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聖火台問題15…WT第1回資料、及び追記「現状概略分析」

昨日は「聖火台検討WT第2回資料」で挙げられている候補位置①~③に、前回大会相当位置④は当てはまらないようだという考察を行った。それで遡って「WT第1回資料」の比較表を見ると以下のようになっている。
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表中でシドニーアテネ・北京の各大会は視認性が内外とも「○」になっていて、組織委員会が一番望ましいと言っている条件を満たす。ただし、北京は屋根の側面に取り付けられていて、実際には中から見えないエリアが多くなる。それでも例えば観客席の半分ぐらいからは見えるとしたら、「中からも見える」と云うことで「○」になった可能性有り。しかし、結局は死角が多いから現実的には採用しにくい方式と思われる。
シドニーアテネを見てみると、上表で両方とも設置場所が「サイドスタンド上部」となっている。写真では以下の位置になる。
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サイドだけでなくメインやバックスタンドの可能性も有りうるので、「サイドスタンド上部」からサイドをとれば、「スタンド上部」となり、NHKと日刊スポーツ見出しの「競技場上部」と同じ意味になると思われる。また、前回大会相当位置④とも同様になると想定される。そして「スタンド上部=競技場上部=④」は内外から見えて組織委員会の要望を満たす。これでようやく辻褄が有ったようである(笑)
ただし、WT第2回資料の①~③には上手く当てはまらないことは変わらないので、同資料は適切ではなかったと云う事か。また、既報のように消防法の規定で聖火台の周囲と上方にスペースを取る必要があり、「競技場上部(④)」になると木造屋根のA案でどういう対応が可能だろうか。

更に上掲写真のシドニーアテネは点火部分が移動する方式になっている。シドニーはフィールドで点火した円盤状の聖火台がスタンド最上部まで自動で移動し、下から出て来た支柱と合体した。アテネの聖火台は支柱が大きく折れ曲がって点火者に近づいて点火された
東京ではシンプルに行くか、或いハイテク国の実力を見せるような仕掛けをするか。また、シドニーアテネは、聖火台の周囲に屋根がないから出来た仕掛けと言える。もし全周に屋根があるA案で仕掛けをする場合にどのような方法があるか。これら課題を今から詳細に考えるのは難しく、先ずは4月末までに概略方針のみ決めることにしたと思われる。一方、防災面検証や、もし仕掛けをする場合はスタジアム設計に影響する可能性もあるから、早い決定が求められてジレンマに陥りそうである。

なお、過去3回の日本開催五輪における聖火台比較表もWT第1回資料にある。
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設置場所だけでなく費用負担の項目も有る。この中で馳大臣も言及していた長野は「東京ガス」が負担した。今回もスポンサーから聖火台費用を出してもらうことを政府・組織委員会は狙っている可能性大。費用高騰批判をかわすために、今はスポンサーを決められなくても道筋だけでも付けるためにも時間をかけていることは考えられそう。

以上
[追記]現状概略分析
皆さんもご覧になっていると思われるが、新コンペ関連で重要な記事が出ている。
まず伊東氏が日刊ゲンダイで<ここまで偶然に一致することはあり得ません>と明確に述べている。
<似ているというより、(ザハの)プランニングを借用していると言っていい。彼女の案を下敷きにして外観だけ変えたと言われても仕方ない。ここまで偶然に一致することはあり得ません。>

毎日新聞は審査採点の情報公開結果が個別採点黒塗りだったことを紹介。香山氏も引き続き疑惑をコメント。
毎日新聞が事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)に情報公開請求したところ、審査した委員7人の個別採点は全て黒塗りにされた。>

このような踏み込んだ報道が続くと、「もしかすると何か起きるかも知れない」という気もしてくる。他方、猪瀬直樹氏のように最近の著書でも「正義」を掲げながら、現実は「レールが引かれてしまっている」とあっさり流してしまう、ご都合主義もある。報道も安直な方に走って、このまま追及もフェードアウトかと思いきや、一部メディアながら上掲のようにまだ勢いは有るようだ。

