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「2月3日NYタイムズ記事」と建築関係者の方々へ

NYタイムズで記事が出ている。今まで知られている内容も多いが、新たな情報と思われる箇所と個人的に重要と感じた箇所を抜粋してみた。
----抜粋開始----
(基本的に以下各項英文の全部は訳しておらず、意味が通じると思われる範囲での部分訳)
①<Ms. Hadid , who has staunchly defended her design against her critics in interviews and on her website , immediately protested the decision in a statement and suggested that nationalist motives lay behind the rejection of her plan . >
→ザハ氏は(昨年夏の)ザハ案排除に抗議し、その背後には「nationalist motives」(ナショナリストの動機)があると声明で示唆した。
②<Her studio has stepped up the attack in recent weeks , saying that Mr. Kuma ’s design closely copied hers in significant ways , and in a Jan. 11 letter to the Japan Sport Council , which is overseeing the Games , raised the possibility of legal action against the council and Taisei Corporation , the contractor charged with building the stadium , for copyright infringement . >
→彼女のスタジオ(ZHA)はここ数週間で攻撃をステップアップした。今年1月11日にJSC宛に送ったレターで、スタジアム建設における著作権侵害に対して、JSCと大成建設への「possibility of legal action 」(法的措置の可能性)を提起した。
③<Mr. Kuma has rejected her claims , saying at a news conference on Jan. 15 that the technical requirements for stadiums by necessity resulted in some similarities . >
→隈氏は1月15日の記者会見で「スタジアムの技術的要件は、必然的に幾つかの類似点をもたらした」と述べてザハ氏の(類似性)クレームを拒絶した
④<his recent email , Mr. Kuma said his company had “worked closely with Taisei , each bringing up their own strength and experience . ” He added : “We do not adopt anything from ZHD ’s design and engineering . ”>
→隈氏は最近の電子メールで「大成建設と緊密に協力している」と述べた。そして「ZHDの設計とエンジニアリングから何も取り入れていない」と付け加えた。
⑤<Ms. Hadid rejected that assertion last week . “To claim that the major similarities and many identical instances in the design , ” as well as “thousands of fine details are ‘automatic ’ or due to chance is not, ” she said . >
→ザハ氏は先週、(隈氏の)主張を退けた。設計における大きな類似や多数の同一が「自動的」、または「偶然」に起きたというのは信用出来ない。
⑥<“Leading architects all over the world will be skeptical about working in Japan ,” she said . >
→「世界中の主要な 建築家が日本 で 働く ことについて懐疑的です 」とザハ氏は言った 。 
----抜粋終了----

新情報と思われるのは、まず②で、ZHA側が「JSCと大成建設に対する法的措置の可能性」を提起したメールを今年1月11日JSCに送ったとのこと。
④では、隈氏が最近のメールの中で、「ZHAの設計とエンジニアリングから何も取り入れていない」と述べていたとのこと。それに対して、⑤でザハ氏は「(ザハ側が指摘している)類似や一致が『自動的』や『偶然』に起きたという説明は信用出来ない」として、先週その主張を退けた。

これらのメールは他の報道には無いので裏付けは取れないが実際にあったとすると、「法的措置の可能性」というのは特に重要と思われる。ただし、段階的に攻撃をアップしているとのことで、最終的な着地点として何を狙っているのかが不明。未払金の全額請求は当然として、賠償金や著作権使用料等の更なる金目か。或いは契約解除で生じたイメージダウンやプライド回復のために、「ZHA著作権明記」要求なども有るか(著作権かどうかは別にして「原案 ZHA」を示す表記は本来妥当と思う)。
更にZHA側が再参加を求めてきた場合は、政府が呑めば解決策として有効と思うが、政府としてどう国民向けに説明するか。ひた隠しにしてきた白紙化経緯の説明が必要になってくる。もし白紙化理由として、工費問題だけでなく当方が可能性が高いと考えている「ザハ案は建てられなかった」という問題を明らかにしたとすると、そのような設計を主導したZHAを再参加させる名分も立たなくなって矛盾する。

難しい状況であるが日本側は決着に時間を掛けていると、①の「ナショナリスト」という表現などで⑥の「外国の建築家への日本の閉鎖性」という趣旨のザハ側主張が広く海外に発信されていく。ダメージを出来るだけ食い止めるために迅速な対応が必須。
ここは建築関係者の有志が立ち上がって、政府に対し類似性問題の調査を文書で求めていただきたいと思う。専門家が立ち上がれば政府も動くキッカケになってくる。
JSCが新コンペで旧計画成果を最大限に活用する方針だったことなどの事情も分かってきた。そして2月9日シンポジウムは伊東氏(応募者)、香山氏(審査委員)、森山氏(各種メディア解説)という新コンペに密接に関係する方々が結集するので、ここが一つの山場と思っていたが、上掲NYタイムズ記事などを見ていると、その前にでも出来るだけ多くの専門家の方々に立ち上がって頂いて、出来るだけ早い対応を期待したい。当方も検証による参考情報提供を続けたいと思う。

以上