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週刊ダイヤモンド4月4日記事について

昨日以下の記事がダイヤモンド・オンライン(DO)から出ていた。最後の部分を引用。
新国立競技場、隈案に決定の裏に利権の闇” ダイヤモンド・オンライン  4月4日 
<つまるところ、JSCは都市計画変更にまで言及したチャレンジングな伊東案ではなく、地味だが堅実な隈案を選択したというのが真相のようだ。ここに工期で差がついた最大の理由があると考えられる。
  審査結果の是非は別に、なぜ人工地盤の縮小案や議事録を黒塗りにする必要があったのか。JSCは明言を控えたものの、黒塗り箇所が「人工地盤の縮小」だったことを事実上認め、「表に出すと利害関係者との調整ができなくなるのが理由だ」と答えた。
  どの審査員がどんな点数をつけたのかも明らかにされない不透明さがあるからこそ、伊東案が、都市計画をベースに神宮外苑地区再開発をもくろむ勢力に嫌われたという疑念が膨らむ。
  事の真相は不明だが、状況証拠を並べる限り、再開発案件と新競技場デザイン審査という、一見バラバラに思える点が一つの線でつながっているように映る。

結びの部分は「事の真相は不明だが、状況証拠を並べる限り…」となっていて、あやふやなことを自ら認めている(笑) そして、審査に関しての「証拠」なら、皆さんもご存知のもっとしっかりした証言がある。審査員香山氏が告発している「仮採点問題」。同氏のインタビュー記事では以下のようになっている。
<新国立競技場の新整備計画の事業者選定では、「A案」が勝者となった採点の前に、審査委員が“仮採点”を実施していた。委員の1人である香山壽夫・東京大学名誉教授は「仮採点では特定の審査項目で、A案とB案に大きな差はなかった」と明かす。>

このように香山氏は「大きな差は無かった」と言っているのに、DO記事では<チャレンジングな伊東案ではなく、地味だが堅実な隈案を選択した・・・。ここに工期で差がついた最大の理由があると考えられる。>となっている。両者の違いを考えてみると、DO記事は仮採点ではなく本採点(工期で27点差)をベースにして考えていると想定される。それに対し、皆さんお分かりの通り、仮採点から本採点(実際はインチキ採点)になって工期に差が付いたのは、「A案に勝たせるための採点操作があったからではないか」と香山氏は示唆している。

よって、DO記事の<再開発案件と新競技場デザイン審査・・・が一つの線でつながっているように映る>というよりは、「採点操作」というもっと直接的で悪質なことが行われていたというのが香山氏証言から推察される状況。ただし、「再開発案件」に関しては、何らかの利権めいたものがあっても不思議ではないだろう。それでも、A案の選択は別の理由で最初から決まっていた。

それを述べる前にDO記事の署名を見てみると、<週刊ダイヤモンド」委嘱記者 大根田康介>となっている。同記者を検索してみると、随分前から新国立競技場問題を追っていて2014年の記事も有るが、昨年7月28日に同じく週刊ダイヤモンドで以下の記事を書いている。
<地権者の間では「コンセンサスが取れている事案は何もない」というが、周辺には新たな商業施設、オフィスや住宅など、およそスポーツ振興とは関係ない施設ができるかもしれない。ただ、今回の見直しで地区計画も白紙になる可能性がある。そうなれば、再開発を当て込んでいた関係者は泣きを見ることになる。>

同記者は再開発の裏側をずっと追っているから、それに合わせこむ形で新コンペ審査を解釈しようとしたのではないか。それに対して、「最初からA案に決まっていた」という話の方に入る。
2015年8月7日衆議院予算委員会」で下村大臣が以下のように答弁している。
槇さんたちの案はラグビーワールドカップも間に合うということでの見直し案だったんですが、さらに精査しても、私としては、ラグビーワールドカップにやはり間に合わないのではないか、また、そもそも、オリンピック・パラリンピックにも、見直しをして本当に間に合うのかどうか、これについては、その六月の時点で確信がはっきり持てませんでした。そういうことを受けて、総理からさらに研究を進めてほしいという指示がされました。
  総理には随時状況については報告しておりましたが、七月の十七日になって、私の方から総理にはっきりと、事業者選定までで約半年間、それから、設計から工事完成までで五十カ月強、これをスキームとして考えれば、七月中に見直しを判断すればぎりぎり二〇二〇年東京大会に間に合うという報告を七月の十七日にしたところでございます。>

まず槙氏の代替案も6月時点(中旬)で精査してみると「五輪にも本当に間に合うのかどうか」という状態だった。更に上記には無いが7月7日時点でも、まだザハ案で有識者会議が承認しており、7月17日になって「五輪に間に合う」という報告がなされたという。
単に努力目標だけでなく、確証がないと安倍総理はOKしなかったから、相当詰めた工期検討になっていたことは間違いない。官邸チームとゼネコンによって、水面下で工期実現可能な設計構想が出来ていたわけで、それが今から考えてみると「ザハ案流用」して設計期間を短縮し確実性を高めた設計。結果的に官邸チームの段取りとして、「ザハ案流用」の提案が採用されることは事前に決まっていた。JSCの「旧計画成果活用」意向もそこから出てくる。採点操作は、国交省人脈で固めた審査委員会、その中でも中心の複数或いは個人が意を受けて、JSCの誰かと組んで行ったと推測(そうしないと説明がつかない)。香山氏は、気が付かないか、告発するようなことはないと思われていたのではないか。

更に追加情報として、昨年12月朝日新聞がリーク記事と思われる内容で、白紙見直し表明前に「大成建設社長らが官邸に呼ばれた」ことを報じていた。
< 国立競技場建設問題が過熱していた7月14日。大成建設の村田誉之(よしゆき)社長らが首相官邸に呼ばれた。
デザインを変更して業者選定をやり直した場合、東京五輪に間に合うのか。関係者によると、官邸の疑問に対し、大成側は2019年のラグビー・ワールドカップ(W杯)が別の会場で実施されるなら大丈夫だと伝えたという。その3日後、安倍晋三首相が白紙撤回を表明した。>

大成の社長が「大丈夫」と答えたのは当然一般論ではなく、官邸チームと詰めた結果。安部氏は和泉補佐官から聞いた話を、大成に最終確認して決断した流れと考えられる。そして白紙見直し発表自体は17日だが、実際は14日に大筋決定したから15日にはザハ案撤回報道が流れた。
このような経過があるので、JSCが人工地盤撤回を嫌がっていたとしても、もっと根本的にB案の中に人工地盤の件が含まれていようがいまいが、新コンペ公募前から大成に決まっていた。特に社長が重要な時期に官邸訪問していたというのは決定的。利権は闇の中かも知れないが、大成への事前決定は明確だった。熱心な大根田記者には利権関係だけでなく、検証委員会が制約されてしまった白紙化経過をもっと取材・報道してもらえればと思う。

以上