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「上林功」氏見解に関して(5)

昨日もコメントを頂き感謝。昨日コメント全体について検討してみていますが、項目(オ)について重要な内容が有るため本日はこの項目に絞って記します。

<(オ)です。ひとまず建築設計業務契約約款に記載されている著作権にかかる抜粋です。
著作権の譲渡等)
受注者は、成果物(第36条第1項に規定する指定部分に係る成果物及び同条第2項に規定する引渡部分に係る成果物を含む。以下この条において同じ。)が著作権法(昭和45年法律第48号)第2条第1項第1号に規定する著作物(以下「著作物」という。)に該当する場合には、当該著作物に係る受注者の著作権著作権法第21条から第28条までに規定する権利をいう。)を当該著作物の引渡し時に発注者に無償で譲渡するものとする。
公共工事の発注にかかり、以上の内容が付されている場合が多い、というのが産経記事の具体的内容です。私の経験上、上記の約款以外として「発注者と受注者の共同による著作権保有」などもありますが、「著作権は受注者に帰属する」とした権利譲渡については国の工事の場合では見たことがありません。国への著作権の譲渡がなければ、税金で一建築家の作品をつくってあげることになってしまいます。ありえないことだと思います。>

→「公共工事の発注にかかり、以上の内容が付されている場合が多い、というのが産経記事の具体的内容です」ということで、記事の前提条件が認識できました。
そうなると、旧計画(ザハ案)の方では「国際コンペ募集要項」の最後に付いている「確認書(案)」に以下の記載が有ります。
イメージ 1

更に抜粋して必要部分をテキスト化。 (甲:JSC 乙:最優秀者=ZHA)
<第6条 最優秀作品の著作権は、乙に帰属する。
2 乙は甲に対して、以下の目的のために、最優秀作品を複製し使用する権利を期間の制
限なく無償で許諾する。以下の目的を実施するに必要な範囲で、甲は第三者に対して再
許諾することができる。
(4) 新国立競技場の基本設計及び実施設計 >

この規程だと、「基本設計及び実施設計における著作権の帰属」は取り決めに含まれていないと推定されます。しかし、ZHAからJSCに最優秀作品(ザハ案)を複製し使用する権利が無償で許諾されるのは目的が限定されています。設計面で入っているのは、「新国立競技場の基本設計及び実施設計」になります。また、「再許諾」は、別途公募する日本の設計会社に「基本設計及び実施設計」を担当させるというJSCの意図に関連する取り決めと想定されます。

これからすると、日本の設計会社が入る「基本設計及び実施設計」の著作権帰属に関しては別途取り決めが行われたと推測されますが、ザハ案をJSCが使用できる対象は「新国立競技場」に限定されるというのが根本的な取り決めになると思われます。

しかし、「新国立競技場」の建設計画はザハ案を使用していた「旧計画」と、新コンペによる「新計画」に分かれました。その過程でJSCはZHAと契約解除しましたが、上記確認書の効力がどうなったかは公表されていません。
それでもZHAが「無償許諾範囲は自らの案を使用した旧計画の新国立競技場に限定されている」と強く主張することは当然と思われます。新計画に移行することは当初段階で全く予測されていなかったため、その主張は妥当と思われ、JSCもそれを分っているから交渉していることが想定されます。

ということで、産経記事を書かれた前提とは変わってくる面も有りそうですが、いかがでしょうか?

なお、最優秀作品(ザハ案)に著作権が認められるのは、まず間違いないでしょう。修正案は有りますが、それも最優秀作品から出来たもの(更に修正案にもZHA参加)。それらを元に基本設計・実施設計が行われるので、基本的には個々の機能が著作権で保護されるかどうかを越えて、ザハ案を元に行った設計に対して包括的にZHAは権利主張が出来るようにも思えます。これは非常に強力な取り決めで、鬼澤理事(当時)の心配もこれを根拠にしていたと想定すると、「杞憂」ではなく現実的な懸念だったということになりそうです。

以上
[追記]
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追記以上