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世間の状況と報道(追記でA案屋根木材使用の技術的疑問)

一昨日のNHKおはよう日本」で、オリンピックに木材を売り込もうという動きを伝える静岡県浜松市天竜区の地域ニュースが放送された。冒頭の部分をまず以下に引用。全体は国際認証制度(SFC)や木材強度の話などもあって参考になるが、長くなるので[追記]の後に付ける。

天竜木材をオリンピックへ”(NHK静岡作成) 1月10日おはよう日本
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<2020年の東京オリンピックパラリンピックです。
といっても今日はね、この新国立競技場の話なんですね。木を多く使ったデザインですよね。そこで、北海道や九州、それに静岡県などの産地が、オリンピックに木材を売り込もうと、すでに名乗りを上げ、競争が始まっています。・・・

新国立競技場や五輪施設を巡って世間はそれぞれに動き始め、このような報道もなされたりして、A案現行仕様での既成事実化も進みそう(笑)
しかし、NHKを含めマスコミは、「ザハ案流用と新コンペの公平性問題」に関し、「ZHA調査待ち」を免罪符にしてこのままスルーを続けるのだろうか。例えば著書を当ブログでも取り上げて来た東京新聞森本記者。本の帯には「この国の劣化は、もう止まらない」と表記されている。しかし、旧計画でアーチタイ問題など核心に突っ込まなかったのに続いて、新コンペ問題も紙上で取り上げないのだろうか。もしそうなら劣化の責任は森本記者や東京新聞、そして同様に核心を報道しないマスコミ全体にもあるのではないか。
政府の中でもこのままではまずいと思っている人がいる可能性もあるだろう(全くいなかったら、まさに劣化が激しい)。そのような人に報道でキッカケを作ってあげることも必要。昨日述べた建築設計界と同様にマスコミも早く動かないと、上記報道のように世間は動いてしまって、ますます対応が難しくなる。

なお、今はネットメディアも重要だが、マスコミより自由なはずなのに、こちらも動きは見られないようである。ただし、私事になるが昨年末あるネットメディアから、当ブログを見て「話を伺いたい」との依頼があった。OKしたところ、「年明けにお願いしたい」ということだったが、その後1月も10日以上経った今も連絡はない(笑)
ただ、色々ご事情もあると思うし、当方は誰でも入手できる公開情報しか無く、話せることは既にブログに書いてある。それで年明けからの記事を振り返ると、「A案のザハ案流用証明」や「ZHA側調査を待つまでもなく、新コンペの公平性毀損によりA案は失格相当ではないか」というような重要な内容を掲載した。更に昨日も書いた「モチーフ偽装」も提起。これらについては当方が説明するまでもなく問題点は容易に理解できると思うので、当該ネットメディアの記者さん自身が記事を書けばスクープになるだろう。しかも日本のためにもなると思うので、報道に携わるプロとして何故早くおやりにならないか非常に不思議。

理由を考えてみると、森本記者なども含めて「真に核心を突いて影響が非常に大きい内容」については、意識的か無意識かは別にして、扱うことを避けるように記者の中で自己規制が働いてしまうのではないか。
今のところ、これだけ重大な問題の報道が無い事態の説明として推察できるのはそれぐらい。(重大と気づかないことも考えられるが、「A案失格相当」などは重大性が明らか過ぎるぐらいだろう)
当方は「民主主義」について深く関心を持っていることを、これまで時折り書いてきたが、報道は民主主義を支える中心的柱の一つである。それがこのような状態であることは非常に興味深く、今後の推移も含めて後日更に考察してみたい。

