聖火台問題2…B案提案書には(旧)聖火台の位置が入っている件
聖火台の件について以下の記事が出ている。
”【新国立競技場】いっそ「B案」に再変更したら”2016年3月5日 日刊ゲンダイ
<敗れた「B案」には聖火をともす場所が、しっかり存在した。…
(技術提案書の)43ページ目の「アートワーク」という項目で聖火台の位置がわかる>
該当ページ抜粋を以下に示す。確かに入っている。
ただし、これは上図で①となっている「前回東京五輪で使用された聖火台」の再配置案である。応募要項(業務要求水準書)で聖火台等の記念作品については設計業務の一環として再配置や保存が以下のように求められていた。
これについて、伊東氏は上記記事において<「聖火台の位置について、東京五輪の開会式などを実際に演出するプロデューサの意向が優先されることは予想できました。デザイン段階で私が具体的な場所まで指定するのは、政府やJSCの意向に逆らうことにもなりかねません。応募要項に入っていないのも、そのためだと思いました。だから、選考する人たちに嫌われないように、「技術提案書」では聖火台の位置をアピールしていません。絶対に勝ちたかったですから」>と明かしたとなっている。
更に<1964年の東京五輪で使われた旧国立競技場の聖火台を、2020年の大会でも再び使いたい。そう願っていたのです。・・・>ということも述べている。
整理して考えてみると、三つの論点があるように思われる。
(ⅰ)旧国立競技場聖火台は応募要項で場内または敷地内への再配置や保存の検討が明確に求められていた→応募に当たって対応必須
(ⅱ)今回の聖火台として前回聖火台を再活用するか新規作成か→組織委員会や政府・JSCの選択事項
(ⅲ)今回の聖火台をどこに配置するか→JSCは対象業務外としていて応募者は検討不要
まず、(ⅰ)については応募要項に設計業務の一環として明確に入っているので対応必須だった。技術提案書に当然入れるべき事項で、B案はそれが入っていた。A案は技術提案書を見たところ、当方では「記念作品等」の対応に関する記述を見つけられなかった。(訂正:A案は技術提案書ではなく基本図面の方に旧聖火台の位置「5階 空の杜 東側」が記されていた)
次に(ⅱ)については、追記1項に添付したように以前の聖火台は「命がけ」で作られたという背景がある。今回再び使用することには意義が感じられ、伊東氏の気持ちは理解できる。他にも同様の意見(追記2項)はあり、再活用は相当有力のように思う。その場合B案は「記念作品に対応した位置が実使用も可能」という、よく考えられた案ということになる。
ただし、記念作品対応のみで考えていたのが聖火台必要ということになって、後出しで「実は配慮していた」と言い出したのではないかという穿った見方もありうるだろう。しかし、上記①は観客全体から見やすい好位置で、新たに聖火台を配置すると競合することにもなり、再活用前提の位置と当方は現在見ている。後は実使用に当たってガス配管や防火・消火等の対応が可能かどうか。
それに対して隈氏の見解はNHKが伝えている。
”隈研吾氏「聖火台は競技場の中に設置可能」”3月5日 NHK
<「当初から開会式の計画を踏まえて設置場所を決めるものだと考えているので、現段階で決まっていないのは問題はない」>
昨日記事で示したようにJSCが「今回事業対象外」としているため、これは隈氏の見解で契約上問題はない。
(ⅲ)に関しては、ロンドンや北京で開会式における聖火は次のようになっている。
”新国立に聖火台置けない!? 変更ならまたお金”2016年3月4日 日刊スポーツ
< ◆夏季五輪の聖火台 12年ロンドン大会の開会式では、グラウンドの中央で点火セレモニーが行われた後、競技期間中は観客席が設置されなかった競技場南側に移動し、外からは見えなかった。08年北京大会では「鳥の巣」と呼ばれた屋根内側の側面に聖火台を設置。聖火の炎は屋根よりさらに上部で燃える構造だった。>
グランドで点火するロンドン方式も考えられると思うが、ロンドンでは「観客席が設置されなかった競技場南側に移動した」とのこと。今回はそのようなスペースは無いと思われ、同じようにするのは困難だろう。
また、冬季の「ソチ」では外部だったが、以下のように高さ約20mで白鳥のようなデザイン、噴水池付きの立派な建築物になっている。
これを見ると外部配置する場合は或る程度の規模や豪華さもが必要になると想定される。JSCはザハ案時から外部配置を考えていたようであるが、競技場とは別の設計・施工になって手間も費用も掛かる。仮にソチほど豪華にはしなくても、敷地が元々狭いので設計や施工が進んでからの対応はますます難しくなっていく。屋根全閉も有りうるザハ案で外部配置はやむを得ないとしても、その仕様や費用は組織委と打合せして事前合意必要。それをやっておけば今回にも生かせた。今になって概要も決まっておらず、ゼネコンには費用アップが無いように釘をさしておきながら自らの仕様追加で費用追加するとしたら、官僚の仕事はここまで凄いのかと呆れざるを得ない。
以上
[追記]
1.以前の聖火台製作経過
是非ご覧ください。
2.聖火台再活用の話
以前から話が出ていた。組織委員会トップの森氏や武藤氏が以下のように述べているのだから、組織委の事務方がJSCと打ち合わせておく必要があったと思われる。
”国立聖火台、20年東京五輪で再利用も”2014年12月31日 日刊スポーツ
<組織委の森喜朗会長は14年10月、「(聖火台に)再び火をともすことができれば日本の技術力、ものを大切にするという国民性を世界に示すことができる」などと発言。武藤敏郎事務総長も12月に「(20年五輪で)もう一度使うのはいいアイデア。いろんな意味を持つ」と前向きな姿勢を示した。>
3.川口鋳物
今年2月25日には「川口鋳物」の活用が遠藤五輪相に申し入れられていた。3月になって問題が報道される前に、聖火台対応の基本方針だけでも打ち出しておくなどの対応が迅速に出来ない政府の能力不足には危惧を覚える。
”新国立競技場に川口鋳物を 五輪担当相に要望書 「聖火台の再活用も」”2016年2月25日発行 川口鋳物ニュース
「新国立競技場の聖火台などへの川口鋳物の活用について、遠藤オリンピック担当大臣等に要望した件が、2月25日発行の川口鋳物ニュースに掲載されました」
追記以上