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旧計画再検証1「有識者会議とアーチタイ」

旧計画にも様々な問題があったが、基礎構造面で2点挙げてみる。

1.スラストブロック基礎の消滅経過が不明
国際コンペ表彰式プレゼン図にあった「スラストブロック基礎」が基本設計では無くなっていた。これが「いつ、どうして無くなったのか?」は現在も明らかになっていない。
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更に2014年5月の基本設計図では同基礎がないだけでなく、スラストブロック用のアーチタイもまだ追加されていなかった。しかし、日経アーキテクチャは昨年10月10日号で次のように報じている。  
国際デザイン競技の時点では、アーチの両端をコンクリートのブロックなどで固定する支持方式を考えていた。基本設計の初期段階で免震構造の採用の可否に関わらず、アーチタイを採用する方針となったという。
   
全く矛盾する話である。ちなみにZHA側認識は「基本設計の初期段階」が日本側呼称の「フレームワーク(FW)設計」に相当する。スラストブロック基礎が消滅したのは国際コンペからFW設計完了までの間のどこかになる。当方想定は、2013年5月にFW設計開始してから早い時期に何らかの理由で削除されたのではないか(理由は同基礎が敷地からはみ出す?)。

ただし、同号にはZHA(当時)U氏インタビューが掲載されているが、上記アーチタイに関する内容がU氏発言によるものかどうかは書かれておらず、誰の発言か特定できない表現になっている。同氏発言なら現実の設計との食い違いで非常に大きな矛盾となるのだが、日経アーキがぼかしているので明確には判定できない。同誌は業界情報等を色々知っていながら肝心なところを隠しているかも知れないと個人的には推測。(アーチタイに関する西川氏記事の続報が出ないなども同様)

2.アーチタイ追加は有識者会議の了承無し
「基本設計完了後のアーチタイ追加」について、当ブログで新国際競技場問題を書き始めた当初から注目してきた。例えば「アーチタイ追加経過は一大偽装事件の趣き」(昨年8月3日)という記事を書いた。
経過としては、2014年5月第5回有識者会議で基本設計完了報告が行われ、その際の基本設計書にはアーチタイは入っていなかった。その後同年8月に実施設計段階の公募型プロポーザル公示が行われた際にはアーチタイの図があった。ただし以下のようにお絵描きソフトかと思えるようなレベルのもの。
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有識者会議は正式にはJSC理事長の諮問機関という位置づけだが、実質的にはJSCが了承のお墨付きを受ける会議だった。前述のように、5月の会議で基本設計が了承されて次段階の実施設計に進むことになり、8月に技術協力者の公募が行われた。有識者会議後にアーチタイ追加と云う基礎構造の重大な変更を行って、工期・工費に影響することは必至であり、何らかの形で有識者会議メンバーに変更報告を行って再度了承を得ることは必須だったと思われる。

しかし、そのような再了承が行われた形跡はなく、JSCの資料にも全く載っていない。つまり、有識者会議には無報告・無了承でアーチタイ追加は行われたと想定される。諮問機関だから了承は不要というなら、追加は理事長の責任で行われたことになる。実際はどうだったのか。
アーチタイ追加は大きな変更にもかかわらず基本設計完了報告後に急遽出てきている。基本設計は一体どうなっていたのか。有識者会議に報告していれば安藤氏も構造設計がおかしいことに気づいた可能性があったと思う。また安藤氏は気づかなかったとしても、変更が明確になっていれば関係者の誰かが気づいた可能性もあるだろう。しかし、実際は日経アーキテクチャの記事に上図が掲載されただけというような形になった。

当方が特に問題と思うのは、JSCが有識者会議を蔑ろにしたことである。検証委員会は有識者会議を有害無益と批判しているが、重鎮が集まった会議だからこそ報告も厳正さが求められる。アーチタイ追加の変更も有識者会議に報告するとなったら基本設計書も改訂するから、上図のような手抜きではなく、きちんと設計した図面が必要になる。
アーチタイが実現可能なものであるかどうかは、その図面があれば概ね判定できたと考えられる。しかし今に至るまで実現可能と思えるようなアーチタイの構造図面は何処からも出てきていない。そして唯一と言ってよいであろう構造専門家によるアーチタイの検証である日経アーキの西川氏記事は、ザハ案用アーチタイの困難さを指摘している。
有識者会議にかけずにアーチタイ追加を決めた人達。まず、ここには大きな責任があると当方は見ている。(昨年7月第6回有識者会議資料の実施設計図にはアーチタイが簡単に描かれていたが、アーチタイ追加の経緯や構造等の説明はなく、依然としてアーチタイが実現可能か判定困難なレベルだった)

明日はZHAビデオのアーチタイで更なる疑問が出てきたので検証予定。

以上
[追記]
当ブログを見て頂ける方が増えて、ネット上でも様々な反応がある。例えば当ブログを指していると思われる次のようなツィートが有った。
<無理やり「パクリ」に導くためのコジツケだらけに見えるよ┐(´-`)┌ 「ほとんど同じ」の「ほとんど」のコジツケ感
痛いところを突いてきますねえ(笑)、当方も書きにくいんですよ「同じ」とか「ほぼ同じ」とか(苦笑)
技術的説明は「殆ど」と書くと「曖昧だ」と云うことになり、「一致」と書けば「完全に一致か?」というツッコミが容易。どう書けばよいか難しい。ただ、「コジツケ」に関しては、逆に分かりやす過ぎるぐらいのものを選んでいるつもり。と言っても人それぞれなので、最終的には見た人の判断でお願いするために図を多く掲載した。ネット反応を見ると、判定は今や明らかでしょう。ただ逆張りの人も出て来るのは世の常。

なお、設計の電子データーがあれば完全一致かどうかも調べられる。しかし、電子データでもJSCから公開されているpdfでは完全な比較は困難。そのために今まで敢えて書いてなかったことがあって、それは「CADデータ」の件。CADはコンピュータ支援設計(直訳)のことで、具体的にはCADソフトを用いて設計を行う。設計流用するにしても、CADデータが使えるかどうかで効率は全く違う。世の技術者諸氏は、仕様からの流用だけでなく、「CADデータ流用」と聞いたら反応が違ってくることは確実(他のツィートで「CAD道徳超越」と云う表現が有った)。ZHA関与のデータかどうかは別にしても、とにかく旧計画から「CADデータを流用している」ということになればインパクトは更に強まる。
さて今回はどうだろう。ここだけの話として(笑)、高い類似性(一致性)からするとCADデータ流用した上での改変と云う可能性は有り得そう・・・。

追記以上