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B案シンポジウム1 「流用証明、2回採点疑惑」

日刊スポーツが異例とも思える長文記事で詳報。これの引用(以下①~③)を元にシンポジウムを振り返ってみる。なお同紙は本問題に積極的で良記事多い。署名記事ではないが、強い関心を持って追求している記者がいると推測。
伊東豊雄氏、隈研吾氏案はザハ案「踏襲している」”[2016年2月9日23時0分] 日刊スポーツ 
①<B案の建築家・伊東豊雄氏(74)が9日、都内でシンポジウムを開き、建築家・隈研吾氏(61)が設計したA案のスタンド部分は前計画のザハ・ハディド案を「踏襲している」と言い切った。 
 伊東氏は断面、柱、通路、トイレの図を示し、数や位置が共通している事実を示した。断面図ではスタンド下部の柱位置がほぼ同じだった。柱比較では全周が108本で成り立つ構造と位置がほぼ同じ。通路比較では上・中段スタンドの通路数がともに54本で、位置もほぼ一緒だった。地下トイレもともに8カ所で位置もほぼ同じ。隈案は「似ているのではなく(ザハ案を)借用したのではないか」と述べた。>
→伊東氏の「A案流用問題」に対する発言を的確に紹介。証拠を示しての「踏襲」「借用」発言は重い(証明図後掲)。「流用断定」と言って良いだろう。今後他マスコミや、特に比較図などを多く載せやすい週刊誌がどうするか。

日刊スポーツは香山氏発言も詳しく伝えている。
②<7人の審査委員の1人だった建築家・香山寿夫氏(78)も出席し、自ら審査方法に疑問を呈した。それぞれの審査委員が採点動向を公表しないやり方に「それは問題。公表できないなら、それは専門家とは言えない。そう言ったが、通らなかった」と振り返った。 
 また、審査委が事前審査も含め2度、採点したことが「操作なのでは」と批判を受けている点には「仮の採点の1時間後にもう1度やったが、その結果どういうことが起きたのかは分からない。知っている人もいるかもしれないが…。お互いにどのように判断したかは公表しないことになっているため、変な操作につながったと思われるのは仕方ない」と語った。
→「2回採点」の疑惑が深まったように思う。この採点方法については、昨年の記者会見で村上委員長から以下のように説明があった。
32分頃~
<日経アーキテクチャ記者:7名の方々の合計で数字が出されてますけど、審査をする上で例えば点が偏ったりとか、意見が7名の中で二分したとか、人によって点数の付け方がだいぶ偏りが有ったかどうか、というところを教えていただきたいんですけども。
村上委員長:詳細を今回オープンにしないという申し合わせをしているものですからね。それからここまで言っていいのか分かりませんが、最初に仮審査をして仮採点をして、何となく皆さんで相場観を見て、それから本審査・本採点をしたというプロセスを踏んでおりまして、今の質問に関連したような非常に誤解があるとか全然感覚が違うというようなことは避ける努力は致しました。>
→2回の採点は会見で内幕説明したぐらいだから、違和感のあるやり方では有るが、不正操作に当たるようなことは無いだろうと当方は性善説で見ていた。しかし、香山氏発言と併せて考えてみるとやはり疑問有り。まず同氏はB案の方に多く点数を入れたから、ご自身個人としては審査に余り後ろめたさを感じていなくて、このような場にも出席できたのではないか。そこで他の委員も想定してみると、仮に委員ごとの採点勝敗で決まるなら同点がないとすれば、残り6人のうち4人がA案勝ちにしないと4対3でのA案勝利にならない。B案のできの良さを考えると、なかなか想定しにくい状況。

だが実際には、新コンペ審査は多数決では無かったことが効いてくる。委員長の2回採点に対する上記説明は、「委員間で誤解や感覚の違いなどによる採点偏りが無いようにした」という趣旨と理解できる。しかし、これを逆手にとって、裏の仕切り役(官邸チーム)と意を通じた一人または数人の工作審査員?が、1回めの総集計点数を見て自らの点数を操作すれば、最初B案が勝っていても最終でひっくり返せることになる。陰謀論は余り考えない方だが、考慮にいれることが必要な場合もある。疑惑を持たれないために、各委員の採点を2回とも公表すべきと思う。マスコミが強くJSCや政府に要求してもらいたい。ただし、審査で操作がなかったとしても、①で既にA案は失格の可能性有りというのも今回の深刻な状況(JSCが流用の許可や要請していても国民に明示していないのでは、「ザハ案白紙見直し」表明はどうなったのか?と云うことになり、国民が納得いく説明ができなければ失格かコンペ不成立が妥当)。