以上
[追記]
A案の木材使用に関する技術面での課題で、当方が最も根本的と考える点に対しての鋭い指摘が、このところご紹介している「プーさん」のブログに書かれている。
<一見スタンド上屋を支えているかに見える木材はどんな役目を負っているのでしょうか。同じ技術提案者26頁の3には「木材は鉄骨とともに、短期荷重時に生じる屋根の変形を抑えるために利用します。」と書かれています。
これは「まやかし」です。なぜなら、これまでも鉄骨造の大屋根は数多く造られてきましたが、鋼材だけで屋根の変形が抑えられなかった例は、全く存在しないからです。すなわち「技術提案者26頁の3」の説明は、屋根を支えているかに見える木材は、見せかけだけのもので、実際は屋根を支えるトラスに、不必要な積載荷重を与えているだけと言うことを物語っています。…
それでは「木と鉄のハイブリッド」工法をやめて、鉄骨だけでトラスを組んだとしたらどうなるかというと、力学的には何の問題も起こりません。それどころかトラスにかかる荷重は木材の重量だけ軽くなり、鋼材の断面は小さくてすみます。また、木材と鉄を組み合わせる工程はいらなくなるので、工期は短縮され、工事費は大幅に安くなります。さらに、将来の維持管理では、他の鉄骨造で確立している点検方法や、定期的な塗装の塗り替えが行えるので、より安全性が確保されます。>

構造的メリットがなく、重量を増加させ工期・工費・維持費も増やす「見せかけだけの木材使用」なら無駄ということになる。屋根部での木材使用効果は、上記で指摘されている様々なデメリットには目を瞑り、「スタンド内部から見上げた時に木組みが見えて和のテイスト(?)が感じられる」と云うことが主目的なのか。なお以前にも言及した開閉会式時の空撮映像での見え方については、空から屋根の木材が見えるのは一部で、しかも式の開始が夜だから木の色は見えにくく、木材採用のアピールで中継を見ている人にインパクトを与えられるか。
結果的に、屋根部の木材使用が「見せかけ」ではないか、「見せかけ」ならどう評価するか、という点について是非建築設計界諸氏からもご見解を示していただきたいと思う。

追記以上
---NHK引用開始---
天竜木材をオリンピックへ”(NHK静岡作成) 1月10日全国放送

<2020年の東京オリンピックパラリンピックです。
といっても今日はね、この新国立競技場の話なんですね。木を多く使ったデザインですよね。そこで、北海道や九州、それに静岡県などの産地が、オリンピックに木材を売り込もうと、すでに名乗りを上げ、競争が始まっています。
浜松市天竜区で製材会社を営む石野秀一さんです。この道30年の石野さん。地元の林業の衰退を肌で感じてきました。500年以上の歴史を誇る天竜地区の林業そこで育つ杉やひのきは、その質の高さから奈良の吉野や三重の尾鷲と並び、日本3大人工美林と呼ばれてきました。しかし、昭和40年代に入ると、安い海外産の木材に押されて需要は低迷。最盛期、400軒以上あった製材業者は、現在、半数以下にまで落ち込んでいます。
そんな中、石野さんたちが千載一遇のチャンスと捉えているのが、4年後に迫った東京オリンピックです。
東京オリンピックパラリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場。木材がふんだんに使われたデザインです。さらに選手村などの建設もあります。石野さんたちは、そこに天竜木材を売り込もうと考えているのです。どうすれば、天竜木材をオリンピックに売り込むことができるのか。
石野さんたちが強みになると考えているのが、天竜木材が得ているSFCという国際認証制度です。このFSCとは、ドイツにある国際環境団体が定めた認証制度です。この認証が得られた森林は、適切な管理が行われていることを示します。木材貿易のパスポートと呼ばれるほど、世界で大きな影響力を持っています。全国33の自治体や企業が取得しているFSC天竜地区はその取得に早くから乗り出し、市町村としては日本最大となる4万3000ヘクタールで、この認証を得ています。
石野さんたちは、さらに天竜木材のよさをPRしようと動きだしています。
この日、向かったのは静岡県の農林技術研究所。天竜木材は管理が行き届き、強度が高いといわれてきました。それを科学的に証明しようというのです。用意した木材に圧力を少しずつ加えていきます。研究所によると、ほかの産地の杉が耐えられる圧力は平均で1平方センチ当たり300キロから350キロ。これに対し、天竜木材の杉は、同じ条件で100回の試験を繰り返した結果、その平均は430キロに上りました。石野さんは、この強度の高さも強みに、木材を売り込みたいと意気込んでいます。
東京オリンピックで伝統の林業復活を。目指すのは、木材の日本代表です。>
---NHK引用終了---