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聖火台問題19「WT検討結果(続き)」

昨日に引き続き聖火台WT検討結果を考察。WT資料再掲。
新国立競技場の聖火台の設置場所について”平成28年4月28日 新国立競技場の聖火台に関する検討ワーキング・チーム 

まず、資料中で外部設置が「敷地内」となっていて「敷地外」が元々選択候補に入っていない。選択肢の検討は以下のように書かれている。
<3.設置場所の選択肢の検討
 過去の事例に鑑みれば、競技中の聖火台の設置場所については、(1)屋根の上、(2)フィールド、(3)スタンド、(4)外部(敷地内)が、候補として想定される。>

「過去の事例」で「敷地外」が無かったという理由のように受け取れる。しかしリオは敷地外だが、まだ開催されていないから考慮に入っていないのだろうか。或いは、昨日書いたように「敷地外だと組織委員会担当になるから避けたい」という理由も有るか。
また、「外部」についての検討結果は次のようになっている(これも内容的に「敷地内」対象と思われる)。
<(4)スタジアム外部に設置する場合
 ○スタジアム内部の観客席から、聖火台が見えない。
 ○人工地盤上に設置する場合は、荷重条件上の制約がかかる。
 ○可燃物である樹木と適切な離隔距離が必要となる。
 ○聖火台の基壇部分は、観客の避難や滞留の邪魔とならない形態・面積であることが必要になる。

昨日も検討したが、特に4番目の「観客の避難や滞留」は妨げにならないような形状や設置が出来るか? 撮影に来る観光客等の考慮はどの程度入っているのか。3番目の「樹木との距離」も緑を多くするコンセプトとの兼ね合いで適切な場所が選択可能か? 内部から聖火台が見えない点を割り切っても、外部で敷地内は技術的課題が結構多そうに思える。

もう一つの推奨である「フィールド」も、ロンドンの例があるとはいえ、写真を見ると観客席を相当削っているように見える。防火や暑苦しさの問題等もあるだろうし、WT検討は本当に大丈夫なのか(笑) 

イメージ 2

結局(1)~(4)のどれも課題は重いように思うが、以前隈氏は以下のように述べていた。
<建築家の隈研吾さんが三月九日夜、日本記者クラブで講演し、問題になっている聖火台の設置場所について「検討チームが動きだしており、方向性が出ればそれに沿った対応をしたい。いろいろな方法があるので心配いらない」と強調した。
 記者からの質問に対し、隈さんは「要求されなかったのでコンペでは提案しなかったが、ロンドン五輪などの例から、競技場の中に置く可能性が高いと思っていた」と説明。現在の計画では、スタンドは木材を使った屋根で覆われる構造となっているが「屋根の縁は鉄でできており、火は燃え移らない」。聖火台の設置が消防法上問題となる懸念については「安全な場所に置くことを条件に(消防法の)制限を解除してもらうことになる」と話した。
 隈さんはこの日、日本林政ジャーナリストの会に招かれて講演した。>

改めてこの発言を見てみると、ロンドン五輪の例を挙げているから「フィールド内」を想定していたようである。
しかし、「屋根に火は燃え移らない」とか「消防法の制限解除」などの「どこにでも置ける」ことを示唆する主張に関しては、WT検討結果で<消防関係法令の規定により屋根との間の空間確保が必要となるため、スタンド上部に設置することは困難>としていて、スタンドは推奨から外している。もはや「コント?」と言いたくなってくる(苦笑)

さらに、スタジアム設計家上林氏までもが産経新聞5月4日記事で次のように言っておられる。
<「新国立が木を使っているので、消防法上の関係で聖火台を置けない」との意見がありますが、日本ではその他にも囲炉裏や火鉢をつかうなど、木造建築の中で火を扱うことは当然のこととして行われてきました。現代に至っては、耐火木造や不燃材の開発が進んでいるので、聖火台そのものを設置すること自体は、それほど難しいものではありません。

同記事を見てみるとWTの話が一言も出て来ないし、どうもWT検討結果を見ていない段階で記事をお書きになったようにも推察される。4月28日には「フィールドか外部を推奨」は報道されていたが、記事に間に合わなかったのだろうか。4月末までにWTが方向性を出すことは前から言われていたから、どうにも解せない。

