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白紙化経緯検証(上)「槙グループ提言複数回」

昨日記事で2015年6月1日付けの「槙グループ提言」を取り上げたが、同グループ提言は7月17日の白紙見直し表明までに後2回、計3回行われていた(7月末の新計画への提言は除く)。
未だ謎が多い白紙化経緯の中で、当方として疑問を抱いてきた「下村大臣のザハ案見直しに関する一連の発言」を解明する手掛かりになりそうなため、「白紙化経緯検証」として3回に分けて掲載する。

まず、文部科学省が昨年8月7日検証委員会第一回会合に提出した資料において、前述の6月1日付提言(第1回とする)に関する同省側の工期検討結果が付されている。
<○ 平成27年5月29日(注:提言書は6月1日付だが提出はこの日の模様)
槇文彦氏らがデザイン等の代案について提言。
代案の問題点としては、①新たなデザインの基本設計及び実施設計が11ヶ月と短期間であること、②許認可等の手続きが超法規的措置による前提であることが挙げられる。
なお、設計者によれば、新たなデザインによる所要期間は、基本設計6ヶ月(FW設計を除く)、実施設計9ヶ月、建築確認4ヶ月、工期42ヶ月、計61ヶ月で、6月から開始すると工事完成は2020年6月となり、ラグビーワールドカップ2019の開催には間に合わないとの試算であった。

文科省側はラグビーW杯に間に合わない」としている。「設計者によれば」となっているから、JSC経由で設計JVに検討させたのかも知れない。しかし、重要なことは2020年6月だと同年7月の五輪も準備期間的に全く無理で、下村大臣もこの案は採用できなかった。

その後、第2回提言は7月1日に行われた。
<新国立競技場の建設で、巨大なアーチで屋根を支えるザハ・ハディド氏のデザインに反対する建築家、槇文彦氏らのグループは1日、下村博文文部科学相あてに、改めて計画見直しを要望する提言を発表した。
 提言では、下村文科相が先月22日、槇氏らが提案したアーチなしの案を検討すると会見で発言したにもかかわらず、その後連絡もなく、現行案で進める方針を表明したことを問題視。
 基本設計時から約900億円も膨らんで2520億円になった建設費を圧縮するには、アーチなしの案に変更すべきだとし、見直しの設計期間が足りない場合、2019年秋に新国立競技場を使用する予定のラグビーW杯は別会場で行うべきだと主張している。>

前述のように下村大臣は第1回提言を採用しなかった(出来なかった)ため、再提言が行われた。注目されるのは槙グループも、「ラグビーW杯は間に合わなくても他会場を使用し五輪を目指せば良い」という考え方を打ち出している。

第3回は7月6日だった。
”<新国立競技場>槙氏ら建築家グループ、代替案を再提言” 7月6日 毎日新聞 (リンク切れ)
<2020年東京五輪パラリンピックの主会場とする新国立競技場の建設で、槙文彦氏ら建築家グループは6日、開閉式屋根と、それを支える巨大な構造物(キールアーチ)をやめる代替案が「最善」と改めて強調した提言書を下村博文文部科学相に提出した。文科省の管轄で建設主体の日本スポーツ振興センターは7日に国立競技場将来構想有識者会議を開き、総額2520億円となる現行案の実施設計の承認を得たうえで、施工業者との契約に移る方針。
提言では代替案が最善とする理由として、文科省が現行案で建設を固めた際に説明した内容に対して、槙氏が見解を提示した。まず文科省は新たに設計をやり直すと最短で19カ月かかり「19年9月開幕のラグビーワールドカップ(W杯)に間に合わない」と説明した点に反論。槙氏は設計の期間を「10カ月」と提示したうえで、工期を工夫すればW杯に間に合わせることは「十分に可能」と反論した。
さらに間に合わない場合でも「ラグビーW杯は、東京五輪のように国民の総意によって決定したわけではない」と主張。 ラグビーW杯の主会場を、日産スタジアム横浜市、約7万2000人収容)に移すことも選択肢の一つとして提案した。 
また、文科省が懸念した国際関係にも言及。現行案をデザインした建築家のザハ・ハディド氏との間に生じる「訴訟リスク」について、槙氏は建設費などを理由にデザイン変更したシドニーのオペラハウスなどを例に「施主が契約を終了させることは国際法上、問題はない」と指摘した。 >

文科省の想定設計期間「19か月」に対して「10か月」を打ち出し、ラグビーW杯にも間に合うという構想を示した。ただし、第2回提言と同様にラグビーW杯に間に合わないことも想定して、日産スタジアムを選択肢に挙げている。
7月7日に有識者会議が予定されている中で、第2回からすぐの会議前日6日にも提言していることは、「どうしてもザハ案を葬る」という非常に強い意志があったように推察される。一体どのような背景が有ったのか。グループの方々からも、このまま説明されないのだろうか。
なお、「訴訟リスク」については結果的に現在問題になっているが、槙グループの提言では「ザハ案流用」は触れられていないようである。ただし、「監修抜きの日本チーム」と露骨にZHA外しを画策しておいて流用は無い、と個人的には推測している(A案における無許諾流用は本来あり得ない行為)。

((中)に続く)
以上
[追記]
皆さんの中にも同様の印象をお持ちになる方も多いと思うが、第1回提言にある図がショボすぎる。手書きは有りとしても、著名な建築家の方々が集まって政府に提出した公式書類の図としては、どうもイメージが合わない。

イメージ 1

これについても「何故このような図だったのか?」について、槙グループから説明頂ければとずっと思っている(笑) もしかすると、提言が出された背景や事情とも絡む何かが有るかも知れない(例えば非常に急いでいたとか)。

追記以上