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流用問題への香山氏と槇氏の対応

昨日記事で2月9日シンポジウムにおける新コンペ審査員「香山壽夫」(こうやまひさお)氏の出席が注目されるということを書いた。特にJSCの「旧計画成果の最大限活用」意向に対する審査委員会とご自身の認識、及びA案における「ザハ案流用有無」の認識がポイントと考えている。

香山氏がどのような発言をされるかの予測参考として、昨年12月22日記者会見の記事がある(産経新聞2015.12.22)
<22日に都内で記者会見した日本スポーツ振興センター(JSC)審査委員会の村上周三委員長は「工期は本当に実現可能性があるのかということで差がついた」と指摘した。
 ただ、具体的な説明はなく、同席した香山壽夫委員は「個々の採点結果を集計したので、なぜ工期短縮の項目で点差が開いたのかわからない」、涌井史郎委員は「ゆとりをもって工期を組んだか否かで差が開いたのではないか」と述べた。>

これからすると、村上委員長や涌井委員は委員会決定を肯定する方向での発言と思えるが、香山氏は「なぜ点差が開いたのか(自分も)分からない」と率直に述べている。
元ネタの記者会見動画もYoutubeにあるので香山氏発言の一部を文字起こししてみた。
----記者会見文字起こし開始----(当方で分かりやすくしてみた部分あり)
19分頃~
従来のデザインと言っているものだけでなくて、施工や技術的中身も一緒に審査するというコンペ、これは非常にやりがいのある面白いものでありました。作品もそれらを一緒にするもので面白い提案が出てきた。
そういう意味では立派なやった甲斐のあるコンペだったと思います。従いまして出てきた両案で一番大事な優れた点は「建築の総合的な考え」を提案しているということです。私達建築家から言わせますと建築のデザインというのは、コスト・工期・敷地といったものを全部含めて出さなくてはいけない。
白紙撤回された案の時にしばしば世の中で言われました、インパクトだけで選んだんだと。工費のことは関係ないというのは建築家としては恥ずべき発言で、そんなことはあり得ないんですね、そういうことを言った人がいるとすればですが。(会場少し笑い)。
これは一体です。今回は両者ともすごくよくやって有りました。ですから形だけの見せかけのインパクトということではなくて実に中もよく考えられ、出来た後、国民の人達・様々な階層の人達が喜ぶであろうと云う提案が両方共に出来た。
----文字起こし終了----

実際の委員会発言では上記記事とは印象が変わって、やはり「審査委員会と審査の肯定」が色濃いと思える。思い切ったことを言いそうなポーズは見せても、結局は委員会マンセー発言に終始するかも知れないという気もしてきた。ただし、同会見によると審査委員会は検討会も含め計21回の会合を開き350件もの項目を検討したとのこと。流用に気が付かなかったとは到底思えないし、特に香山氏は経験豊かで講演なども多い建築家(追記に経歴添付)。委員長や他の委員がいなくて、流用指摘が想定される伊東氏と森山氏が同席する場で、どのような対応をされるか。
それと上記発言の中に安藤氏を揶揄していると思われる部分がある。しかし、香山氏が流用を知りつつ見逃していくのなら「嘘」をついているのと同様になり、発言自体は正直であったと(当方には)思われる安藤氏を批判する資格は全く無いと思う。また「建築の総合的な考え」が重要と言っておられるが、それ以前に「他者案を大幅流用しながら明示しない」と云う行為の方が見逃してはいけない根本的な問題ではないか。

以上のように香山委員もA案の流用について明確な言及が有るかどうか疑問も出てきたが、旧計画で思い切った発言をしてこられた「槇文彦」氏も流用問題に対する見解を曖昧にしておられるようで非常に残念。
「wor*****」さんから2月1日記事に頂いたコメントで、英字紙「Japan Times」 1月29日記事における槇氏と鈴木エドワード氏のコメントが以下のように紹介されている。
槙氏のコメントは「I'm not sure it's a copy」(英文まま)とあり、その後に日本人建築家が関わっているので云々~というコメントがあります。もう一人コメントをしている建築家の鈴木エドワード氏は、はっきりと「似過ぎている」と言っております。

槇氏は「それがコピーかどうか分かりません」と云う趣旨で曖昧にしていると思うが、そのような対応で良いのだろうか? 旧計画に対する長い活動の中で、ご自身もザハ案をよく知っているだろうし、槇事務所の建築家や槇グループの著名な建築家の方々もおられる。現状では槇氏や協力者も含めて、「A案の内部はザハ案流用という判断が付かない」と云うことだろうか。
しかし、比較結果を見られた皆さんの殆どは類似や一致が沢山あると一目瞭然で見抜かれたと思う。槇氏と協力者が「分からない」と言うなら、専門家としてのレベルを疑わざるを得ない。だが、当方として率直な見方は、「槇氏(とそのグループ)は分かっていて、とぼけている」と思う。それでは香山氏と同様、実質的に「嘘」をついていることになる。

槇氏のような国際経験豊かな方こそ、このままでは更に日本の恥と劣化が海外にも発信されていく事態を深く憂慮して頂けるのではないか。大家・重鎮としての役割をお考えいただいて、新計画においてもまず「流用問題」で明確な見解表明を早急に行っていただきたいと思う。(その場合、まさか「流用なし」見解になることは無いと思うが)

以上
[追記](参考情報)
■香山壽夫氏 プロフィール
こうやま・ひさお――建築家・香山壽夫建築研究所所長/1937年生まれ。1960年、東京大学工学部建築学科卒業。1965年、ペンシルべニア大学美術学部大学院修了。1971~86年、東京大学工学部助教授。1971年、香山アトリエ(環境造形研究所、現・香山壽夫建築研究所)設立。1986~97年、東京大学工学部教授。1997~2002年、明治大学理工学部教授。1997年、東京大学名誉教授。2002~07年、放送大学教授。現在、放送大学客員教授聖学院大学教授。
主な作品:九州芸術工科大学(1970)、SEKIKAWA MUSEUM せきかわ歴史とみちの館(1994)、彩の国さいたま劇場(1994)、東京大学工学部1号館(1996)、東京大学弥生講堂 一条ホール(2000)、可児市文化創造センター ala(2002)、横浜税関本関(2003)、聖学院大学礼拝堂・講堂(2004)、国立科学博物館本館改修(2007)、日田市民文化会館 パトリア日田(2007)、世界遺産熊野本宮館(2009)など。

■審査委員会構成(日経新聞より)
委員会は7人で構成。委員長を務めるのは建築環境が専門の村上周三・東京大学名誉教授。
このほか、建築家の香山壽夫・東京大学名誉教授と工藤和美・東洋大学教授、鉄筋コンクリート構造など建築構造が専門の久保哲夫・東京大学名誉教授、景観やランドスケープに明るい涌井史郎・東京都市大学教授、建築生産が専門の秋山哲一・東洋大学教授がメンバーとなっている。
東洋ゴム工業の免震偽装問題に関する国土交通省の第三者委員会で委員長を務める深尾精一・首都大学東京名誉教授も加わった。

追記以上