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「上林功」氏見解に関して(9)

昨日2度目に頂いたコメントとそれに関連する以前コメントについて回答させて頂きます。
< >何故、従来行われている権利譲渡が今回だけ権利譲渡が行われていないと考えるのか。お応えください。>
これは4月19日に頂いたコメントに関連すると思います。
----4月19日コメント引用開始----
>「当方としてはやはり本事案が従来例の延長にとどまらず、新しい解釈や考え方を生み出す可能性も有るのではないかと柔軟に考えています。」
ブログ主様より紹介いただきました記事も読みましたが、上記確信にいたった決定的な理由がよくわかりません。ブログ主様の考えに沿えば、JSCは旧コンペ参加者に対して知的財産権に関する大幅な譲歩をしていることになります。国が損をすることをわざわざ行なうようには思えません。あえて国がコンペ参加者に有利になるような条件を示したのかについてブログ主様が確信に至った理由を伺いたいと思います。
----引用終了----

まず基本認識ですが、引用の中にある当方文章では「新しい解釈や考え方を生み出す可能性も有るのではないか」としていますが、冒頭の貴殿ご質問文章では「今回だけ権利譲渡が行われていないと考えるのか」となっています。当方は、「可能性が有る(のではないか)」という見方ですのでよろしくお願いします。
これで逆に考えますと、貴殿は「権利譲渡が行われている」と断定されているのでしょうか?という質問にもなります。貴殿の見方は「譲渡が行われている」と「譲渡が行われている可能性が有る」のどちらでしょうか?

続いて理由の方ですが、当ブログ4月19日記事の当該部分は以下のようになっています。
旧計画は国際コンペでしかも監修者を選ぶという特殊な条件でした。槇文彦氏も、<私はこれまで15、16ほどの国際コンペの審査を受け持った経験があるが、監修者のみを選んだのは新国立競技場で初めて見た>とのこと。このような事情から、「これまでの国内中心の事例の経験が当てはまらない部分が出てくる可能性が有るのではないか」という予測による見解が当方の前提にあります。>

最初の「旧計画は国際コンペでしかも監修者を選ぶという特殊な条件でした」については、貴殿もご認識されていたとのことです。次に槙文彦氏の<・・・初めて見た>という引用を入れました。その後に「このような事情から、『これまでの国内中心の事例の経験が・・・」としました。

つまり、貴殿もご認識の「国際コンペで特殊な条件」と、経験豊富な槙氏も「初めて見た」と云うことですから、「これまでの国内中心の事例の経験が当てはまらない部分が出てくる可能性が有るのではないか」という予測に至った次第です。

更にもう一つ大きな理由があります。相手がZHAということです。これに関連して4月20日に頂いたコメントを引用します。
----4月20日コメント引用開始----
>「ZHAが手放すか?」
こちらは想定することがおかしい事です。手放さないなら槇文彦先生同様コンペに参加しないはずです。「ZHAに押されっぱなし」とありますが、本当ですか?ZHAが優勢であるのであればその根拠を教えてください。通常、知財についての裁判は情報を漏らさない方が優勢になるケースが多いと思います(個人的経験の範囲ですが)。
>どの記事か?
こちらに聞かれても困ります。
>>「当方としてはやはり本事案が従来例の延長にとどまらず、新しい解釈や考え方を生み出す可能性も有るのではないかと柔軟に考えています。」
頂いた記事を読みすすめていますが、上記に至るブログ主様の根拠が具体的にわからなかったため伺った次第です。もしかしたら当方で見落としがあるかもしれませんので、ブログ主様が決定的と考える記事を御紹介いただけると幸いです。
----引用終了----

まず、「槇文彦先生同様コンペに参加しないはずです」という部分ですが、ここで槙氏の名前が出ていても、前述の当方根拠の一つにした槙氏引用は出て来ないまま、「根拠が具体的にわからなかった」とされているので困惑しました。
ZHAに関しては、<「ZHAに押されっぱなし」とありますが、本当ですか?ZHAが優勢であるのであればその根拠を教えてください。>となっています。そして<頂いた記事を読みすすめていますが、・・・>と述べられています。
当方がご紹介した記事として以下があります(4月16日当ブログ記事でご紹介)。
 ・当ブログ昨年1月15日記事”文芸春秋2015年9月号記事全文
この中に以下の記述が有ります。
----文芸春秋記事引用開始----
東京が招致に成功すると、ザハ氏はデザイン案採用だけにとどまらず、JSCに「設計にも関与させてほしい」と要求を突きつけたという。
 JSC広報室が説明する。「ザハ・ハディド・アーキテクツより基本設計を行いたいと申し出があったのは事実です。しかしながら公募型プロポーザルで選定することが決まっており、直接随意契約することは困難なためお断りしています」
 ところがそれでもザハ氏は納得せず、結局、JSCと基本設計の「デザイン監修業務」を契約することに成功する。これが、設計段階でいくら難点が顕わになっても、ザハ案が維持され続けた大きな理由だ。・・・
 ザハ氏側から『うちのデザインを生かすには、アラップ社の優れた構造計算の力が必要だ』と口添えがあり、設計JVに組み込んだ・・・>
----引用終了----