また、「演出次第」と云う件に関して、隈氏は<「聖火台は『どこにでも置ける物』だと思っている。演出家が決まらない今の段階で大騒ぎするよりも、開会式の演出が決まったときに議論すればいいのではないか」>とのこと。
また上林氏も<あらかじめ「聖火台は演出の一部なので、どこに設置するかは決まっていませんよ」とアナウンスをしておけばよかったのかもしれません。>としている。
しかし、前述のように「どこにでも置ける」はWTから否定された形。

WTの演出に関する見通しは、<大会の2~3年前に組織委員会がセレモニーの演出チームを編成し、検討を開始>としている。3年前だと来年となる。そこからすぐに検討するとしても、新国立の工事は進んでいる時期。フィールドでも外部(敷地内)でもガス配管等の設備は地下になり、危険物だし基礎の段階から考慮必要になるだろう。
納期が厳しい中、少しでも早い決定が望まれるのは当然だが、演出の構想が決まるのは来年末から再来年ぐらいと想定される。建設工程に影響が出ないとは思えない。その点では森氏の発言<(組織委員会は)与えられた競技場、与えられた聖火台を基に考えるしかない>も或る程度納得性がある。技術的・納期的に可能な幾つかの案をJSCと大成チームが組織員会に示して擦り合わせ、後は演出を組み合わせて最終的に決定するという流れが妥当。建設側が演出検討を待つことにしてしまうのは、単に先送りの意味しかないと思うが、上記産経新聞記事でも引き合いに出されている「ビートたけし」氏までもが的外れなことを言っていたのは笑えもしなかった。

結局建設の事情だけでは決まらないし、演出だけで決められるものでもない。その他の事情も含めて総合的に検討して調整しながら決めていく。このごく当たり前の事が容易に認識されないのが今の日本の状況と思うと、空恐ろしくなる。そういえば遠藤大臣は「4月中に中か外かぐらいを決めることになる」と言っていたが、それさえ決まらなかった(苦笑) 

またWTの官僚たちの検討も情けない。昨日書いたように本来1週間もあれば出来るような内容を長々と時間を掛けている。具体的に検討内容を検証してみると、WTの議事資料にある検討表は4月8日会合までは以下のように3項目だった。
イメージ 3

組織委員会が望んでいた、内外から見える「スタンド上部」の位置付けがハッキリしない比較表になっている。それで当ブログ検討では屋内を「フィールド及びスタンド内」と「とスタンド上部」に分けて4項目にしてみた。WTの方も4月28日会合で最終的に「(1)屋根の上、(2)フィールド、(3)スタンド、(4)外部(敷地内)」と分け方は少し違うが4項目として、(2)(4)を推奨する形になった。しかし、昨日も言及したように外部なら「敷地外」も検討に入れる必要があると思う(個人的には外苑敷地内のどこかはどうだろうか)。また、「スタンド」も上部と観客席内では、外から見えるかどうかが全く違ってくるので一緒にするのは適切ではない。総合すると少なくとも以下のような検討項目が必要ではないか。
イメージ 4

結果的に、聖火台位置が問題になった当初に組織委員会が優先順位高く要請していたはずの内外から見える「スタンド上部(②)」は外された。これについても、どのような経過で議論されたか議事録もなく、WTまで設置して長々やった割には検討不足の感が有り今後の展開を注視。

以上
[追記]
A案決定翌日の昨年12月23日記事で、上林氏がA案優位の例として次のような結果を示しておられることを以前紹介した。
<図面寸法から計算したところ、スタンドの最上段席とフィールドの端を結ぶ直線距離は、A案が約79メートル、B案が約85メートル。A案の観客席全体がフィールドにやや近い結果となった>

これについて当方でも確認してみたところ以下のようになり、当方のやり方が合っているとすれば大体ご趣旨通りになっているようである。

イメージ 1

ただ、これから思うのは、設計家であられるから色々なソフトもお持ちで使い方も熟知しておられる。それで流用性検証の作図はGW明けになるというのも、お忙しいとはいえ解せない面も出て来るが、結果をお待ちしたいと思う。

追記以上