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旧計画再検証2 「ZHAビデオのアーチタイ段差」

本日は昨年8月のZHAビデオにおけるアーチタイ図で、今までご紹介していない問題点を示す。
ただし、それを検証する際に以前の当方考察における誤りが判明したので、まずそちらを述べる。11月3日記事の図を以下に示す(一部追記有り)。
左図でキールアーチのベントが観客席と重なることは正しいが、右図でベントとスタンドの隙間についても存在することが認識できた。これは右図のスタンドは上中段(2~6階)だけが描かれていて、1階以下の下段スタンドは描かれていないため、それを考慮すると上中段スタンドとベントの間には下段スタンド分ぐらいの隙間が有ることになる。(左図の薄い黄色で塗った部分)

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キールアーチと上段中段スタンドの並行工事」を行った後に、ベントを除去してから下段スタンド工事を行うという段階的手順となって、「(全部ではないが)2~6階スタンドはキールアーチと並行工事が行える」というのがZHA側主張と想定される。隙間は工事対象になる上中段スタンドの大きさと比較して余り広い空間とは思えず、並行工事に十分かどうかは疑問だが、隙間自体は存在する。
よって当方が「キールアーチのベントとスタンドが重なるので並行工事は不可」としたのは、「全面的に不可ではなかった」という点で誤りであったため、お詫びして訂正させていただく。

ただし、上中段スタンドについても動線や作業スペースでの問題が有り、ベントと干渉しない部分もやはり並行工事は困難と考える。
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上図左側は以前に示した工事中の「動線」想定図である。左右(①③)のスタンド工区と中央(②)の屋根工区がベントで分断され移動が難しくなる。ベント下の通り抜けは上で高所作業をしているのだから危険。ベントが沢山立ってくると重機など大きなものも通行困難になる。敷地に対してスタンドがほぼ目一杯作られることになるため、スタンド外側のスペースも狭い。
また右側図の様にZHAビデオから推測される「並行工事箇所①~⑫」を考えてみると、動線が輻湊し作業スペースも重複してくるのではないか。そこにベントによる動線分断が加わる。ZHAが主張する並行工事は画餅(絵に描いた餅)と思える。

更にそれを困難にすると思われるのが、本日紹介するアーチタイに大きな「段差」がある件。下図参照。

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図からは約4mもの段差がアーチタイに沿って存在することになる。これでは人はもちろん作業車や重機も乗り越えられない。ビデオは実際の設計図面とは違うということだろうか。しかし、ご自慢のBIMでデータ共有を行った図ではないのか。また別のアーチタイ図は肝心の中身が描かれていないことも11月24日記事で指摘した。

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ビデオに数多く入っている図の中で、何故アーチタイだけが正確とは思えない図になっているだろうか。そこから出てくるのが、「アーチタイに関して具体的に実現可能な設計に落とし込めていたのか」という疑問。これを検証委員会で検証してもらいたかったが、全くそのようなところまで行かなかった。

一般的にザハ案と呼んでいるが、キールアーチやアーチタイのような基本構造面は「ZHA+アラップ+日建設計」が行ったと想定される。ZHAやアラップに関しては日本側による解明が難しいことが予想され、日建設計が重要になる。しかし、これまで(上手く )ダンマリを続けている。もしかしたら黙っていることが自社だけでなく日本のためとお考えかも知れない。実際は事実を率直に語って頂くことの方が真に日本のためになると思う。

なお、アーチタイに関しては、ヒアリング結果全体でも一回も出てこないだけでなく、設計経過を述べているZHAのU氏インタビューにも無い。旧計画でのコストダウン検討は色々行われていて記録も数多くあるが、工期・工費に大きな影響を与えることが確実なアーチタイの検討について記述されたものを見たことがない。アーチタイの見積りがどうなっていたのかも全く出てきていない。
また、巨大でしかも屋内設置のアーチタイは今まで世の中にないものだから、新工法も必要と思われるが、その話もない。巨大な鉄骨(キールアーチ)と鉄筋コンクリート(アーチタイ)の接合部をどのようにするかも非常に難しい設計になるのは確実だが、最終的な実施設計書にも何も書かれていない。結果的には本当に実現可能だったかさえ未だに不明。
それに引き換え、キールアーチも今まで無かったレベルのものだが、フレームワーク設計の段階から組み立て工法は検討されていた。また、新たな試みだった膜式屋根開閉装置もU氏インタビューの中に詳細な検討経過がある。

このように考えて来ると、「アーチタイは無かったことにされている」のではないかという気がしてくる。一体どうなっていたのだろうか。真相を知るのはやはり日建設計ということになってくる。
次のような記事がある。
〈ザハ事務所がJSCに送った書面には、こう記されているという。
 「私たちの屈辱から利益を得る者にとって、私たちが沈黙を守ることは好都合でしょうが、事実が公になるまで従うつもりはない」〉
これは逆でしょう。今は一方的に日本側が屈辱を受けているような状態。日建設計さんはZHA側でもあったので苦しい立場とは思うが、渦中からは離れていることだし、日本国民のために真相の封印を解いていただきたい。

以上
[追記]
以下の報道が出ている。
<2020年東京オリンピックの準備状況を確認する、組織委員会とIOC・国際オリンピック委員会の事務折衝が始まり、去年12月、建設計画が決まった新国立競技場について、ジョン・コーツ調整委員長が竣工時期が前倒しされたことを評価しました。>

IOCが来て確認されたとなると政府にとって極めて難しい事態になった。
しかし流用の事実自体は動かない。この状況は政府が自ら作り出してしまった点で深刻である。政府は検証委員会に肝心の「白紙化経緯」を対象としないよう最初から制限をかけた。あろうことか検証委員長や委員もそれにすぐ従って進めてしまった。白紙化経緯を検証すれば、「何故ザハ案を取りやめたか」についても詳細が分かる。政府側も、実際にはやむにやまれぬ理由があったと思う。ZHAを外す理由を国民に明らかにして、その上で「工期短縮のためにザハ案の骨格は使う」という説明をすれば理解も得られる。流用についてZHAと交渉するにしても、堂々と相手の非も明らかにして相殺した上で、必要なら妥当な費用を払えば良い。

しかし、公開より隠蔽を選択して進めてしまったところに、ZHAから指摘されて事態は暗転。こうなってしまったら、どこまで流用されているか実態を知らないと、指摘されるたびにあたふたすることになる。政府だけでなく世論を形成する我々も知っておいたほうが良いと思い、情報提供のために検証してきた。そして実態が人の目に止まれば徐々に連鎖反応で状況も変わるかもしれない、そう思いつつ書いてきた。ただ、事ここに至って政府はどう対応するか、正念場になってきた。問題は政府の中でもどこまで流用の実態が知られているかが不明。

なおB案への転換は1月3日記事で書いたが、その後A案の潜在的設計完成度の高さが次第に見えてきた。A案完成度を前提として納期を2019年11月目標に設定し、B案はそれに合わせただけというような裏事情がもし有ったりすると、B案への移行もハードルは極めて高い可能性がある。B案の実現性をどう判定するか。
(昨日頂いた「miy*_n*」さんコメントへの返信をここでさせて頂くと、「A案は基本設計が殆ど出来ているような状態が想定され、B案とは工期面で実質的に27点どころではない大差があるのではないか」と云う推測も流用の実態からすると考えられるのではないでしょうか)

この際政府で思い切ってゼロ案も検討してくれると良いが、河野氏も閣内に取り込まれてから新国立競技場問題では動けないか。或いは政府が思い切ってやるのは「A案そのままで押し切る」ことになるのだろうか。

追記以上