ZHAはデザイン監修者にとどまらず、「設計にも関与させてほしい」と要求して、JSCが断ったにも関わらず押し切って設計への参加を勝ち取っています。また、アラップも設計JVに組み込ませています。なお、「基本設計の『デザイン監修業務』を契約することに成功する」となっていますが、デザイン監修は基本設計のみならず全体に及びます。しかも元々決まっていたことですから強引にやらずとも契約できるため、これは本来のデザイン監修契約とは別に設計まで踏み込んだ契約が存在したと推測しています(これに譲渡契約が入っていたとも思えません、JSCがやらせたくなかった設計参加を押し切るぐらいですから、JSCが言うことを聞かせるのは困難でしょう)

このように、<「ZHAに押されっぱなし」とありますが、本当ですか?ZHAが優勢であるのであればその根拠を教えてください>については紹介させて頂いた文藝春秋記事に記述があります。(現時点では既に当該文芸春秋記事をお読みになっておられるでしょうか?)

また、文藝春秋記事は匿名ですが、貴殿も言及されていた日経アーキテクチャでは当時ZHAの日本人スタッフが実名でインタビューに応じています。
ザハ・ハディド事務所として譲れなかった条件は、当初提案したデザインを守ることではなく、プロジェクトとの関わりを絶やさないことだった。そうした意味では、JSCや設計JVを含めて、私たちの希望するデザイン・コントロールはできていた。>(P2最後)

「デザイン・コントロールは出来ていた」と述べています。ZHAは「当初デザインを守ることではなくプロジェクト関与を絶やさないこと」が譲れない条件で、実際に設計にも参加して前半は主導もしていることからして、この場合のデザインは意匠のみならず設計も含まれているでしょう。それをコントロール出来ていたのだから、ゼネコンが入って外されたようになる前までは、ZHAは優勢だったというように当方は捉えています。

続いて昨日2度目コメントの以下部分。
<但しこれでも知的財産権の対価として、放棄によって減免される報酬は知的財産権の価値に比べれば微々たるものだと考えます。>

「対価」や「報酬」となっていますので、経済的合理性に基づく比較を行う場合は、やはり具体的金額がざっくりでも必要でしょう。その前に当方が述べてきた「使用許諾と譲渡の差」について考えてみます。相対契約になりますから明確な基準等は当然有りませんが、例えば商標権の例では以下記事で<通常使用権の相場は売り上げの3%から5%、専用使用権は10%程度だそうです。>としています。

これからの類推で、かつ専用使用権を譲渡に類似とすれば、前述の使用許諾と譲渡の差も2~3倍程度と仮定できると考えてみます。新国立競技場旧計画は、当初でも1300億円、実施設計承認の際には約2500億円もの高額でした。使用許諾でも億を超えると想定すると、仮に1億円として(これは1300億円に対しても0.1%以下で安いと言われそうですがあくまで仮です)、譲渡が2~3倍とすれば差額は1~2億円。これを明確に上回る譲渡の場合の資産価値としてどれぐらいの資産額を想定されますでしょうか? それはどのような計算方法になるとお考えでしょうか?少なくとも単に「金額に換算できない価値」などとするだけでは会計検査等を通らないと思われます。

以上が本日回答になりますが、前述の”貴殿の見方は「譲渡が行われている」と「譲渡が行われている可能性が有る」のどちらでしょうか?”という件に関連して以下のような記事が有ります。写真週刊誌「フライデー」ではありますが、ZHA側に直接取材しています(但しザハ氏直撃となっていますが、実際は事務所の広報担当を通しています)。直接取材記事としては最新かそれに近いと思われます(本年3月4日号)。この中で、「JSCが新たに作成した契約書」(当然「案」でしょう)の内容として以下が書かれています。
----フライデー記事抜粋開始---
ザハ・ハディド「100億円訴訟へ!」 「怒りは頂点に達しています」”
JSCが新たに作成した契約書には、次のように書かれているという。
新しい勝者(隈健吾氏)は、著作権に関係なく、当初の設計のいかなる部分も使うことを許される
<追加の料金を払わずに設計に変更を加えることもできる。ザハ・ハディド氏はそれに対し一切の異議なく同意しなければならない>
ザハ・ハディド氏はJSCの評判を傷つけようとするいかなる行為もしてはならない>
----抜粋終了----

<当初の設計のいかなる部分も使うことを許される>と云うことをJSCは求めていて、「ZHAからJSCへ権利譲渡済みとは想定できない」ような記述ですが如何でしょうか?
ちなみに、譲渡済みを示すような報道は当方として今まで見たことが有りません(もしそのような記事をご覧になっておられればご教示ください)。
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なお、2度目コメント冒頭では貴殿の基本的な考え方が以下のように述べられています。
<私の基本的な考え方として、国が通常行っている公共工事と同様の手続き、もしくは手続きの元となる原則を変えずに契約をおこなっている・・・>
これについては明日当方見解も書かせていただこうと考えています。その際の参考用として、<私の知る2000年度以降の国の公共工事において権利譲渡が行われなかった建築はありません。>となっていますが、これは大体何件ぐらいの例でしょうか? また外国の設計会社や建設会社が受注した例は含まれていますでしょうか?

以上