③<会場から「建築業界内では当初から大成建設(A案のゼネコン)ありきだった」との“出来レース”を疑う意見が出る中、伊東氏は「最初からアウェーだと思ってました。ボクシングをアウェーで勝つにはノックアウトしかない。それを承知した上でやった。官僚社会に個人建築家としての役割を示したかった。でもやっぱりノックアウトできなかった」と悔しそうに語った。>
→伊東氏は流用を証明する図(4枚…Youtubeより以下3枚転載)も見せて、審査不公正と官製談合について強い疑義を表明したと思う。
イメージ 1

比較の考え方は当ブログも賛同。更に「B1Fはトイレ位置だけでなく、”大きめWC-機械室-斜め通路-小さめWC”の配列も同じで、それが4組あるからBIF全体が類似」、「VIP用ボックス席(凸部4ヶ所)という特別用途席の位置も同じ」等の追加比較も入れて頂くと、報道機関などが類以度の高さを説明しやすくなると思われる。
また、森山氏も<似るとか云うレベルではなくて、CADは微妙な角度も作れるので、あそこまで放射線が一緒になることはまず無い。元々同じものを少しずつずらして行った結果、あのような平面図になったのではないか>と指摘(CADデータ流用可能性言及、実質断定レベル)。

しかし、このような発言が有っても雰囲気的には伊東氏や竹中・日本設計などが審査について提訴等する流れは無さそうに思えた。そうなるとこのままフェードアウト? それでも、まだ以下の変動要因はある。
 (1)ZHA…今後の動向、特に法的措置の可能性
 (2)海外報道…ZHA発言等を今後も紹介していくと思われる
 (3)国内報道…マスコミ・雑誌・ネット等が、伊東・森山両氏の類似認定発言を受けて動きが変わるか
 (4)建築設計界…今回の発起人などが次の行動に出るか、またJIA会館でやったぐらいだからJIAに新たな提言出すよう要請したらどうか
 (5)世論…もし今後類似性報道が増えて知る人が増えたら反応がどうなるか、又それが政府に届くか
 (6)JSC…ZHAとの交渉はどうなっているか
 (7)政府・野党…政府は国として嘘をつき国際的悪評も無視し続けるのか、野党はこのまま追求しないのか

このうち、一番影響力が大きいのは当然(1)で、(2)もこのところ紹介しているがボデーブローのように効いてくると思う。従来のように「外圧でしか日本は変わらない」という自嘲の事態にならないよう、早めに(3)(4)などで自浄作用が発揮されることを期待。また(6)JSCは池田理事が<(ザハ氏側との)交渉内容は言えないが、どうなろうと確実に建つようにしたい>(1月29日朝日新聞)と述べたとのことで、一体どのような着地点を意図しているのか、公約した情報公開が求められる。(7)も特に野党はスルーし続けるのだろうか。
以上

[追記]
シンポジウム告知の中に「中沢新一」氏も入っていた。同氏は昨年末の以下記事でA案の表面的な「和イメージ」を相当辛辣に批判しておられた。
<■「和のイメージ」が表面的
一方、明治大学特任教授で人類学者の中沢新一氏は、日本人の「和」の精神という観点からこう評価する。
「コンセプトだけでなく、『渋谷川の復活』といった細部に至るまで、あまりによく似ていると感じます。ただ、どちらがいいかと問われると、私はB案を推したい。B案のほうが、新国立競技場が建つ『神宮外苑』という場所の特性を、はるかによく考慮しているように感じるからです。
神宮は、内苑と外苑でまったく役割が違います。内苑は森の中へこもっていき、外苑は未来へと開かれてゆくという、土地としての特性を持っている。ですから、A案のような重厚な建物よりは、B案のような開放的なイメージのほうが、神宮外苑という場所に合っていると思います。
また、木材を多用するA案の外装は、『和』というイメージの切り貼りをしているように感じます。あまり表面的に『和』を強調しすぎると、かえってちぐはぐな印象を与えてしまいますからね」>
→今回は進行役で上記記事のような内容や流用問題への発言は無く残念。建築専門家ではない文化人・識者の方々の動向は今後重要になると思う(文科系が多い記者達や一般の方々を惹きつけやすくなる)。
例えば初期には都知事として直接関係し、その後も発言を続けてこられた猪瀬直樹氏は、類似性が断定レベルになって来て今後どうされるか。他にも浅田彰氏の新たな論考は出されるか、など。

追記以上