

それでも早めに判断したのは賢明。その結果、今後一番困るのは岡田党首民進党幹部。自公が推した舛添氏の大失態だから、民進党+野党共闘で首都の知事を容易に奪取できるとほくそ笑んだと思うが、いざ取ったら大変なことになると、もう気付いたのではないか。

つまり、混迷の度を深めている東京五輪の成否の責任が民進党に来てしまう。これは非常に深刻。だからこそ蓮舫氏では無理なことを身内としてよく分かる岡田氏や幹部は、翻意を強く迫ることなく不出馬に同意せざるを得ない。

他に蓮舫氏と同じく代表代行で名前が挙がっている「長妻昭」氏も、既に出馬否定しているが、民主党政権で「ミスター年金」として華々しく厚労相に就任し、能力不足を露呈して実質更迭。とても務まらない。

一部で「自民党も乗れる候補」として期待がある「長島昭久」氏は、知名度・実績が物足りない。それでも特に自民党側から話が出てきているようである。長島氏を持ち上げて、その後民進党の保守派も離党させ、自民党に合流させるか、補完勢力として憲法改正に有利にしようという思惑ではないかと推察。長島氏は大臣経験もなく手腕未知数で、そう上手くいくかどうか。

よって、今のところ民進党側の手駒としては元鳥取県知事の「片山善博」氏が有り得るのではないかと思っている。知事2期を務めあげて行政経験があり、コメンテータとして知名度もそこそこ有る。更に今回の舛添騒動でメディア露出が増えた。地味な印象だが、その分手堅いと見られるかもしれない。

しかも、民主党政権総務相を務めており、民進党としても推しやすい。前述の五輪責任問題も、推すとはいえ民進党員ではないから、党への風当たりは弱められる。片山氏本人も出馬について明確に否定していないようであり、可能性はあるのではないか。自公も蓮舫氏では乗りにくいが、片山氏なら自公候補を出さず、実質相乗りしてしまう手法も取り得るだろう。

民進党と自公以外では、やはり橋下氏の動向と云うことになる。出る気になれば仮に片山氏との一騎打ちになっても勝てる可能性は有ると思う。しかし、今回は余り待望論が広がっていないのではないか。それでも出たら強いので、橋下氏の今後の判断は選挙戦を大きく左右することになる。

なお、ジャニーズ嵐の桜井翔君の父親である総務省の前事務次官「桜井俊」氏は、総務省でも旧郵政省の出身。インタビューで「情報通信行政をやってきただけの人間ですので、とてもそのような役を果たせるだけの器ではない」と述べているのは本音と思われ、出馬は無いと見る。逆に前述の片山氏は旧自治省出身であり、地方行政に向いた経歴。

知事選公示は7月14日で、まだ時間が有るため上記は現状での分析となり、情勢は変わり得る。しかし、五輪準備がある今度の都知事は今までになく重要であることは変わらない。個人的には総理より難しいのではないかと思うぐらい。

ところで、都知事選が急に行われる原因となった「舛添騒動」自体を批判する声がある。例えば「日本会議」を調査した本で話題になっている「菅野完」氏が以下のように述べている。
「舛添叩き」が衆愚の極みである理由”6月14日 HARBOR BUSINESS Online 
<朝野をあげて「舛添やめろ」の嵐である。・・・こうした集団リンチ(法によらずに社会的な制裁を加えているのだから、狭義のリンチにさえ相当する)に熱狂するのも気持ち良いのだろう。しかし落ちた犬を叩いて溜飲を下げ快楽を貪っている傍で、景気対策改憲など、極めて重要なイシューが争点となる参院選が刻一刻と近づいている。
  セコいオヤジを叩いている側こそが、極めてせこいレベルに堕ちいっているように思えて、ならない。>

マスコミこぞっての報道と辞任要求で固まった世論について批判しておられると思うが、当方から見ると菅野氏の見解も感情的なレベルではないかと思う。確かに報道は過熱や行き過ぎがあったことは否めず、また世論も殆どが辞任を求め続けた。しかし、客観的に考えてみると、大量報道と世論の強い批判が無ければ、自民党都議団の幹部は9月まで辞任先送りを容認しており、自公が過半数を握る都議会でそれが通る可能性が充分あった。