今後はどちらに展開していくかは分らないが、単にご都合主義で片付かないのは「新国立競技場問題の特殊性」が有ると思う。一般的に国レベルでも不祥事は「よくあること」と言えると思うが、本問題の特殊性は「虚偽が明白でネット公開されている」という点にあると考える。証拠となる建築図面の詳細がネット上で公表され比較可能というネット時代ならではの状況がある。その上で、伊東氏・森山氏、そして当ブログなどの比較結果もネットで示され、内部構造の「流用」認識は容易。それにも関わらず隈氏は全否定を続けている。
そこに審査採点疑惑が重なってくる。これも審査員自身が告発している形になる異例の事態。

これらの状況を一部メディアしか伝えず、それを見た国民も関心を示さず、結果的にスルーされていくなら「日本社会全体がご都合主義なのか?」と云う問いになっていくと思う。
しかも、この問題は国内問題にとどまらない。既にザハ氏のインタビューは英米の新聞等に何度も載っているが、他にも以下のようにブラジルのサンパウロ市で発行している日本語新聞「ニッケイ(日系)新聞」の今年1月記事の中で最後のところに皮肉な?言及がある。
ジャパンハウス=パ大通り52番に開設決定!・・・” 2016年1月19日 ニッケイ(日系)新聞(ブラジル)
<広報施設ジャパンハウスの設計デザインを担当する隈研吾さんは、新国立競技場の新たな整備計画案に採用された建築家として、一躍日本で有名になった。先月末に同氏は現地視察のため来伯しており、中前隆博在聖総領事とも面会したとか。「『素晴らしい建物にしたい』と意欲的な様子だった」という。現在は採用された計画案が盗作との疑惑を持たれ、会見で否定するなど目下話題の人物だ。彼が話題を振りまけば、ジャパンハウスにも関心が及ぶかも?>

五輪までの建設は長丁場で、これからも色々な所で問題が取り上げられる可能性大。日本のイメージダウンとしてボディーブローのように効いてくるのではないか。ご都合主義に流されるばかりでなく、「このままではいけない」という動きが出てくることへの期待も込めて、「何かが起きるのではないか」と思っている。例えば毎日新聞が行った情報公開に対する「黒塗り」を止めさせるには、国際コンペ議事録の黒塗りを外させた実績もある「政治」が動けば容易になる。

ただし、民主党で本問題担当責任者の蓮舫氏は、新設の「民進党」でも代表代行と云う要職に就いたが、以下ツィートによると折角今もJSCを追求しながら「お金」しか眼中にないようである。
蓮舫…独法の日本スポーツ振興センターを引き続き追いかけている。東京オリンピックまで4年。この国会に、totoの売り上げ5%を10%まで増やし新国立競技場等に充てる法改正が出されるが、旧計画の独法の失態等もここから払われる、あわせて国からの運営費交付金の使われ方も調査。> 2016年3月27日

このような視野の狭い幹部政治家の存在も含めて日本社会だから、「日本社会全体が問われる」と思っている。
そんな中、やはり建築設計界が先ず動いて自浄能力を発揮するべきではないか。具体的にはこの問題を最初に取り上げた槙氏とそのグループが再度動いて、政府に提言などして話し合うことは出来ないか。槙論文を掲載し、自組織からも提言して来たJIAも行動を共にすれば更に効果あり。

また先月B案のシンポジウムを開催した中堅建築家を中心としたグループも、その後のアクションは無いのだろうか。もしそうなら、「ガス抜きに終わるのではないか」と懸念されていた方の見方通りか。ザハ案時に積極的にシンポジウムを主宰していた方々などと共に、今後のために思い切った動きを期待したい。繰り返しになるが、ZHAが訴訟などで動く前に、建築設計界が自ら「自浄能力」を見せて頂きたい。
なお、隈氏の個人的キャラクターは分らないが、ご自身も内心は忸怩たる心境かも知れず、その場合は周囲から手を差し伸べることも必要と思う(これまでの印象では精神的には相当強靭そうだが)。

追記以上