菅野氏は9月辞任でも良かったというのだろうか。もし「9月では遅い」という見解なら、マスコミ・スクラムと世論の高揚を非難するだけでは矛盾が生じてしまうのではないか。日本会議の本は当方も読んでみて掘り下げた調査が行われているのに、舛添騒動は残念ながら表層を見ておられるように感じる。「衆愚の極み」と決め付けるだけでは、今回の事態の重要性が見過ごされてしまうと思う。

菅野氏の主張をもっと見てみると、同氏が記事中で述べているように、<「不適切ではあるが、違法性はない」のも事実だ。>という、舛添氏やヤメ検弁護士側の主張がある。これに配慮してマスコミや世論が淡々と対応していたら、舛添氏の当初思惑通り、9月辞任どころか任期一杯努めてから選挙で判断という流れも有り得たことになる。また、違法性については「ホテル三日月での会議は虚偽記載の可能性が極めて高い」のに、相手の名前も言わないままの状況を「金額的に大したことはない」、「弁護士調査でも『会議は有った』となっている」などとして見過ごすか。

結局菅野氏は一体どのようにマスコミと世論が対処すれば良かったと言うのだろうか。上記記事の最後に<セコいオヤジを叩いている側こそが、極めてせこいレベルに堕ちいっているように思えて、ならない。>と書いておられる。しかし、「セコいオヤジを叩いている側を非難している人こそ、『自分は人とは違う』とカッコ付けているだけではないか」と云う気がしてしまう。

ただ、そうなると「自分はどうなんだ?」ということで、当方が考える事態の重さについて見解を更に書いてみる。

まず6月15日の会期末で辞職表明と云う決着が付いたのは非常に良かった。その結果として、本来はもっと早く5月中に辞任すべきだったが、ギリギリながら重要なイベントに間に合った。何かと云うと、「リオ・オリンピック閉会式のフラッグ・ハンドオーバー」(8月21日)に新知事が出席できる。知事選投票日が7月31日で閉会式まで3週間ある。当選後は都政全般で多忙を極めることになり、ブラジルまでの長旅も有るが、それでも少しは準備して閉会式に臨むことができる。
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もし舛添氏が9月までやったら、同氏が行くか副知事で代理か、と云うところだった。しかし、辞めるのが見えている知事や副知事では行っても重みにかける。新知事なら上掲写真(ロンドン→リオのハンドオーバー)のように五輪旗を振っている姿が国民皆の記憶に残り、「この人が東京五輪を推進してくれる」という認識が鮮明になる。「リオに舛添氏を行かせて良いのか」という声があったが、「ハンドオーバーには新知事に行って貰うように段取りすることが必須」というのが当方見解。

新知事にとっては、事あるごとに旗を振っている映像が流れ、責任を逃れられなくなる。前述の蓮舫氏や民進党も、ハンドオーバーは一見象徴的でも、実質的に大変な責任につながることが分って来たのではないか。

責任の具体的イメージとして一端を述べておくと、例えば今後また新国立競技場の建設費や仕様で問題が出たら、今までは「国立」だからと都側は国に下駄を預けられた。しかし、都知事五輪旗を振ったら、五輪全体の責任がのしかかってくる。しかも、もし蓮舫氏なら新国立競技場に関して追求していたから詳しいだろうということになり、すぐに「どうするんだ?」と詰め寄られる。五輪準備の一部に過ぎない新国立競技場でも立ち往生しかねないのが、今回の難しさ。蓮舫氏もこれでは立てない。

全体的な国との関係でも、民進党が推薦した知事になれば、自公は「都知事民進党が主体的にやってください」と云う態度が出て来る。国側の責任者は手腕に不安一杯の遠藤大臣だから、官邸側は望むところだろう(笑) それでも森氏の影響力は強いから、民進党として「森組織委員会委員長をどうするか」と云うことになる。もし交代させることが可能になっても、後任者も政府との調整力が求められ、適切な人材を用意できるか。また森人脈である事務局トップの武藤氏なども一緒に辞めることが考えられ、これまでの蓄積が使いにくくなるなど課題山積。

最終的に誰がハンドオーバーに行くことになるか。その前にある参院選は、消費増税が再度先送りされ、それに反対する党は殆どない。憲法改正自民党自体が「改憲草案は野党時代のもので行き過ぎもあった」などと認めている状態で、気運も盛り上がっておらず、まだ先の話になるだろう(次政権以降の課題)。結果的に今一つ盛り上がりに欠ける印象の選挙で、知事選とその後の方が見どころが多くなるかもしれない。

以上